BI製品紹介:DTS
国産BI「データスタジオ@WEB」が現場業務のための機能に特化するわけ
「データスタジオ@WEB」は、「第3世代」といわれる最新BI製品を象徴するように簡単操作・安心運用を開発コンセプトとしている。国内約400サイト、約5万数千人のユーザーが活用するBIツールの中身を見ていこう。
基本設計から日本人が日本語で開発した100%Web対応のBI
ビジネスインテリジェンス(BI)はこれまでも幾度かブームが起こり、少なくとも3回世代交代しているといわれている。第1世代のBIは、データウェアハウス(DWH)に集約したデータを一部の専門家がマーケット分析などに活用するシステムとして普及した。第2世代ではGUIやダッシュボード機能が強化され、KPI(重要業績評価指標)をビジュアルで表現し経営層を納得させるための経営コックピットとして訴求した世代だ。そして現在の第3世代のBIでは、専門家や経営層だけでなく、現場の実務担当者が日常の業務の中でデータを有効活用する段階まで進化してきている。
BI製品紹介インデックス
- 「Microsoft SQL Server 2008 R2」+「Excel 2010」が目指すセルフサービスBI
- BIを超えた分析力を企業文化に根付かせる「SAS Enterprise BI Server」
- 独自の連想技術でインメモリ処理を実現する超高速BI「QlikView」
- 「Cognos 10」に見た、ビジネスアナリティクス(BA)を成長戦略に掲げるIBMの本気度
- インメモリ型DBやiPhone対応で「誰でも使えるBI」を目指した「SAP BusinessObjects BI 4.0」
- BIの基本をきっちり提供、最新モバイルにも対応する「MicroStrategy 9」
- 現場で自在にデータ分析、全社利用を前提に作られた国産BI「Dr.Sum EA」
- Oracle BIが実現する「3つのリアルタイム」と「BI標準化」とは
- 「WebFOCUS」が目指す理想のBI「カスタマーダイレクトBI」とは
DTSの「データスタジオ@WEB」は、まさにこの第3世代を象徴する製品であり、DWHや情報系システムのフロントツールとして注目に値する。その特徴としては、主に次の3つが挙げられるだろう。
1つは、簡単操作・安心運用を目的に開発されていることだ。プルダウンメニューで条件を選択するだけで、データベースを抽出したり集計したりすることが可能で、企業特有の業務に合わせて日々の分析やリポーティングを効率化できるように設計されている。また、データは100%サーバサイドで処理され、クライアントPCにデータは残らないため情報流出も防止できる。さらに、個人・グループごとに認証や参照権限などを設定できる。誰が・いつ・何を参照したのかがログとして記録されるため、セキュリティ管理を容易に実現できる点も特徴だ。
2つ目の特徴は、純国産BIのため、日本語による業務適合性を強みにしていることだ。欧米製BIを日本語にローカライズしたものに比べて、基本設計から日本人が日本語で開発している分、日本企業の業務感覚に合ったBIツールになっている。国内に開発拠点があるため、問題が発生した場合の解決までのスピードが速いだけでなく、特別なトレーニングやマニュアルなどを必要とせず使い始められるというメリットも大きい。
文字通り桁違いのコストパフォーマンス
そして3つ目は、第3世代BIに最も期待されているコストパフォーマンスの高さだ。ライセンス形態は、他の多くのBIのようにCPU/コアライセンスではなく、サーバライセンスとしており、最近の高集積のマルチプロセッササーバによる仮想環境に非常にマッチした形だ。また、クライアント側にソフトウェアをインストールすることなくWebブラウザで全ての操作ができるので、管理コストを削減できる。
価格は10ユーザーを含む基本パッケージで150万円。この料金で、クエリ/データ抽出、OLAP、レポーティング、アプリケーション連携、権限セキュリティの各機能が利用できる。また、300万円のユーザー無制限ライセンスが用意されている。「PDF出力やグラフ出力、スケジュール実行機能の各オプションをフルに使っても1000万円には遠く及ばない範囲に収まる」と話すのは、DTS 新市場企画営業部 アライアンスビジネスチーム マネージャーの横溝雅彦氏だ。
加えて、年間保守料は契約価格の15%に設定され、これにはマイナーバージョンアップの無償提供とテクニカルQ&Aサポートが含まれる。これらトータルで見ると、「他のBIと比べて実導入価格は1桁安い感覚」(横溝氏)だという。
その代わり、データスタジオ@WEBの適用範囲は限られており、専用ダッシュボードやモデリング、データマイニング、テキストマイニング機能などは潔く切り離されている。
