Windows Server 2003ユーザーのためのHyper-V解説【第5回】
クラウドへのDRを簡単に「Azure Site Recovery」3つの利用シナリオ
Microsoft Azureの機能である「仮想マシン」と「Azure Site Recovery」(ASR)は、オンプレミスでHyper-Vを利用するユーザーにとって便利なサービスである。
米Microsoftは創業以来、いまだかつて経験したことがないほどの変革期を迎えている。2014年に就任した新CEO(最高経営責任者)のサトヤ・ナデラを中心に、既存のビジネスモデルに固執することなく、時代の変化とニーズに合わせて自らを大胆に変えて行く。具体的には、PCやオンプレミスのサーバ関連製品を中心とした従来型ビジネスから脱却を図り、クラウドコンピューティングとモバイル関連のサービスや製品を中心に扱うベンダーへとシフトしている。クラウドをいかんなく活用するにはモバイル機器の活用は必須であり、この両者は表裏一体の関係にある。このコンセプトにおいて、クラウドの側面を大きく担うのが「Microsoft Azure」に他ならない。そして、このAzureのベースとなるテクノロジーが「Hype-V」である。今回は、Hyper-Vと関連したAzureの機能について解説する。なお、本連載は「Windows Server 2003」を使用し、まだ仮想化を進めていないユーザーを想定読者としている。
PaaSとIaaSの両方をカバーするAzure
クラウドとは「サーバやストレージなどのコンピュータのリソースを、主にインターネット経由にて時間単位で利用できるサービス」である。これに対して、今までのようにサーバ機器類を購入して自社のデータセンターやサーバルームに設置して活用する形態をオンプレミス(構内/店内の、という意味)と呼ぶ。
クラウドにはさまざまな配備モデルやサービスモデルが存在する。ここでは詳しく触れずに別段に譲るが(参考:“オレオレクラウド”にはこりごり、クラウドの本質を知る)、米国の国立標準技術研究所(NIST)の定義に習えば、Azureはパブリッククラウドの配備モデルで、PaaS(Platform as a Service)およびIaaS(Infrastructure as a Service)のサービスモデルに分類される(Azureの詳細に関してはこちら:Windows Azureを企業利用するための基礎知識)。
AzureのIaaSレイヤー「仮想マシン」
毎月のようにサービス内容が拡充されるAzureにおいて、代表的なサービスであるのが「仮想マシン」だ。仮想マシンは、IaaSレイヤーに該当するインフラストラクチャを時間単位で利用できるサービスである。ユーザーにはOSより上位層のシステムを操作する権限が与えられ、オンプレミスのサーバと同様に、自由にOSの設定やミドルウェア、アプリケーションのインストールができるという、非常にイメージしやすいサービスだ。
Azureの仮想マシンは、Hyper-Vの仮想マシンとして動作している。サービス名がずばり「仮想マシン」のため紛らわしいが、Azureの仮想マシンサービスのハイパーバイザーは、「VMware ESX/ESXi」でも「Xen」でもなくHyper-Vであり、その上で動作しているゲストOSとしての仮想マシンを時間単位で利用する姿を想像すると分かりやすい。
ただしAzureの仮想マシンを利用しているときに、ユーザーがHyper-V側の動作を意識する必要はほとんどない。その管理はクラウドサービスベンダーであるMicrosoftが行う。ユーザーは、ハイパーバイザー以下のシステムを意識せずに利用できる。
Hyper-Vの仮想マシンのイメージは「.vhd」というファイル形式で保存される。Azureの仮想マシンも同様に.vhdファイル形式で保存される(.vhdxファイルには未対応)。つまり、オンプレミスで動作させているHyper-V環境とAzure環境とでハイパーバイザーが共通のため、この2つの環境で仮想マシンのイメージを相互に移行することが可能になっている。実際の作業は、前回の記事(Hyper-Vだけじゃない、統合管理ツール「System Center Virtual Machine Manager」のカバー能力)で紹介した「System Center Virtual Machine Manager」(SCVMM)の機能、もしくはAzureのSDKに同梱されているPowerShellコマンドなどを用いて移行する(ライブマイグレーションは未対応)。
「.vmdk」などの他の仮想マシンイメージ形式のファイルでも.vhd形式に変換すればAzureへの移行は可能であるが、Hyper-Vで動作している仮想マシンに関しては、極めてシームレスに移行が可能でありポータビリティが確保されている。例えば、あなたがHyper-Vを使って構築したプライベートクラウド環境とAzure環境を両方管理しているのであれば、仮想マシンに関してはこの環境間を自在に移行できる。また、両環境の管理を1つのSystem Centerを通じて透過的に行うことも可能だ。複数のプラットフォームを一貫して管理することができるのが、Microsoftが掲げるCloud OSビジョンである。
復旧サービス「Azure Site Recovery」、3つの利用シナリオ
Hyper-Vに関連するAzureのサービスに、事業継続計画/災害復旧(BCP/DR)対策に効果的なサービス「Azure Site Recovery」(ASR)がある。
ASRは、オンプレミスのHyper-V上で動作する仮想マシンのレプリカを、異なる別のオンプレミスのサイトまたはAzure上に構築するソリューションだ。通常システムを稼働させているプライマリサイトが有事の際に、コミュニケーションチャネルを通じてプライマリサイトからセカンダリサイトまたはAzure上へ自動あるいは手動でフェイルオーバーさせてシステムを継続することができる。普段からレプリケーションチャネルを通じてデータを同期しているからこそ実現できる対策である。ASRのテクノロジーは、本連載の第3回(手軽に始められる、Hyper-Vの「BCP/DR対策」「無停止運用」機能)で解説したHyper-Vレプリカの機能をベースとしている。
