Amazon Web Servicesへの対抗
Windows AzureのIaaS機能は、ユーザー企業からの支持を得られるか?
米Microsoftが6月に発表したWindows Azureの新しい機能について、企業ユーザーや識者らに意見を聞いた。
この記事は、米Microsoftが2012年6月7日(米国時間)に開催した「Meet Windows Azure」で、Windows Azureの新しいクラウドサービスを正式発表する前の2012年5月23日(米国時間)に米TechTargetに掲載された記事を翻訳したものです。
米Microsoftは2012年6月初旬に、Amazon Web Services(AWS)に対抗すべく新しいWindows Azure(以下、Azure)のクラウドサービスをリリースする予定だ。ワークロードのレガシー環境からクラウドへの移行を支援する機能や、AzureでのWebサイト公開に伴うコストを低減できる機能がある。
Azure、AWSなどクラウドサービス比較に関する記事
この発表は、2012年6月7日にサンフランシスコで開催されたイベント「Meet Windows Azure」で行われる。MicrosoftはこのイベントでAzureに関して少なくとも2種類の新機能を発表する予定だ。
そのうちの1つは「Antares」というコードネームで呼ばれていたWebホスティングフレームワークで、説明を受けた人物によると「きめの細かいWebアプリケーションホスティングサービス」を提供するという(※)。このフレームワークを利用することで、AzureでのWebサイトのホストに掛かる費用を抑えられるはずだ。
また、「永続VMロール」と呼ばれる待望のIaaS(Infrastructure as a Service)機能のロードマップも発表される予定だ(※)。
ある情報筋によると、「永続VMロールは、既存のアプリケーションをそのままAzureに移動または移行可能にするという課題を解決し、Webホスティングフレームワーク(AzureWebsites)は、Azureでコスト効率よくWebサイトをホストするという課題を解決するものだ」と話す。
※ IaaS機能とWebホスティングフレームワーク「AzureWebsites」は、2012年6月7日(米国時間)にMeet Windows Azureで発表された。
Windows AzureにとってVMロールの提供は必須
VMロールは、顧客が各自のアプリケーションを実行できる仮想レイヤーを提供するが、この機能は当初の予定より既に1年以上も市場へのリリースが遅れていた。永続VMロールには、うわさ通りLinuxのサポートも含まれる。
VMロールについての公約を果たすことは大きな進歩だと、長年Microsoftの動向を見ている2人の専門家は言う。
米調査会社のIDCでアプリケーション開発のプログラムディレクターを務めるアル・ヒルワ氏は、「レガシーアプリケーションを書き換えることなく、Azureに展開できる機能は便利だ」と話す。
VMロールは顧客が望んでいる機能で、AWSとの競争においてAzureをより優位な立場に置くと米調査グループのDirections on Microsoftでリサーチ副社長を務めるロブ・サンフィリッポ氏は説明する。
「アプリケーションを実行したいが移植はしたくないというユーザーは、市場にかなりいる」(サンフィリッポ氏)
ただし、ある情報筋は、AzureのVMロールでの提供が約束されている全ての機能が、最初のリリースで実装されるとは考えていない。究極の目標の1つは、変更が必要だとしてもわずかの変更で、エンタープライズアプリケーションをAzureでもオンプレミスでも実行できるようにすることだ。
永続VMロールというMicrosoftの戦略的な取り組みは、少なくとも短期的に同社が照準をPaaS(Platform as a Service)からIaaSに移していることを示す。
この情報筋は、「現時点では、会社が気楽に構えていられないほど開発に時間がかかりそうなPaaSビジョンをスコット・ガスリー氏が描いているので、そのつなぎとなる戦略を編み出そうとしている」と明かす。ガスリー氏は、MicrosoftのAzureアプリケーションプラットフォーム部門担当の副社長である。
Microsoftの企業ユーザーはPaaSを支持するか?
最大の疑問は「Microsoftは現時点ではIaaSに投資をするが、長期的にはPaaSにシフトするのか?」「人々の考え方を再びその方向に変えていけるのか?」だ。そのためにはある程度の説得が必要になるかもしれない。新しい方式についてじっくりと考える余裕がない顧客は多いので、自然な形では進まないだろう。
Microsoftの企業ユーザーは、MicrosoftのAzure計画を評価してはいるものの、大半はその流れにすぐに乗れる状態ではない。
米会計事務所Tamiyasu, Smith, Horn & Braunの共同経営者であるスーザン・ブラッドリー氏は、「クラウドに移行するとしたら、その動機は、アプリケーションをWebホステッドソリューションとしてしか提供するつもりはないと主要ベンダーに言われた場合と、こことは別の場所にあるサーバに何かを保管しておいた方がよい場合の2つだけだ」と話す。
ブラッドリー氏の事務所には、事務所内に保管している膨大な量の顧客の機密情報があるが、保守的なベテラン管理者たちは、クラウドのセキュリティについて根強い懸念を払拭できずにいる。
「この事務所の年齢が上のパートナーの中には、自分の目が黒いうちは、機密データをクラウドに預けないと息巻く人もいるが、若手の中には気にならないと言う人もいる」とブラッドリー氏は話す。
ただし、IT担当者は、一部のデータをクラウドに移す価値を認めている。
米大手銀行でシニアシステム管理者を務めるユージーン・リー氏は、「MicrosoftとAWSは当然、私に全てを移行してほしいだろう。しかし、ほんの一握りの製品やサービスを利用するために毎月の利用料を支払うのであれば、それだけの意味があり、適正価格で提供される必要がある」と話す。
中堅・中小企業にとってクラウド移行のもう1つの障害は、「技術的な問題が発生した場合にその性質と原因を特定するのが難しいことだ」と、ブラッドリー氏は話す。
「現状(オンプレミス)なら、何か問題が発生したらログインして何が起きているかを確認できる。しかし、クラウド内で何か問題が起きた場合、例えば、停電の影響を受けているのは自分だけなのか全利用者なのかをTwitterなどで確認する必要がある。クラウドには、必要とされる堅牢性はない」(ブラッドリー氏)
なお、Microsoftからはコメントを得られなかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー