Microsoft、Googleが挑みかかる
10周年を迎えた「AWS」、ライバル急伸で本当の勝負が始まる(1/2 ページ)
2016年3月で10周年を迎えた「Amazon Web Services」(AWS)は、市場で本当の競争が生じる可能性に初めて直面する。これからの10年間はこれまでと違うものになることが予想される。
Amazon Web Services(Amazon)が提供するクラウドサービス「Amazon Web Services」(AWS)は、2016年3月で10周年を迎えた。だが現在は、10年前のクラウド構築に協力的だった環境と全く異なる状況に直面している。
AWSの歴史を振り返ってみよう。2006年3月に「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)の提供を開始し、2006年8月には「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)のβ版を投入した。これらのサービスによってクラウドコンピューティングが普及した。そして、AWSは誰もが認める市場の覇者となり、オンライン小売りビジネスの有名企業であるAmazon.comにとって数十億ドルの収入源となっている。
AWSは11年目を迎え、クラウド市場での占有率をさらに高めるために企業のワークロードの獲得を進めている。また、市場でも初めて本当の意味での競争の兆候が見られているため、これからの10年間はこれまでと大きく異なるものになる可能性が高い。
DellやHewlett-Packard Enterprise(HPE)といった老舗ベンダーからRackspaceなどのマネージドホスティング企業に至るまで、AWSに競合を挑み、そしてクラウド市場から撤退した企業は後を絶たない。DigitalOceanのような小規模プロバイダーは、パブリッククラウドのニッチ市場の開拓を続けている。一方、IBMやOracleなどの大手ベンダーは、この分野に進出しようとしている。だが、2014~2016年の間にAWSの代替となり得るパブリッククラウドが2つ登場している。それは、Googleの「Google Cloud Platform」(GCP)とMicrosoftの「Microsoft Azure」(Azure)だ。
「もちろん、現時点での競争は相対的なものである。AWSには両方のプラットフォームの倍以上の歴史があり、AWSのマーケットシェアは両者の合計の2倍にも上る。規模の面では後れを取っているものの、AzureとGCPはどちらもイノベーションの頻度を高め、新製品のリリースサイクルを短縮している」とForrester Researchのプリンシパルアナリストであるデイヴ・バルトレッティ氏は語る。
「迅速なイノベーションによりAWSは他社のはるか先を進んできたが、今では賢明で優秀な競合企業が台頭してきているのが現状だ」(バルトレッティ氏)
GoogleとMicrosoftが市場に参入してから、Amazonは新しいクラウドサービスを提供している。そのため、インフラ価格の底値競争が繰り広げられるだけではなく、この競争は顧客にメリットをもたらしている。AWSの顧客でもあるACI Information Groupで、テクノロジー担当バイスプレジデントを務めるクリス・モヤー氏は次のように述べている。「Amazonは、新規ユーザーをレガシーシステムから取り込むのと同様に、AWSのプラットフォームにとどまるようユーザーを説得することにも注力している」
「競争は誰にでもメリットがある。本当の意味での競争が行われることを切に願っている」(モヤー氏)
兎にも角にも大企業
Amazonはスタートアップ企業に対して確固たる基盤を築いていたが、ここ数年間は対象を大企業にシフトしている。同社が掲げる最優先事項の1つは、Oracleデータベースに基づく全てのコアシステムのレコードを「変える」ことである。つまり、Oracleの影響を一掃する動きだとバルトレッティ氏は指摘する。
AWSの「AWS Database Migration Service」は2015年秋の「re:Invent」で公表され、2016年3月後半に一般公開されている。このサービスがユーザーを取り込むための鍵だ。このサービスは、Oracleのデータベース、Microsoftの「SQL Server」や「MySQL」「MariaDB」「PostgreSQL」データベースなどのオンプレミスのレガシーシステムを対象としている。