ARSには、(1)「2つの内部設置型Hyper-Vサイトの間」、(2)「内部設置型Hyper-VとMicrosoft Azureとの間」、(3)「2つの内部設置型VMwareサイトの間」という3つの利用シナリオがあり、いずれかを選択して利用を開始する(ここでの内部設置という言葉は、オンプレミスという言葉を指している)。
利用シナリオ(1)2つの内部設置型Hyper-Vサイトの間
SCVMMで管理される2つのオンプレミスのサイト間で、仮想マシンのレプリケーションを構成する。有事の際には、ワンクリックでプライマリサイトからセカンダリサイトにフェイルオーバーすることができる。ワンクリックというシンプルなアクションでフェイルオーバーに関する一連の処理を実行するため、あらかじめ復旧計画という定義を作成し、対象となるSCVMMサーバやオンプレミスサーバとの依存関係を考慮し、仮想マシン群の起動の順番などを定義することができる。
利用シナリオ(2)内部設置型Hyper-VサイトとMicrosoft Azureの間
SCVMMで管理されるオンプレミスのサイトと、Azureの仮想マシンとでレプリケーションを構成する。(1)の利用シナリオと同様、復旧計画を定義しておくことができる。特徴は、セカンダリサイトがAzure上のためハードウェアが不要であること、平常時はデータの同期のみでAzure上の仮想マシン自体は起動しておらず、フェイルオーバー後に初めて起動するというコールドスタンバイである。Azureの課金に無駄がなく、リーズナブルにフェイルオーバーを実現できる。これぞASRの真骨頂を発揮する利用シナリオである。
利用シナリオ(3)2つの内部設置型VMwareサイトの間
VMware環境および物理サーバを対象とした利用シナリオになる。VMware環境で構成された2つのプライベートクラウド間や、WindowsまたはLinuxが稼働する物理サーバとVMware環境間のレプリケーションが可能となる。なぜMicrosoftがVMware環境を扱うのかという問いは至極当然の疑問である。これは、VMware環境を含むヘテロジニアス(異種混合)な環境を対象とするDRやバックアップのソリューションを持っていたInMageという企業をMicrosoftが買収し、それをASRの機能として取り込んだからだ。このように、Azureでは多くの利用シーンでDRやバックアップを実現できる。
以上、各自の環境に適した利用シナリオでASRを活用することで、オンプレミスだけでなくクラウドを活用したBCP/DR対策ができることを説明してきた。
既に世の中はクラウド時代に本格的に突入している。Hyper-Vによる仮想化の先には必ずAzureがある。このことを念頭に置くことで、先々まで見通したIT投資計画を立てていただきたい。
さて、今回で本連載は最終回となる。Microsoftの仮想化の歴史、Hyper-Vを活用した移行、Hyper-Vの先進的な機能やその活用方法、Cloud OSビジョンに基づくSystem CenterやAzureの機能といった解説を終える。
Hyper-Vはテクノロジーとして確立されており、既に多くの実績がある。またHyper-VをベースとしたクラウドサービスのAzureも、かなりの勢いで活用が進んでいる。Windows Server 2003を活用しているユーザーの皆さんには、2015年7月にサポートが終了することをいま一度念頭に置いて、これまで紹介した機能や活用方法を十分に活用してほしいと願う次第である。
田中 隆三郎(たなか りゅうさぶろう)
日本マイクロソフト インキュベーションセールス部 テクノロジースペシャリスト
現在の担当はMicrosoft Azureのプリセールス。
ソフトウェアディベロッパーとして数社で開発業務に従事した後、SIer企業にてSAPアップグレード業務や、AWSやGoogleなどのパブリッククラウドを活用した事業推進に従事。2013年より現職に就く。現在の関心事は、クラウドのテクノロジーとそれを取り巻く業界全般。
ベーシストかつスキューバダイバーで、最近の趣味は温泉とゆるキャラ。
ブログ:Heart and Soul
Twitter:@rewtheblow
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Windows Server 2003ユーザーのためのHyper-V解説
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
SNS認証や多要素認証も数分で実装、IDaaS基盤でデジタルビジネスはどう変わる? -
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
4
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
5
「即戦力」は幻想? 中途の3割が消えるAI時代のエンジニア生存戦略
-
6
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
7
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
8
PCリプレース時には注意 不完全なデータ消去が情報漏えいのリスクに
-
9
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
10
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
AIエージェントで成果は出る? 調査結果に見る費用対効果の実態
-
9
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
10
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー