Web版、モバイル版提供で激変
実は無料版も 知らないと損をする「Microsoft Office」再入門
オンライン版オフィス「Office Web Apps」が「Office Online」へと名称変更した。iOS/Android向けのフル機能版Officeは依然として存在がはっきりしない。近年、「Microsoft Office」をめぐる状況が複雑化している。
米Microsoftは2014年2月20日、オンライン版オフィススイート「Office Web Apps」を「Office Online」へと名称変更した。Office Onlineは現在、クラウドストレージサービス「OneDrive」(旧SkyDrive)からだけでなく、Office.comの新しいWebページからもアクセス可能だ。
Office Onlineでは、Webメールサービス「Outlook.com」とオンライン版の「Word Online」「Excel Online」「PowerPoint Online」「OneNote Online」に加え、OneDrive、「カレンダー」「People」が利用できる。
一方で、MicrosoftがiPad版/Android版Office製品の開発を進めているのかどうかは不明だ。本稿では、サービス拡大が進む「Microsoft Office」(以下、Office)の今後方向性を探っていく。
バルマー氏が約束したiOS/Android版Office
スティーブ・バルマー氏は、Microsoftの最高経営責任者(CEO)だった当時(2013年秋)、同社がiOSとAndroidの両OSでネイティブに使えるOffice製品を開発すると何度となく約束している。
現時点では、Microsoftのこうした意向を疑問視する声もあるが、少なくともiPad用のネイティブなOfficeアプリが提供されることを信じている人もいる。
iPadやAndroidタブレット用のアプリが提供されるとしても疑問は残る。現在、MicrosoftがiOSやAndroidプラットフォームに対して提供している、一部のオプションが大幅に増強される可能性はあるのだろうか。
Miramarのリリースは間近か
米情報サイトのZDNetが2月14日に掲載した記事によると、Microsoftは2014年前半にiPad用のOfficeアプリをリリースする計画だという。
開発コード名「Miramar」というこのアプリを利用するには、クラウドサービス「Office 365」のサブスクリプションが必要になる見込みである。ファイルは既定でOneDriveに保存され、ローカルに保存するオプションも提供されるもよう。
MicrosoftにとってのOfficeの意味
一方で、MicrosoftはWindowsと他OSを差別化する武器としてOfficeを利用している――このような考えを同社マーケティング部門の責任者が認めた、といううわさを数週間前に耳にした。
Microsoftのマーケティング部門執行副社長タミ・レラー氏は、米ニューヨーク市で開催された「Goldman Sachs Technology & Internet Conference」で次のように述べている。「Microsoftでは、完全なWindowsエクスペリエンス(体験)を差別化し続ける方法について、時間をかけて検討している。特にパートナーに対しては、AndroidではなくWindowsを選んでもらう方法の検討に多くの時間を費やしている」
これは、「Windowsの魅力を損なう」ことになっても、MicrosoftはOffice製品を他のプラットフォーム向けに「転用」するつもりがあるのかというモデレーターからの質問に対するレラー氏の回答だ。
同氏の発言は、大きく解釈すると、MicrosoftがiPadとAndroid向けOfficeアプリの開発計画をなかったことにしようとしているとも受け取れる。だが、そのことについて同氏は一切触れていない。
同氏の短い発言の中で、最も重要な部分は「完全なWindowsエクスペリエンス」である。
無料だが機能が限定されるOffice Online
前述のOffice Onlineは、Office Web Appsから単に名称を変更しただけのようだ。WebブラウザベースのOffice Onlineは、OfficeスイートやOffice 365と同じ「完全なエクスペリエンス」を提供しているとは言い難い。
Office Onlineを使用するには、インターネット接続が必須だ。ドキュメントはOneDriveに保存しておく必要がある。その他のクラウドストレージにはアクセスできない。用意されている機能は、基本的な編集機能くらいで、Office Onlineには、Wordの変更履歴追跡などの機能もなければ、AirPrint印刷のサポートもない。
Office OnlineとOffice 365を比較
Office Onlineには、「オンライン版」のWord、Excel、PowerPoint、OneNoteに加え、OneDriveの無料ストレージ(7Gバイト)が含まれる。
Microsoftが消費者向けに有料で提供しているOffice 365(「Office 365 Home Premium」および「Office 365 University」(日本未提供))と比較してみよう。Office 365では、5台までのPC/Macにフル機能のOffice(Word、Excel、PowerPoint、Outlook、OneNote、Publisher、Access)をインストールできる。また、オフライン版Office、オンラインストレージ、オフラインストレージへの保存、毎月1時間分のSkype無料通話が付随し、Windows Phone/iPhone/Androidのスマートフォンからも利用できる。
