パブリッククラウドとプライベートクラウドの違い【後編】
40%がセキュリティを理由に見送り――パブリッククラウドのメリット/デメリット
コスト、セキュリティ、災害対策といった観点で、プライベートクラウドと比較したパブリッククラウドのメリット/デメリットを検証する。
本稿は、パブリックおよびプライベートクラウドコンピューティングに関する連載の後編だ。前編「導入しても管理が難しい、プライベートクラウドの利点と制約」ではパブリッククラウドとプライベートクラウドの違いについて解説した。
パブリッククラウドを検討すればプライベートクラウドの利点が見えてくるが、多くの場合、プライベートクラウドはコスト的に不利だ。しかし、パブリッククラウドの欠点には、企業にとってコスト削減を帳消しにしてしまうほど重大なものもある。ここではパブリッククラウドの利点と欠点を検証してみたい。
パブリッククラウドのアドバンテージ
パブリッククラウドの最大の利点はコスト削減だ。プライベートクラウドと違って、サーバやその他の機材を購入、インストール、管理する必要がない。企業が独自のアプリケーションを開発し、パブリッククラウドプロバイダーがそれらをホストする。
パブリッククラウドはマルチテナント環境として設計されている。そのため膨大な数のユーザーが、プロバイダーのコンピューティングリソースを共有できる。この点も、パブリッククラウドがユーザーにとって経済的である理由の1つだ。専門家によると、パブリッククラウドのコストは初期投資が不要であるため、伝統的なデータセンターやプライベートクラウドよりもはるかに安い。また、ユーザーは実際に利用したコンピューティングリソースの分だけ料金を払えばよく、コスト面での柔軟性が高い。
米TechTargetの最近の調査によると、パブリッククラウドを利用する企業1000社のうち、31%以上がインフラストラクチャのコスト削減を導入の大きな動機として挙げている。また、全体の26%が従来のホストサービスより柔軟性の高い点を評価し、21%はコストを掛けずに拡張できるインフラストラクチャを求め、11%はIT関連の人件費削減が導入目的と回答している。
一方、セキュリティ、信頼性、コンプライアンスは、パブリッククラウドに対する主な懸念だ。マルチテナントというコンセプトは、高可用性によって経済合理性を実現する。しかし、そこには脆弱性やハイパーバイザーを狙った攻撃、ユーザーのセッション妨害など、さまざまな危険がある。これまでのところ、そうした攻撃が成功したという報告はないが、パブリッククラウドの導入を検討するユーザーにとっては気になるところだ。
「セキュリティは共通の問題だが、全てのユーザーに等しいものではない」と語るのは、米Forrester Researchの副社長で主席アナリストのジェームズ・スタテン氏だ。同氏はまた、「米MicrosoftのWindows Azure Platform(関連記事:オンプレミスとの連携を意識した「Windows Azure」)などのサービスは、ある程度のセキュリティを提供するが必ずしも十分ではない」と付け加える。例えば、Windows Azureは違反行為が行われないようにログを提供することでサーバのセキュリティに責任を持つ。しかし、それぞれのアプリケーションのセキュリティについては企業側に責任がある。そこにはオープンポートや脆弱なログインといった設計上の見落としなども含まれる。「こうした不均衡な取り決めは、クラウドリソースを安全でない方法で利用する人々がしばしば犯しやすい間違いだ」
また、信頼性と可用性はパブリッククラウドのもう1つの懸念材料だ。プロバイダーがクラスタや冗長サイト、その他の可用性改善策を実装していても、ときとして停電は発生する。ダウンタイムはクラウドアプリケーションへのアクセスに影響するだけでなく、企業の活動そのものに悪影響を及ぼす。そのためパブリッククラウドへの移行には、可用性への慎重な評価に加え、通常および非常時のダウンタイムの影響についても注意深く検討しなければならない。
災害に対する備え
企業がパブリッククラウドテクノロジーを活用するためには、データの安全性とアクセス性の確保が不可欠だ。しかし今日の世界的な状況は、そうした課題の達成を困難にしている。
企業はさまざまな自然、あるいは人的災害に直面することがある。ハッキングによる損害を被ったり、会社そのものが消滅するケースもある。もしクラウドプロバイダーが倒産したらどうなるだろうか?
パブリッククラウドへの移行に当たっては、アプリケーションとデータの可搬性を十分検討することが必要だと、多くの専門家が指摘する。例えば、特定のプロバイダーから別のプロバイダーへ切り替える必要があるかもしれない。それができない場合は、必要なアプリケーションをクラウドから引き出し、自社のデータセンターにリストアしなければならないだろう。
いずれの場合も、クラウド災害に対する備えとして移行計画を準備しておく必要がある。「ITの役割は変わりつつある」と語るのは、米コンサルティング企業SMB Groupのパートナー、ローリー・マッケイブ氏だ。「ITスタッフは、何をアウトソーシングするかを決定するための、また緊急事態への対応策を立案するための戦略や計画を持たなければならない」
既に一部の企業は、パブリッククラウドのセカンドプロバイダーを選び、第2の環境へアプリケーションをマッピングするプロセスを準備しているところもある。また、アーキテクチャ的な変更を最小限に抑え、クラウド間でアプリケーションの移行を容易にするために、CloudSwitchなどのゲートウェイを導入している企業もある。
幸運なことに、ほとんどの企業にはまだ、クラウド間の移動やその計画について考える時間が十分にある。少なくともトラブルが実際に発生する前に何段階かのステップを踏んでいれば、緊急時の移行計画は単に災害復旧計画の1つの側面にすぎないことが分かるだろう。
過剰宣伝と現実
パブリックかプライベートかの選択は難しい課題だ。なぜなら、いずれもあらゆるアプリケーション、あらゆるユーザーグループ、あらゆる組織に適合するわけではないからだ。クラウドを取り巻く過剰宣伝は混乱を引き起こし、企業をこのテクノロジーそのものから遠ざけている。
TechTargetの調べによると、クラウドの導入を見送ったIT担当者の40%以上がその理由として、セキュリティに対する懸念を挙げている。また30%は自社のビジネスアプリケーションがクラウド環境に完全移行できない点を理由に挙げ、27%はコンピューティングリソースの利用状況の計測、あるいはチャージバックをしていないと回答している。さらに、26%以上の回答者がデータストレージの一貫性やコンプライアンスに懸念を示す他、クラウドテクノロジーを利用しない理由として、仮想化や社内スキル、クラウドの複雑さへの懸念などを指摘する声もある。
いずれにしても、クラウドテクノロジーに取り組むときは、その困難さを過小評価してはならないと専門家は警告する。クラウドは効率性と経済性の面で大きな可能性を持っているが、クラウドの中でそれらを実現することは難しい。「クラウド環境の負荷を適正なものにしなければ、そこからコスト削減がもたらされることはない」とスタテン氏。「むしろ、余計なコストが増えるだけだ」
一般的に、クラウドに最適なアプリケーションは、さまざまなアクセス方法で多様なロケーションから多くのユーザーが接続するWebベースの顧客対面型アプリケーションだ。そうしたアプリケーションには、電子メール、コラボレーション、そしてサポートポータルなどが含まれる。それらはクラウドの最も得意とする分野だ。
一方、クラウドに向いていないアプリケーションは、特定のロケーションにおいて小さなグループだけがヘビーに利用するようなものだ。そうしたアプリケーションは、自社のデータセンターに置かれた従来型のクライアント/サーバでサポートするのが効率的だろう。
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