1種類のファイアウォールだけでは守れない
なぜ複数のファイアウォールが必要なのか
低レベル攻撃、Webベース攻撃、アプリケーションインテグレーショントラフィック攻撃に対し、1つのファイアウォールだけで対抗できないのはなぜか。
ファイアウォールは25年の間、インターネットに接続されたネットワークに欠かせないセキュリティ形態として機能してきた。しかしこの間に攻撃側はプロトコルスタックを上りつめてOSやTCP/IPを抜け、現代の分散型Webアプリケーションを構成するHTTP、HTML、XMLなどの深層プロトコルに狙いを定めている。従って、十分な効果を出すためにはインテリジェントなアプリケーションレイヤーファイアウォールを下位レベルのファイアウォールと組み合わせることが不可欠だ。
31種のアプリを認識してポリシーを適用するアプリケーションレイヤーファイアウォール
アプリケーションとは正確には何か──要するに守らなければならないのは何なのか。ほとんど全てがWebをベースとしている。つまりTCPポートの問題ではない(全てポート80か443だ)。また、1つのWebサイトやページには多くのものが詰め込めることから、URLの問題でもない。FacebookやGoogleのようなプラットフォームには、チャット、動画、メール、ゲーム、スプレッドシート、調査、ファイル転送などのいわゆるアプリケーションが数十、数百と組み込まれている。
従ってアプリケーションインテリジェンスを備えたファイアウォールは、1つのWebプラットフォームの中で別々の機能を認識し、それぞれに応じたポリシーを適用できなければならない。リスクプロファイルの違いなどセキュリティに及ぼす影響がアプリケーションの機能によって異なる場合、ファイアウォールはそれに従って処理する必要がある。
最も複雑で変化の激しいトラフィックは、ユーザーが開始するWebセッションだ。ここでは新種のアプリケーションや脅威がインターネットのどこかで浮上し、一晩で大人気になって脅威を呼び込むこともある。Webベースのアプリケーションはイノベーションを生む土壌であり、企業のIT部門のコントロールが及ばないところにある。一見無害なWebサイトのマイナーチェンジが、新手の攻撃を生み出す格好の温床になることもある。例えば評判の高いニュースサイトに読者のためのチャットルームが加わって、ユーザー作成のもしかしたら危険なコンテンツをサイトに掲載できるようになり、突然危険な場と化したりする。
Web経由で届けられてパートナー、サプライヤー、顧客に取り込まれる企業アプリケーションへの対策も必要だ。この場合、銀行、製造、エネルギー、輸送といったさまざまな垂直産業のエンタープライズリソースプランニング(ERP)、サプライチェーンマネジメント(SCM)、決済・会計専用アプリケーションに接続するためSOAPやRESTなどXMLベースのプロトコルが使われる。XMLベースのプロトコルは無限ともいえる複雑な層を持ち、ビジネスプロセスと直接結び付くところに固有のセキュリティリスクがある。
1種類のファイアウォールだけでは足りない理由
低レベル攻撃、Webベース攻撃、アプリケーションインテグレーショントラフィック攻撃から企業が身を守る必要があるのなら、その全てに対処できるファイアウォールを1つ導入するだけで済ませられないのか。必要な機能を全て1つのボックスにまとめることがなぜできないのか。
簡単に答えると、会社のネットワークを出入りするネットワークトラフィックを1つ残らず開いて調べ、確認するには多大な処理能力を要するからだ。アプリケーションレベルインテリジェンスは継続的にパフォーマンスに支障を来す。トラフィックに深く食い込み過ぎるとファイアウォールのせいで遅延が生じ、需要に追い付く速さでネットワークの流れを処理できなくなる。浅過ぎればファイアウォールが重大な脅威を見逃してしまうかもしれない。
アプリケーションファイアウォールとネットワークセキュリティファイアウォールの組み合わせ
バランスを保つためには、それぞれのレイヤーに専用のファイアウォールを導入すればいい。低レベルネットワークファイアウォールでは幅広いトラフィックをふるいにかけてポートスキャン、サービス妨害(DoS)などの低レベルネットワーク攻撃を検知できる。ユーザーからのトラフィックはアプリケーションレベルファイアウォールを通過させ、現代の複雑なアプリケーションを理解したキメ細かいポリシーを通じて、容認できる範囲の利用とリスクをコントロールできる。アプリケーションゲートウェイ/XMLファイアウォールではパートナー各社との間でやりとりするエンタープライズインテグレーショントラフィックを傍受して、XMLスキーマとコンテンツの検査、署名確認、暗号化と暗号解除を実行できる。
異なる種類のトラフィックにはそれぞれ異なるリスクとパフォーマンス特性がある。セキュリティ専門家はそれぞれのケースについて、パフォーマンスと検査のさじ加減の適切なバランスを保ち、適切なソリューションを選ばなければならない。10Gbpsで社内セグメンテーションを制御するデータセンターのファイアウォールは、インターネットに接続されたユーザートラフィック用のファイアウォールや、暗号化とXMLに最適化されたパートナーDMZファイアウォールとはまったく別物だ。
ファイアウォールはほぼ25年の間ずっと、セキュリティの最前線にあった。しかしそれは「ファイアウォール」という単語が、それぞれ別々の用途に適したさまざまな種類のセキュリティ機器を網羅するようになったからにほかならない。セキュリティを考慮する上で最も大切なのは、適切な種類のファイアウォールを適切な種類のトラフィックに割り当てることだ。
本稿筆者のアンドレアス・M・アントノポウロス氏はNemertes Researchの共同創設者。同社の上級副社長として研究プロジェクト開発と管理、戦略セミナー実施、主要顧客への助言を担当している。データ通信と分散型システムの修士を持つコンピュータ科学者。セキュリティプロフェッショナル認定資格(CISSP)を持ち、エンジニア、プログラマー、コンサルティングの経験を持つ自称「オタク」。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用 -
技術文書・技術解説
[NTTインテグレーション株式会社] 「耐量子計算機暗号」(PQC)に今、取り組むべき理由とは? 実現の道筋も解説 -
製品資料
[株式会社リンプレス] どうしたら非デジタル人材を「自走するDX推進者」に変えられるのか? -
製品資料
[アステリア株式会社] 既存システムをAIレディに変える「連携型モダナイゼーション」の手法とは? -
製品資料
[アステリア株式会社] 「データ連携」徹底解説 要件整理から連携手法、ツール選択まで
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
2
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
3
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
4
Copilot導入で陥る“目的化”の落とし穴 定着の鍵は「作り込まない」こと
-
5
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
6
RAGで「データをAIに送る」運用が限界を迎えている理由
-
7
Microsoft 365移行で露呈した標準機能の限界 地方銀行は上長承認や「脱PPAP」をどう実現?
-
8
AmazonがMetaのAIエージェントの購入を拒否 情シスが問われる「AIの権限設計」
-
9
SAPやOracleが警戒する「ERPの土管化」 汎用AIとの主導権争いが激化
-
10
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
3
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
4
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
5
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
6
SASE選定は「見極め力」で大きな差――本当に必要な製品を選ぶための6つの視点
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
9
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー