2021年のDXトレンド予測【後編】
「リアルタイムデータ処理」「MLOps」が2021年のDXに必要な理由
2021年はビジネスそのもののスピードを加速させる技術に注目が集まるだろう。リアルタイムのデータ処理を可能にする技術分野や、機械学習モデル開発の効率化、といったトレンドを探る。
デジタルトランスフォーメーション(DX)に関して、2021年に動きが活発化すると考えられる5大トレンドを紹介する本連載。「アジャイル」を紹介した前編「アジャイルが『DX』に貢献する理由 もう単なるソフトウェア開発手法ではない?」、そして「ノーコード/ローコード開発」「マルチクラウド」を紹介した中編「DXの加速に『ノーコード/ローコード開発』と『マルチクラウド』が不可欠な理由」に続く本稿は、残る2つのトレンドを紹介する。取り上げるトレンドはデータの即時かつ高速な処理を可能にする「リアルタイムデータ処理」と、DevOps(開発と運用の融合)を機械学習モデルの開発に生かす「MLOps」だ。
トレンド4.リアルタイムデータ処理:アプリ開発の主流に
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かつてリアルタイムデータ処理とは、金融サービスや広告技術など、データの遅延が数秒解消されるだけで大きな優位に立てる用途のための、実現困難な技術的目標だった。「毎晩」「週に1回」「月に1回」といった頻度で実施する不安定なデータ更新と、手作業によるデータ品質問題の解決、複雑なクエリの実行が日常業務だった。
今の最高情報責任者(CIO)やIT部門長といったITリーダーには、リアルタイムデータ処理を可能にする次のような技術の選択肢がある。
- オンデマンドで拡張できるクラウドサービス
- 「Apache Kafka」「Apache Spark」のようなオープンソースの分散処理ミドルウェア
- リアルタイムのストリームデータ処理ツール
- イベント駆動型コード実行サービス
- RPA(ロボティックプロセスオートメーション)ソフトウェア(データ収集を自動化)
トレンド5.MLOps:機械学習を実験から本番運用へ
機械学習モデルの実用化に到達しているのは、大手IT企業やソーシャルメディア、最先端技術を扱う大企業など一握りだけだ。機械学習のスタートアップ(創業間もない企業)のAlgorithmiaが発表した報告書「2020 state of enterprise machine learning」によると、機械学習モデルを本番環境にデプロイ(配備)していないという回答は55%に上った。機械学習モデルのデプロイに成功した組織でさえも苦労しており、対象企業の約40%がモデルのデプロイに31日以上を要している。調査会社IDCが2020年6月に発表した調査結果では、機械学習を含む人工知能(AI)プロジェクトの28%以上が失敗に終わっていた。
企業が現在苦慮している状況を、機械学習が消滅する兆候だと誤解してはならない。MLOpsについて理解を深める組織やデータサイエンティストが増え、機械学習のライフサイクル管理機能を提供するツールが増えれば、機械学習は定着する。
その理由は明らかだ。MLOpsは先進的な組織にデプロイ時間を短縮する機会をもたらし、本番環境で機械学習モデルにドリフト(何らかの原因で予測精度が低下すること)が起きていないかどうかを監視する機会を与える。AI技術をビジネスに取り入れるプロセスの初期段階にある組織は、MLOpsの仕組みによって運用管理の手段を手に入れることができ、データサイエンティストはモデル開発とテストに専念できる。2021年は、本番環境で機械学習モデルの成功を実証する企業が増えるはずだ。
DXのトレンドをビジネス価値向上につなげる
DXのトレンドは、この用語の広範な意味に沿ってあらゆるビジネス領域に及ぶ。ただし本連載が挙げた5つのトレンドは、競争力に貢献するデータや技術的可能性を通じて、直近のビジネスに良い影響を及ぼしそうな技術や手法に照準を絞っている。
2021年は顧客エクスペリエンス(経験価値)や業務効率、技術力を向上させる取り組みが重要になる。こうした目標達成につながる新技術を導入する際には、広範な技術知識を獲得し、無数の実装リスクを解決する必要がある。
言い換えればノーコード/ローコード開発やMLOps、マルチクラウド、リアルタイムデータ処理といったトレンドは、さまざまな業界にとって「IT領域のためのアジャイル手法」から「ビジネスの俊敏性を加速させる能力」に進化するための鍵となる。
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