Home Premiumは月額9.99ドル、Universityは4年間で79.99ドル。なお、Office Onlineを利用するために、Office 365のサブスクリプションを契約する必要はない。Office Onlineは、OneDriveを利用していれば無料で使用できる。
つまり、Office Onlineは、Webブラウザアプリであることが分かりやすい名前になったこと以外に、特に目新しい点はないといえる。
Office Mobileの限られた機能
モバイル用アプリの「Office Mobile」を用いれば、iPhoneおよびAndroidのスマートフォンからOfficeを利用することができる。だが、現時点でこのアプリは、Office 365の利用者しか利用できない。この状況はこれまでと変わらない。
いずれにしても、Office Mobileの機能は限定的だ。ユーザーは、Officeファイルを開く、編集する、電子メールでファイルを共有する、テキストを検索して書式設定する、コメントを追加、削除および表示するなどの操作のみを行うことができる。
実際、「App Store」や「Google Play」などのアプリストアでは、「書式設定のオプションが少ない」「OneDrive以外のクラウドサービスにファイルを保存できない」といったユーザーの不満が噴出している。Androidユーザーの中には、Android用の同アプリが宣伝されているように機能しないと主張しているケースも見られる。
App Storeには、次のようなユーザーレビューが寄せられている。「新しいドキュメントを作成するときには、Word、Excel、または幾つかのテンプレートしか選べない。この点は受け入れようと思い、新しいWord文書を開いてみたが、基本的なテキスト入力オプションしかない。箇条書きや段落番号の作成機能、画像の挿入機能は見当たらない」
「元のファイルの貧相なバージョンが表示された。適切に編集もできなければ、適切に表示もされない」と不満を抱くユーザーがGoogle Playにレビューを投稿している。
完全な機能を備えたバージョンを使用できるのはWindowsとMacのみ
これまで説明したOffice Online、Office Mobileなどから分かるように、現状、ユーザーが完全な機能を備えたOffice製品を使用できるのは、Windowsタブレット/PCおよびMacのみだ。
Microsoftは中型サイズのWindowsタブレットを製造しているメーカーに、ほぼ無償でOfficeを提供しているようだ。中型タブレットの価格は300ドル前後なので、OEMはOfficeスイートにコストを掛けることができない。
2014年1月に開催された展示会「2014 International CES」で、米Intelと米AMDの両社は、WindowsとAndroidの両方が動作可能なデバイスの開発にOEMと協力して取り組む計画を発表した。これは、MicrosoftがAndroidタブレット用Officeの開発について優先順位を上げない分かりやすい理由の1つだ。
Microsoftは、OEMのバンドル契約と、Office 365の消費者向けプラン以外の方法でも、Officeを提供している。WindowsとMac向けにフル機能を備えたエディションをパッケージ版として販売する他、企業向けにはソフトウェアライセンスとOffice 365サブスクリプションの形で販売している。
Office 365の販売は着実に増加している。Microsoftが2014年1月に発表した決算報告によると、Office 365のシート数は前四半期比で100%増加した。Office 365 Home Premiumの登録ユーザー数は、2013年12月時点で350万人に達している。
フル機能のOfficeに対し、Office Onlineでは、iPhone/Android向けスマートフォン用のモバイルアプリと同様、必要最小限の機能しか提供していない。
MicrososftがOffice Onlineの利用促進に力を注げば、Officeの売り上げ全体が落ち込む可能性がある。その理由は単純で、無料代替サービスであるOffice Onlineの認知度が高まるからだ。
ただ、GoogleドキュメントやOpen Officeといった無料オフィススイートとの競争を考えると、Microsoftに選択の余地はあまりないだろう。
今後のMicrosoft Officeに期待したいこと
Mirimarには既視感を覚える。ここまで説明した通り、Mirimarは、Office Mobileと同様に、OneDriveと統合され、Office 365のライセンスが必要になるだろう。
たとえそうだとしても、将来登場するiPadアプリは、Office MobileやSafariで動作するOffice Onlineよりも優れた機能を備えていることを願いたい。また、最終的にはAndroidタブレットでも十分なエクスペリエンスを提供するOfficeが開発されることにも期待したい。
Microsoftが中途半端なiPadとAndroidアプリしか提供しないとしたら、この戦略は逆効果になるだろう。フル機能を備えたOfficeだけでは、Windowsタブレットにユーザーを引き付けることはできないのだから。
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