変わるIT部門の役割
“クラウド失業”に心穏やかでないIT担当者、打つ手はどこに?
クラウドの浸透は、IT担当者の失業不安をあおるものでもある。企業のIT担当者と良好な関係を結び、着実に顧客を増やすために、今クラウドプロバイダーがなすべきこととは?
多くの企業が、伝統的なITインフラストラクチャから、より迅速なデプロイ、初期費用の削減、そして保守管理の負担低減を実現するクラウドサービスへの切り替えを図っている。しかし、自分たちの仕事がクラウドサービスへアウトソーシングされてパニックになっている企業のITプロフェショナルたちは、必ずしも心穏やかではないはずだ。
「重要なアプリケーション、重要な役割を担うITの機能は社内に置かれているが、クラウドサービスはいずれIT部門のポジションを脅かす存在になるだろう」と語るのは、調査会社、米Forrester Researchの副社長で主席アナリストジェームズ・スタテン氏だ。
「MicrosoftExchangeを管理しているだけの電子メール管理者は、会社がOffice 365に移行すれば、お払い箱になるかもしれない」と同氏。ディザスタリカバリの専門家やWindowsシステム管理者など、他の役割についても同じことが言えそうだ。
これまでのように無理やりつま先を踏み入れるやり方ではなく、企業のITチームと連携できるクラウドプロバイダーは、よりよい立場で迎えられ、顧客との間にもっと建設的な関係を築き、エンタープライズクラウドの受け入れを顧客に推進できるようになるだろう。
エンタープライズクラウドの普及
「クラウドプロバイダーは、IT部門の脅威になるだけではない。企業が必要に応じてクラウドサービスやソフトウェアアプリケーションを購入できるようになり、社内の事業部もユーザーである従業員たちも、IT部門を完全に無視し始めている。社内のITチームは、たとえ自分たちの職務を侵される危険性があっても、ユーザーのニーズには応じなければならない。一方、クラウドプロバイダーには、コストとセキュリティの面から、顧客のIT環境に適切なクラウドサービスを提案するチャンスがある」
こう語るのは、データセンターインフラストラクチャ/クラウドサービスプロバイダー、米Datalinkの仮想化プラクティスマネジャー、ケント・クリステンセン氏だ。
Datalinkには、顧客企業のITチームをクラウドサービスのブローカーとしてトレーニングするコンサルティング部門がある。企業のIT部門から強奪者ではなく、信頼できるパートナーとみなされるために、他のクラウドプロバイダーがモデルにすべき部門といえる。
「社内の事業部はさまざまなニーズをIT部門に持ち込む。われわれは、IT部門が社内ユーザー向けに適切なサービスを、より低コストで、迅速に、そして高いセキュリティを確保して構築することを支援する。クラウドプロバイダーは売り上げを伸ばし、IT部門は助かる。双方がハッピーになれる関係だ」と同氏。
またプロバイダーは、手間が掛かる運用業務を外部委託する手段として自社のサービスを位置付け、ITプロを煩わしい作業から解放し、新しいプロジェクトや大きなプロジェクトに専心できるようにすることも可能だ。
「ITは日常業務をできるだけ減らそうとしている。それこそクラウドプロバイダーが手助けできるところだ」とクリステンセン氏は話す。
エンタープライズクラウドの普及は、一夜では実現しない。だが、「IT部門は早い段階から社内の管理者とともにチームとして働いてくれたプロバイダーを信頼するようになるだろう」と米調査会社Infonetics Researchのデータセンターおよびクラウド担当アナリスト、クリフ・グロスナー氏は語る。
「プロバイダーは企業の痒いところを探し、さまざまなサービスを組み合わせ、特定のニーズに焦点を絞った方法で応えるべきだ。もしプロバイダーが一度に大量のサービスを押し付けようとすると、顧客側に疑念が生まれる。そうなれば、IT部門はそのプロバイダーとビジネスを続けることに安心感を持っていられなくなるだろう」
ITの新しい役割の定義を手助けする
「クラウドモデルは多くのITプロフェショナルに文化的シフトを要求するが、プロバイダーはクラウドが彼らの仕事を時代遅れにしないという理解によって、より専門的な役割を担う彼らを助けることができる」と、前出のスタテン氏は話す。
「もしITプロフェショナルが今後も技術的な役割を果たしたいと望むなら、彼らはプロバイダーの助けとともに、自分たちのスキルを広範なサービスに向けて広げることも可能だ。いつか会社は自分の仕事を外部に委託するだろう、とおびえながら行う電子メール管理から脱し、電子メールのアーカイブや暗号化といった会社が必要とする独自の仕事に集中できるようになる」
ハイブリッドクラウドは、そうしたITプロの不安を払拭してくれる。「IT部門によるアプリケーションのコントロールを一定のレベルに維持しながら、プロバイダーは誰かの生活を危機に陥れることなく売り上げを伸ばすことができる」と調査会社、米Current Analysisのセキュリティおよびデータセンターサービス担当主席アナリスト、ラーセン・デカルロ氏は語る。
「プロバイダーは顧客に自信を持たせる必要がある。IT部門に一定のコントロールとセキュリティ管理を委ねるようなサービスを提供することで、それが可能になるはずだ」
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