「第2世代のBIブームのときにBIベンダーが取った戦略が、ダッシュボード機能を全面に出した経営コックピットだった。いかにきれいにビジュアルで見せるかを競うものだったが、現場の実務担当者にとってはアナログのゲージが動いたりグラフが変化したりするプレゼンスはあまり意味のないものだった。そのため、データスタジオ@WEBではコストを掛けてダッシュボードを組み入れるよりは、実務的な機能を充実させることを重視して開発を進めた」(横溝氏)
なお、BIの顔といえるダッシュボード機能やテキストマイニング機能などは、必要に応じて補完できるよう、連携ソリューションを別途用意する。仮説発見などの高度な分析作業はデータアナリストなどの領分であり、一般ユーザーには意思決定や情報共有に必要な現状把握ができればよいという考えにはうなずける。
純国産の技術による独立系BIというポリシーを守り抜く
データスタジオ@WEBを開発したDTSは、1972年に創業したデータ通信システムを前身とする。独立系の国内SIerとして、金融業や通信業、産業・公共など向けに、コンサルティングからシステム設計・開発、ソフトウェアおよびハードウェアの導入・運用、保守までのサービスを手掛けてきた。
業務システムの構築を受託する中で、「既存の帳票を異なる視点で可視化したい」といったユーザー企業の要望に対してスクラッチ開発で対応してきたが、追加仕様ニーズが増えてきたことから、現場のユーザーの望む形で自由にデータを切り出せるシステムを開発したのが、2003年に誕生したデータスタジオ@WEBだった。
当初は、データベースから切り出した結果を表にするだけの単純な機能だったが、純国産のBIを目指して他のベンダーのIP(知的財産)は使用せず、当時からクライアント/サーバ型ではなく、100%Web対応としたことが先進的といえた。
その後も年に1~2回、ユーザーの要望を取り入れる形でマイナーバージョンアップを繰り返し、ドリルタウン、スライス&ダイス、外部連携インタフェース、LDAP連携、セキュリティ強化、グラフ機能強化、リレーションリンク機能などを追加してきた。
そして、2009年に初のメジャーバージョンアップを行い、データスタジオ@WEB Ver.2が登場。2010年に提供開始したVer2.1では、「出力実行のスケジュール化」や「結果表の見出し固定」をはじめ、全23項目の機能が追加・改善された。
「ユーザーの要求を取り入れ続けても、サーバサイドでの処理による100%Web対応や、純国産の技術による独立系のBIという基本ポリシーは決して崩していない」と横溝氏は胸を張る。データベース、DWH、データマートの連携部分ではマルチベンダーに対応し、企業規模や業種、業務などの属性を問わない、経営層から中間管理者、実務担当者まで誰もが日常的に使える汎用BIを志向している。
| 機能分類 | 主な機能 | 実装 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 権限セキュリティ管理 | ユーザー認証 | ○ | |
| ユーザー権限管理 | ○ | ||
| グループ管理 | ○ | ||
| LDAPサーバ連携 | ○ | LDAP Ver3準拠 | |
| パスワード暗号化、有効期限管理 | ○ | ユーザーポリシー追加のカスタマイズ可能 | |
| ログイン承認通知機能 | ○ | ||
| アクセスログ | ○ | テキストログ、データベースへのログ書き込み機能 | |
| 初期メニュー、条件タグ設定機能 | ○ | ||
| セキュリティ対策 | ○ | SQLインジェクション対策など | |
| クエリ機能 | 定型検索(データ抽出) | ○ | |
| 非定型検索(データ抽出) | ○ | ||
| 簡易UI定義支援機能 | ○ | ||
| データ出力機能(CSV、Excel) | ○ | ||
| OLAP機能 | グループ集計、クロス集計 | ○ | |
| 計算式指定、合計値参照指定 | ○ | ||
| 集計ソート | ○ | ||
| ドリルダウン/ドリルスルー | ○ | ||
| スライス&ダイス | ○ | ||
| リレーションリンク機能 | ○ | ||
| ロールアップ参照 | ○ | ロールアップに対応したRDBMSに限る | |
| マスター参照 | ○ | ||
| リポーティング機能 | 定型分析管理 | ○ | |
| Excel出力 | ○ | ||
| グラフ出力(2軸混合グラフ対応) | オプション対応 | 棒、積層棒、折れ線、円、散布図、レーダーチャート | |
| PDF出力 | オプション対応 | ||
| アプリケーション連携機能 | URL呼び出しによる定型検索 | ○ | |
| URL+パラメータ指定による自由検索 | ○ | ||
| シングルサインオン連携 | ○ | ||
| 結果データのAP連携機能 | ○ | ||
| 結果表とグラフのドリルダウン連動 | ○ | ||
