結局、“iPadでいいじゃないか”
Windows 8タブレットが成功しない2つの理由
Windows 8タブレットは当初、豊富なソフトウェア資産とActive Directoryによる管理性により“iPadキラー”になると目されていた。だが、ARM版のWindows 8タブレットの情報が増えるのに従って失望の声も高まっている。
ARM用Windowsは社内ドメインに参加できない──この事実はWindows 8搭載タブレットがリリースされる前に、その出はなをくじいてしまう可能性がある。
米Microsoftベースのタブレットは、米AppleのiPadが不得意な分野で強みを発揮できる可能性があった。例えば、企業のIT分野が管理するタブレットにポリシーを適用し、Windows NT 3.1以来提供されていた機能を利用できたかもしれない。
しかしMicrosoftは、ARM用Windowsが持ち得た可能性のある最大の差別化要素をあっさりと投げ捨てようとしているのだ。「Windows 8 Consumer Preview」リリースで、タブレット市場でiPadおよびAndroidタブレットに対抗するMicrosoftの戦略の一部が明らかになった。同社の「Windows 8 Consumer Preview Product Guide for Business」の中の目立たない箇所に次のような文章がある──「Windows 8のARM対応版には、32ビット版と64ビット版に搭載されるのと同じ管理機能は含まれないが、企業は管理対象外の環境でこれらの省電力端末を利用できる」(関連記事:Hewlett-Packard社内文書のWindows 8──Ultimateは廃止?)
Microsoftがこの戦略を変更しなければ、Windows 8搭載タブレットは結局失敗に終わるだろう。Windowsタブレットが行き詰まると考えられる主な理由は2つある。
1. ビジネス環境に適したタブレットというユーザーの要望に応えられない
ユーザーがMicrosoftに望んでいるのはビジネス環境に適したタブレットをサポートすることだが、ARM対応版Windowsはその期待に応えるものではない。
iPadに対して企業のエンドユーザーの間から聞こえてくる不満の多くは、Microsoft Officeが利用できないこと、そしてOffice CommunicatorやLyncといったWindowsベースのコミュニケーションツールとうまく連係できないことだ。ユーザーはタブレット端末の利便性を歓迎しているが、タブレットを既存のパーソナルコンピューティング環境に連係するのは、2つのシステム(1つは閲覧用、もう1つは仕事用)を運用するのと変わらないのが現実だ(関連記事:iPad用Officeアプリも提供? 見えてきた「Office 15」の全貌)。
MicrosoftがタブレットハードウェアにはOfficeの次期版がバンドルされると発表したとき、同社はこういった不満に対処しようとしているのだと思えた。また、Windowsのタッチ対応機能を強化するためにユーザーインタフェース(UI)をMetroで刷新した。しかし同社は、既存のアプリケーションがタブレット上で動作する可能性を葬り去ってしまった。タブレット用プログラムをARM命令セットに対応したものだけに限定し、いかなる種類のエミュレーションレイヤーの搭載も認めなかったからだ。
これは、ARM対応版Windows用に書き直したり、リコンパイルしたプログラムしかWindows 8搭載タブレットPC上では動作しないことを意味する。このため、個別の業務用プログラムがタブレットで直接動作する(これはWindows端末の大きな魅力の1つになるのだが)という期待は持たない方がいい。もちろんアプリケーション開発者のエコシステムがほどなく生まれるだろうが、そういったアプリが登場しても、その時点では基幹業務環境で検証されているわけではない。
2. 既存セキュリティポリシーと連係するタブレットというIT部門の要望に応えられない
企業のIT部門は、既存のデスクトップおよび端末セキュリティポリシーとの連係が可能なタブレットをMicrosoftに開発してもらいたいと考えている。だが、現時点ではARM版Windowsはそのような連係をサポートしていない。
社内ドメインに参加すれば、グループポリシー、パスワード設定ポリシー、リモート管理、社内階層内のオブジェクトの場所に関する詳細なポリシーなどを適用できる。セキュリティ管理者は、iPadなどの端末を管理できないことに不満を抱いている。Windows 8搭載タブレットであれば少なくとも、Microsoftのビジネス用OSに20年近くにわたって組み込まれてきたセキュリティスキームを適用できると期待していた。
しかしそうはならないのだ。ARM版Windowsが搭載されるタブレットにはグループポリシーを適用することはできない。追加コストの掛かるARM専用のセキュリティソフトウェアを導入する必要がある。ActiveSyncのリモート端末ワイプポリシー以外に、従来のWindowsツールを使ってセキュリティを実装することもできないのだ(ActiveSyncのサポートも確定したわけではない)。
要するに、Windows 8搭載タブレットはWindowsユーザーが習得すべき新しいUIを備えるが、リリース予定のOfficeの新バージョンを除けばx86/x64命令セットをベースとする既存のアプリケーションはほとんどサポートされないということだ。ARM版Windowsでは管理機能もサポートされない。Windowsのビジネスバージョンに10年以上前から組み込まれていた基本的な管理機能のサポートも含まれないのだ。こういった弱点を考えれば、タブレットを導入する企業の多くはこう思うのではないだろうか──「iPadでいいじゃないか」と。
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