「半年後には時代遅れ」の不安が払拭
停滞するiPhoneの技術進化を喜ぶ人々
新機能や新技術が相次いで盛り込まれ、新型モデルも頻繁に登場してきたモバイル端末。その革新のペースが鈍化しつつあることが、企業のモバイル端末導入を促すという見方がある。
モバイル端末の急速な進化がこのところスローダウンしてきたおかげで、IT部門はようやくその進化に追い付くことができそうだ。だがやるべき仕事はたくさんある。
2007年に米Appleの「iPhone」がデビューして以来、その後にリリースされたモバイル端末やモバイルOSは、どれも従来のITの常識を覆すような新機能を備えているように思えた。モバイル端末は、今でも大型化と高速化が進み、よりカラフルになっているが、画期的なイノベーションはあまり見られなくなった。
モバイル技術を専門とするコンサルティング会社の米Farpoint Groupのクレイグ・マサイアス社長は「技術進化のペースは鈍化している。最近のiPhoneの発表を見ても、あっと驚くようなものがない」と話す。
マサイアス氏によると、皮肉なことに、この小康状態のおかげで、ITプロフェッショナルや企業幹部がモバイル端末導入による業務刷新(モバイル化)を受け入れやすくなりそうだという。「モバイル技術に投資しても、半年後には時代遅れになるのではないか」という心配をしなくて済むからだ。
2013年9月末から10月初めにかけてニューヨークで開催されたカンファレンス「Interop」では、マサイアス氏をはじめとする講演者たちが、「IT部門がモバイル化を受け入れるためには何をなすべきか」、そして「この目標に到達するためにITベンダーが果たすべき役割」について説明した。
ほとんどの企業では、少なくともこの目標に向かって動き始めている。Interopでプレゼンテーションを行った米The 451 Groupの調査データによると、「モバイル戦略を策定済み」という企業は59%で、「現在策定中」の企業は27%である。だが課題も残されているようだ。
セキュリティと利便性のバランス
The 451 Groupによると、2013年におけるIT部門の最優先課題はモバイルセキュリティだが、ユーザーエクスペリエンスを犠牲にすることなく社内データのセキュリティを確保するのは難しい。
例えばセキュアコンテナは、社内のアプリケーションとデータを保護し、同じ端末にある個人用と業務用のアプリとデータを切り離すことにより、セキュリティと利便性の適切なバランスを実現することにある。セキュアコンテナの技術は、カナダのBlackBerryや米VMwareなどの企業から提供されている。マサイアス氏によると、セキュアコンテナのメリットを理解する企業が増えているため、今後普及が予想されるという。
問題は、コンテナ化された社内アプリがコンシューマー向けアプリと競合してしまうことだ。社内アプリの品質が同等か、もしくは優れているのでなければ、IT部門はユーザーから反発を受けることになるだろう。
例えば、投資会社の米MSD Capitalは、米Good Technologyのセキュアコンテナを採用しないことに決めた。MSD Capitalのカート・ブランガート最高情報責任者(CIO)によると、Good Technologyのメールアプリでは、従業員が受信する大量のメッセージに対応できないからだという。
「わが社のユーザーは、サードパーティーのメールクライアントを受け入れようとしなかった。そのために計画が頓挫した」とブランガート氏は語る。
管理の統合
モビリティやモバイルセキュリティを実現する新技術はどれも、専用の管理コンソールを備えているようだ。ただし、従来のデスクトップの管理も併せて考えると、端末管理が大きな負担になりかねない。
「やるべき仕事はまだたくさんある」と話すのは、投資会社の米Ziff Brothers Investmentsのマイケル・ミラーCIOだ。「管理ツールが別々というのは困る。モバイル端末とデスクトップの両方の管理に対応した製品で、使いたいと思うようなものは文字通り皆無だ」
接続の確保
本格的なモバイルワーカーたちは、どこからでも会社のデータとシステムにアクセスできる必要があるが、常にそれが可能とは限らない。「ビジネスでモビリティの重要性が高まり、クラウドを採用する企業が増える中、接続のニーズは高まる一方であり、この問題はさらに深刻化するだろう」と前出のマサイアス氏は指摘する。
「全ての必要な機能がモバイル端末に搭載されることはあり得ない」と同氏は話す。
この問題への対処を携帯通信事業者だけに任せておくわけにはいかない。米コンサルティング会社Endeavour Partnersのマイケル・デービス会長は「従業員がデスクに張り付く必要がなくなるのに伴い、企業も社内での接続性を確保しなければならない」と話す。
「社内のワイヤレス接続環境と通信容量は今後ますます重要になるだろう」(同氏)
セキュリティ機能の周知
端末メーカー各社は、IT部門向けのセキュリティ機能の採用を企業に促す努力をしている。こうした機能には、韓国Samsung Electronicsの技術である「SAFE」「Samsung KNOX」、Appleの「iOS 7」に組み込まれているモバイルアプリ管理機能などがある。
「だがベンダー各社は、派手なコンシューマー向け機能の宣伝の方に力を入れており、セキュリティ機能の宣伝にはあまり熱心ではない。これでは普及が進まない」と指摘するのは、米調査会社VDC Research Groupの上席アナリスト、エリック・クライン氏だ。
「OEM(発注元企業のブランド製品を製造するベンダー)は、こうしたエンタープライズ向け機能を必死になってユーザーに隠そうとしているのではないか」(同氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー