アクセス解析ツール「Adobe SiteCatalyst」導入事例
【事例】Webサイト価値ランキング1位、ANAのWeb分析戦略
日本ブランド戦略研究所が発表した「Webサイト価値ランキング2011」で1位を獲得したANAのWebサイト。同社はWebサイト、スマートフォン対応、ソーシャルメディア活用にどのような戦略で挑んでいるのか。
航空券やツアー予約、マイレージサービス、各種ECサイトと連携した「ANAマイレージモール」などのサービスを提供する全日本空輸(以下、ANA)のWebサイトは、1日の訪問者数(UU:ユニークユーザー)40万人、500万PV(ページビュー)を誇る。Webサイトでの販売額は4300億円(2011年度)となっており、日本ブランド戦略研究所が発表した「Webサイト価値ランキング2011」では見事1位を獲得している。
同社 プロモーション室 マーケットコミュニケーション部 企画・宣伝チーム 主席部員の前田欣伸氏は、2012年6月に開催されたアドビ システムズ主催のイベントに登壇。同社で導入しているアクセス解析ツール「Adobe SiteCatalyst」(以下、SiteCatalyst)を活用したサイト分析の現状と今後の展望を語った。
1997年にマイレージプログラムとインターネット航空券予約サービスを開始したANA。携帯電話対応の航空券予約サービスは、1999年2月のNTTドコモの「iモード」サービスと同時期に開始している。また、2006年にはおサイフケータイと連携した「チケットレスチェックイン」という新しい搭乗モデルの提供をスタート。これらの連携により、情報提供から予約、購入、搭乗、マイル登録といったサイクルを回す総合的なCRMチャネルとして、Webサイトが機能するようになった。
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Webの航空券取扱量が全体の50%を超え、アクセス解析ツール刷新を決意
SiteCatalystを導入する以前、同社は米Broadbaseの解析ツールを導入していた。インターネットでの航空券予約を開始した当初(1997年)、Webサイトはあくまで実験的チャネルであり、売り上げはほんの数パーセント。しかし、2001年ごろにインターネットの航空券取扱量が全体の30%を超え、売り場としての健全性を把握するためにBroadbase製品を導入した。
「当時の指標はPVやUU。もちろん自社Webサイトでも航空券を販売していたが、さまざまなポータルサイトと連携して航空券予約のモジュールを社外に出すという戦略を取っていた。そのため、ポータルサイトそれぞれにどれくらい効果があるかを評価する必要があった」(前田氏)
ところが当時利用していたBroadbase製品は、登録作業が煩雑だったり、サーバログを夜間バッチで処理していたために、効果分析の即自性の欠如などの課題があった。そして2007年、Webにおける航空券取扱量はついに全体の50%を占めるようになった。「社内の関係者含め、他社とも協業しながらさまざまな施策を行うためには、Webサイト内の情報をいろいろな角度で分析した結果を基にしなければ、話もできないような状況になった」(前田氏)。また、メールによるプロモーションも規模を拡大していたため、そちらの分析にも併せて対応できるツールが必要だった。そこで選ばれたのがSiteCatalystだ。
前田氏はSiteCatalyst導入の決め手として以下8点を挙げる。
- 大規模サイトでの導入実績
- ファーストパーティクッキー対応
- 運用管理のしやすさ
- カスタマイズ変数が多数
- データの分類が可能
- Microsoft Officeアプリケーションとの連携
- DWH機能
- DataFeed機能
カスタマイズ変数が多数ある点については、マイレージクラブの会員データや航空券運賃の種類などをあらかじめ保持している同社にとって、使いやすいポイントだという。会員の属性、性別、年齢と購入した航空券の種類を分析するのに役立てている。SiteCatalystで直接会員分析が可能な他、パーソナライズ分析も可能になった。
データの分類が可能な点も、分析に非常に有用だと前田氏は語る。「東京発の顧客量」「北海道へ向かう顧客量」といった方面軸でのデータ分類が可能なため、いちいち全てのデータを取り出してサマリーする手間が省け、すぐに分析に取り掛かることができる。
また、現在ANAではユーザー数50~60人でSiteCatalystを利用しているが、多くのユーザーがSiteCatalystのMicrosoft Excelアドオン機能を利用しているという。定型フォームを事前にExcelで作っておけば、SiteCatalystにログインせずともExcelを更新するだけで結果を閲覧できる。現在は定型分析の約8割をExcelクライアントで日々追いかけているという。
行動履歴でニーズを把握しターゲティングメールのクリック率を4倍に