AWSの優れた強みの1つは、「サービスをどう向上すべきか」「なぜAWSを使っていないか」といったサービスに関するユーザーの意見に積極的に耳を傾けてきたことだ。AWS Database Migration Serviceは、大規模ユーザーおよびそのワークロードの移行は困難で不可能という懸念に対するAmazonの回答だとモヤー氏は語る。
クラウドへと緩やかに移行する大企業に対しては、未開の大きな収入が見込める。だが、大規模ユーザーはAmazonが非常に激しい競争に直面することが予想される領域だ。実際、これは第2位の競合として台頭したMicrosoftが成功している分野である。
「確かにAmazonは企業に支持されるようになってきたが、MicrosoftがAmazonに追い付くのは時間の問題だろう。Microsoftと企業の間には、長年にわたって構築された関係があるからだ」とVidRollで最高技術責任者(CTO)を務めるジェームス・ヤング氏は語る。VidRollは複数のAWSリソースを使用してコンテンツパブリッシャー向けのビデオテクノロジーと通貨プラットフォームを開発している。
Googleの技術は称賛されているが、クラウドに関しては2位に大差をつけられた3番手と認識されることが多い。しかし、そのGoogleでさえ、2015年後半にVMwareの共同創業者で元最高経営責任者(CEO)であるダイアン・グリーン氏を迎えて以降、顧客ベースの拡大に進展が見られる。Spotifyはコンテンツのストリーミングと保存にAWSを使用しているが、その他のオンプレミスのワークロードはGoogleのサービスに移行する予定だ。また、報道によれば、Appleも同様に「iCloud」にGoogleのストレージを使用することを現在計画している。
GoogleとAppleはコメントの要請に反応しておらず、この取引をどちらも公には認めていない。また、Appleは、AmazonやMicrosoftとのパブリッククラウドに関する契約について語っていないが、あるホワイトペーパーでAmazon S3とMicrosoft Azureをバックアップに使用していることに言及している。
Amazonの担当者は次のように発表している。「企業とのビジネスに精通しているベンダーは、顧客との機密保持契約(NDA)に配慮し、ありもしない競合の欠陥を示唆することもない。この状況は当社にとっては悩みの種になっている」
AppleのパートナーであるIBMもMicrosoftと同様に強固な大規模顧客基盤を保有している。IBMもAmazonの将来的な成長プランにとって脅威となるだろう。2016年3月上旬、IBMは新しいクラウドサービス群を公表している。VMwareユーザーが無修正でワークロードをIBMのクラウドに移行できるパートナーシップによって、企業はIBMのサービスを利用する大義名分を手に入れている。
パブリッククラウドにおけるマルチプラットフォームのバックアップは、前例がないわけではない。AWSの申し子ともいえるNetflixでさえ、Googleのクラウドにデータをバックアップしていると公言している。
AWSが企業との間で直面する課題は他にもある。それは、ワークロードが大きくなりすぎるか常時実行されている場合に、オンプレミスでワークロードを実行するよりもパブリッククラウドで実行する方が高くつくことだ。
直近の事例はDropboxだ。Dropboxは何十億というファイルをAmazon S3に保存している。ただし、EB(エクサバイト)規模のストレージシステムを処理するカスタムインフラを使用してパフォーマンス向上とコスト削減を実現するために、2年半もの歳月をかけてマルチリージョンの自社プライベートクラウドにファイルの90%を移行している。このような移行したにもかかわらず、欧州での拡大によってDropboxはAWSの利用を継続する予定だ。
容量の大きさと可用性の要件から、Dropboxは一般的な事例ではなく例外的な事例かもしれない。また、何社かの大手有名企業はクラウドに全面移行している。Netflixもその一例だ。同社は2016年2月に最後のデータセンターの運用を停止し、7年間にわたる移行を完了したところである。
競争は激化している。だが、AWSユーザーは、他のベンダーが提供するサービスは十分ではなく、すぐにAWSの使用をやめるつもりはないと語る。
「少なくとも現時点では、1つの場所であらゆるサービスを提供しているベンダーはAWS以外に存在しない」(モヤー氏)
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