| その他 | スケールアウト/冗長構成 | ○ | サーバごとに製品ライセンスが必要 |
| 検索タイムアウト指定 | ○ | 接続対象RDBMSが対応している必要がある | |
| CSSカスタマイズ | ○ | カラーコーディネートなどのカスタマイズ | |
| プロパティファイルによるカスタマイズ | ○ | 規定値の変更などをプロパティファイルで変更可能 | |
| スケジュール実行機能 | オプション対応 | データ出力、PDF出力に限る |
テンプレートの有無でBIを選んではいけない理由
また、データスタジオ@WEBは、一般のBIのようにテンプレートありきのスタイルで提供していないのも特徴だ。横溝氏は「最近のBI製品がテンプレートを前提とした製品形態に偏りつつある理由は、機能を盛り込み過ぎた結果、ユーザーがBIを使いこなせなくなったためだ」と説明する。つまり、各業種向けのテンプレートを豊富に用意することで利用のハードルを低くしようとしているためだという。その点、DTSでは原則的にテンプレートの提供を行ってはいない。
「自社の業務に合うテンプレートがあるか否かでBIを選択することになると、BI本来の汎用性、可能性を狭めてしまう」という横溝氏は、業務や業種に特化した形でパッケージにバンドルするならテンプレートは意味を持つが、自由検索や深い分析を行いたいというユーザーにとってはテンプレートが邪魔な存在にしかならないと述べる。
「データ活用を難しく考えるから、テンプレートでBIを選んでしまう。普段ExcelやAccessでデータを整理している業務こそ立派なデータ活用であり、それをデータスタジオ@WEBに置き換えるだけで属人的な分析作業から解放し、企業全体でナレッジを標準化する使い方ができる」(横溝氏)
日立のCosminexusと合体したデータスタジオ@WEB
そして、データスタジオ@WEBはさらに“使われる”BIを目指そうと進化している。DTSは日立製作所(以下、日立)と共同で、業務データをフローやガイダンスなどの画面表示の指示に沿って容易に分析できる「BI NavigationStudio」を開発した。これは日立のクラウドサービスプラットフォーム「Cosminexus」シリーズの業務ポータル製品「uCosminexus Navigation Platform」とデータスタジオ@WEBを連携させた製品だ。
uCosminexus Navigation Platformは、業務の流れやノウハウをフロー図と文字によるガイダンスで操作手順を表示し、個人が蓄積している業務手順やノウハウなどの体系化と共有化を支援するソフトウェアだ。
この2つのシステムが連携することで、ユーザーは業務ポータルの指示に従いデータ入力やボタン選択を行うだけで、購買情報や購買履歴から優良顧客を抽出する「RFM分析」や、管理対象を重要度のランクに応じて管理する「ABC分析」、全顧客を購入金額の高い順に10等分して売り上げ構成を比較する「デシル分析」などの高度な分析を容易に行うことができる。これにより、データスタジオ@WEBがサポートしていないマイニング機能の一部をカバーすることが可能になったという。
「DTSのBI技術と、日本で最も顧客満足度の高い商用アプリケーションプラットフォームといわれている日立のCosminexusを連携させることで、ユーザーがBIをもっと有効活用できるようになる」と横溝氏は話す。また、この連携には純国産仕様を目指す日立とDTSの思いが背景にある。日立のハードウェア、アプリケーションプラットフォーム、データベース、運用管理ソフトウェアに加え、BIまでもが純国産でそろうことになるのだ。
製造業の品質管理にもっとBIを
そうした話題などによって、データスタジオ@WEBの2011年の売り上げは、前年比170%の伸びで拡大し、2012年2月現在は国内約400サイト、約5万数千人のユーザーが活用しているという。適用業務も債権管理、顧客管理、予実管理、成約実績分析、会計情報分析、通販顧客分析などとさまざまだ。
今後の日本におけるBIの可能性について、横溝氏は、特に製造業の品質管理に大きな期待を寄せている。
「日本の場合、製造工程におけるロット間データや品質保証のために蓄積したデータは膨大なものがあるものの、無駄に捨てられているデータも多いようだ。それをBIで有効活用すれば、次の生産で歩留まりを向上させるための施策など、日本の製造業が持つノウハウをさらに引き出すことができる」(横溝氏)
円高の長期化やグローバル化で国内産業の空洞化ばかりが叫ばれる中、企業におけるデータ活用文化の定着は、変化に強い企業を作る手助けとなるだろう。データスタジオ@WEBのような第3世代のBIが、ブームではなく業務の一部として活用されるようになることが、その分岐点になるのかもしれない。
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