ANAでは顧客にメールマガジンの配信も行っているが、マイレージ会員全員に配信するメールマガジン以外の、ターゲティングメールの送付先抽出のためにもSiteCatalystを利用している。SiteCatalyst導入前は、メールを送るターゲットを会員の搭乗実績データでセグメントしていた。例えば、「前年の夏に旅行に行った顧客は、多分翌年の夏も旅行に行くだろう」といった、過去のデータから仮設を立てることでしか配信対象を抽出できないことが悩みだった。そこで、SiteCatalystとメール配信システムを連動させることで、Webサイトでの顧客の行動に応じてメール配信対象者を抽出できるようにしたという。
「例えば、Webサイトで北海道方面の航空券を検索したり、北海道ツアーのページを閲覧しても、購入まで至らない顧客は結構いる。そういった顧客に対して、より直近(将来)のニーズに基づいてアプローチができることが大きな利点だ」(前田氏)
従来型のターゲティングメール配信とSiteCatalyst連携のターゲティングメールの効果を比較すると、クリック率で4倍、コンバージョンで1.2倍の効果があるという。
新たな広告配信、スマホ、ソーシャルの効果指標を模索
SiteCatalystの導入によって効果的な顧客アプローチを実現している同社だが、Web分析における課題がないわけではない。複数行っているWebプロモーションの中で、例えばYahoo! JAPANに掲載した「北海道、今なら3万円」という同社提供バナーを見た人が、そのバナーをクリックせずにGoogleで「ANA」と検索し、検索結果に表示されたリスティング広告から同社のWebサイトへ訪れたとする。その場合、現状同社の仕組みでは「リスティング広告の効果」として識別される。
「本来最終のクリックだけが効果のポイントではないはずだ。しかしこの部分を正しく評価する指標を現状持ち合わせていない。広告配信技術の進化でこうした分析が今後可能になるのではないかといわれているので、ANAとしても積極的に取り組んでいきたい」(前田氏)
さらに、スマートフォンのWebサイトとアプリ、そしてソーシャルメディアの効果指標も今後注力する課題だと前田氏は説明する。現在、同社の国内線航空券販売サービスのモバイルユーザーは、既にフィーチャーフォンユーザーよりもスマートフォンユーザーの方が多いという。
「既存のフィーチャーフォン向けサイトをベースにスマートフォンサイトの構築を行っているため、なかなかSiteCatalystとの連携ができていないのが正直なところ。フィーチャーフォンの通信把握はSiteCatalystでは難しかったので、この課題を早く解決して顧客の動きを見ていかなければならない」(前田氏)
スマートフォンアプリに関しては、現在国内線向けの「ANA旅の情報『旅達空間』」と、国際線向けの「ANA GLOBAL」という2つのアプリをiPhone、Android双方に提供している。現在合計80万ダウンロードされてはいるが、その効果指標をKPIとしてまだ持てていないという。
「アプリを作る大きな目的は『顧客のスマートフォンのホーム画面に場所を取ること』だ。本当にホーム画面を取れているのか、そしてユーザーがアプリの中でどう動いているのかといった分析はまだまだ課題だ」(前田氏)
一方、ソーシャルメディアについては、Facebook、Twitterの活用を積極的に行っている。2011年に開設したFacebookページ「ANA.Japan」は、現在約70万の「いいね!」を獲得している。専任担当者は配置していないが、ひと言発信するだけで数千、多いときは1万以上の「いいね!」が寄せられることもあるという。Facebookはまだ同社のサービスを利用したことのない人に、コストをほぼ掛けない形でアプローチできるツールとして、今後も積極的に使っていく方針だ。
Twitterでは、運行情報の見通しを案内している。普段メールやWebサイトでお知らせしている欠航情報などよりも、もう少し「やわらかい」情報、例えば「霧が出ているため、もしかすると折り返すかもしれない」という情報を発信している点が特徴だ。
「顧客とのコミュニケーションにおいて、Twitterはかなり有効だと認識している。既に海外航空会社ではアクティブサポートのような運用をしているところもある。われわれもそういった研究をしていきたい」(前田氏)
そしてこれらソーシャルメディアの効果分析は「まさに今、目の前の課題」と前田氏は強調する。「つぶやきを閲覧した、コメントした数は現状でも分かるが、Webサイトの売り上げや盛り上がりにどのような貢献をしたかはまだ見えない」(前田氏)
メディアやデバイスが多様化する中で、顧客はそれにとらわれることなく日々回遊している。その中で行動履歴をどう分析していくかが、同社にとっての本当の課題だと前田氏は言う。
「ちまたではビッグデータをダッシュボードに入れて分析するという話も出てきているが、われわれはまだそこまでできていない。しかし取りたくても取れなかったデータがどんどん増えていく。そうしたデータを分析する担当者を社内に1人配置し、1つひとつの施策に対してではなく、俯瞰で見てそれぞれをクロスする分析の視点が必要だと考えている。まだ取り組み前だが、近いうちに体制を整えた上でいろいろなプロモーションに生かしていきたい」(前田氏)
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