アナリストに聞くデスクトップ仮想化動向
【技術動向】続く技術進化とデバイス多様化で、着実に増えるデスクトップ仮想化導入
取り立てて新しい分野というわけではないデスクトップ仮想化。だが、市場は着実に伸びているという。ベンダーによる地道な技術革新と業務端末の多様化が後押しする。
デスクトップ仮想化(http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/wpkw/vdi.html◇Virtual Desktop Infrastructure:VDI◆)◆は新しい領域でもなければ急速に参入するベンダーが増加している分野でもない。しかし、着実に利用が伸びている分野である。そのきっかけとなっているのが、スマートフォンやタブレット端末といった、クライアントとなるデバイスの多様化だ。しかも、BYOD(Bring Your Own Device)といわれるように社員が自身の端末を持ち込むなど、セキュリティを含めた運用管理を行う側にとっては管理が複雑で難しい状況となっている。こうした動きに対し、デスクトップ仮想化技術/製品はどう変化しているのか。アイ・ティ・アールのシニア・アナリスト 三浦竜樹氏に動向を聞いた。
スマートフォン、タブレット台頭を追い風にと狙うベンダー
三浦氏はデスクトップ仮想化市場について次のように分析する。「具体的な数値は明らかに出来ないものの、デスクトップ仮想化は着実にベンダーの売り上げが伸びている分野となっている。最近はベンダー本社で日本市場向け施策予算を削る分野が多い中で、デスクトップ仮想化は日本市場向けにきちんと予算を確保し、展開しようとしている分野の1つ」
その要因は次の3点である。
- 日本市場は社内ネットワークも含めたモバイルインフラが整っている
- 日本市場はセキュリティ意識が高い
- 海外に比べ日本市場は運用管理者の負荷が高く、ツールなどを使った管理が遅れている
さらにデスクトップ仮想化普及の追い風となっているのがタブレットおよびスマートフォンの浸透である。
「日本のビジネスパーソンの多くが、外出先での作業はメールの送受信、スケジュールのチェック程度で事足りる。それ以上の作業が必要な人は既にノートPCを持ち歩いている」(三浦氏)
スマートフォンを利用しても作業はメール送受信とスケジュールチェック程度というと、情報漏えいの危険は低いように思われる。だが、「メールで送られてきたファイルをEvernoteやDropboxのような情報共有サイトに置いたり、FacebookのようなSNSでファイルを共有したりしたことから情報が漏えいすることがある。こうした事態を防ぐために、企業はBYOD全面禁止か、システム的な管理を行うかのどちらかを選択せざるを得ない。現在、ベンダー側がチャンスと考えているのは、全面禁止が難しくシステム的な管理を行わざるを得ないケース」(三浦氏)。あらためてシステム的な管理を行う必要性がクローズアップされてきているという。
デバイスが多様化する際、問題となるのが企業の固有アプリケーションをどう動かすかという問題だ。新たにスマートフォン用に作り直したり、Webアプリケーション化するケースもあるが、「スマートフォン用アプリ開発にはコストが掛かる。Web化した場合、スマートフォンやタブレットに最適化されていないため、『操作ボタンが小さくて作業がしにくい』といった不満が挙がるケースもある。そうした作業を行うよりも、デスクトップ仮想化で一元的に多彩なデバイスへの対応を行った方がコストも手間も少なくて済むという認識を企業側が持つようになっている」と三浦氏は指摘する。
ベンダー側でも、スマートフォンを介して仮想デスクトップを利用する際、少ない作業でスマートフォンに適した画面操作ができるSDKを提供。デバイス多様化に対応する用意を調えている。
最初に紹介したように、日本ではクライアント端末を管理するシステムの導入が欧米に比べ遅れているとされてきた。しかし、自前のスマートフォンやノートPCを利用するBYODが台頭。さらにそれを認める企業が増えてきていることで、デスクトップ仮想化のようにシステム的に端末を管理する必要性が高まっている。こうした状況を見て、各ベンダーが日本市場で攻勢をかけようとしている。
進行する機能強化も普及の後押しに
三浦氏は、「デスクトップ仮想化が市場拡大するもう1つの要因がある。各製品の機能が着実に進化していること」だと指摘する。
例えばデスクトップ仮想化では仮想PC環境ごとにディスクを割り当てるため、センター側で必要となるストレージ容量が大きくなってしまう弱点があった。しかし最近では、共通するOS、アプリケーションを1つで済ませて、固有部分だけをそれぞれ別に保存する技術が登場し、以前と比較して必要になるストレージ容量が激減した。
「ストレージ容量が少なくて済むことで、初期導入コストが大幅に下がるため、ユーザーに好意的に受け止められる」(三浦氏)
また、これまでパフォーマンス比較を行わずに導入製品を決定する企業も多かったものの、機能が拡充してきたことで、「比較した上で決定したい」という企業が増えつつあるという。
ちなみに、デスクトップ仮想化ソリューションを提供するベンダーといえば、シトリックス・システムズ・ジャパン、ヴイエムウェアが双璧だ。
もともとシトリックスがアプリケーションを仮想化する「Citrix XenApp」を提供してきたが、サーバ仮想化で高いシェアを持つヴイエムウェアがアプリケーション、デスクトップの仮想化分野にも進出してきた。
さらにこの2社に加え着実に伸びているのが日本マイクロソフトの「Microsoft VDI(Virtual Desktop Infrastructure)」だ。Windows Server 2012では管理性が高まり、導入も容易になったことで導入の増加が期待できる。
「ただし、Microsoft VDIは中小規模を想定している上、マイクロソフトがシトリックス、ヴイエムウェアの市場を本格的に奪うような動きをするとは考えにくい」(三浦氏)
この3社を軸に、2013年はスマートフォン、タブレットも含めたモバイルデバイスの本格活用と絡めてデスクトップ仮想化市場は活性化すると三浦氏は見ている。
ちなみにデスクトップ仮想化をサービスとして提供するDaaS(Desktop as a Service)についてはどうか。「DaaSも少しずつ市場が拡大しているが、一部の部門ではDaaSではなくサーバを自社運用してデスクトップ仮想化を導入したところ、自社運用の方がコストが安いことが判明。ベンダー側も戦略的な価格を提示することでデスクトップ仮想化を実践する企業が増えるのではないか」と予測している。
MDMも含めた総合的なクライアント管理が必要
三浦氏は「企業の実情を考えると、デスクトップ仮想化だけを選択するということにはならないだろう。例えば、スマートフォンを企業で利用する場合、デスクトップ仮想化だけでなく、スマートフォンのカメラ機能を制御するためのモバイルデバイス管理(MDM)が必要になる。逆に学校など利用するアプリケーションが定型化している場合、アプリケーション仮想化が適している場合もある。トータルでクライアント仮想化として捉えた方が適切ではないか」との見解を示す。
なお、アイ・ティ・アールでは過去12年間、ユーザーに51分野の導入状況を調査、集計し、指数で発表しているが、「デスクトップ仮想化は、アプリケーション仮想化と混同され、ベンダーの出荷本数以上にたくさんの数が導入されているという調査結果が出てしまう分野だった」という。
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