巨額資金で機能拡充を急ぐ
AWSより2~3年遅れ、Googleがクラウドサービスで出遅れた理由
自動スケーリング機能の導入でGoogleのIaaSの管理性が向上した。AWSなど先行する競合サービスとの差が少しずつ縮まっているというが……。
米Googleのクラウド戦略では、依然として開発者のサポートに重点が置かれているかもしれないが、同社のインフラサービスに最近追加された自動スケーリング機能は、同サービスで進められている機能ポートフォリオの拡充の最新例だ。このサービスは機能の充実により、いずれは企業のIT部門を引き付ける可能性がある。
この新しい自動スケーリング機能「Compute Engine Autoscaler」は、2014年11月中旬からGoogleのIaaS(Infrastructure as a Service)プラットフォーム「Google Compute Engine」でβ版が提供されている。米Amazon Web Servicesや米MicrosoftがそれぞれのIaaSプラットフォームで提供しているのと同様の機能だ。Autoscalerにより、GoogleのPaaS(Platform as a Service)である「Google App Engine」で既に実現していた自動スケーリングが、Compute Engineで利用できるようになった形だ。
Compute Engineの顧客はこの新機能のおかげで、需要の変動が激しいアプリケーションにおいて、アクセスの急増に対してタイムリーに対応できる他、待機状態の仮想マシンが減ることでコストを節約できると、米調査会社IDCのアナリスト、メラニー・ポージー氏は語る。
「この機能の投入は重要だ。これによってGoogleは、ライバルと同等の機能を持つサービスの実現に向けて前進するからだ」とポージー氏は指摘する。「だが、Googleにとって本命のサービスはPaaSだ。Googleは、顧客にPaaSを入り口として『Google Cloud Platform』を使ってもらいたいと考えている。IaaSの土俵でも勝負しなければならないが、IaaS単体での競争は、Googleにとってあまり魅力的なことではないだろう」
Googleの顧客はこれまで、インフラの自動スケーリングを実現するためにApp Engineのスケーリング機能を使っていたが、この機能は動作が重く、インフラに適用される際に機能的な問題を引き起こしていたと、ポージー氏は説明する。App Engineのスケーリング機能は、5年前にWebアプリケーションに合わせて開発されたという。Webアプリケーションは固有のワークロードおよびロードプロファイルを持っている。
自動スケーリング機能は、Amazonの「Amazon Web Services」(AWS)では2009年に導入され、Microsoftの「Microsoft Azure」では2011年に導入された。
Google Compute Engineの仮想マシンでは、同社の他サービスとは異なるアーキテクチャが採用されているが、より普及しているApp Engineや「Cloud Storage」を含む他サービスは、スケーリングに優れていると、米調査会社451 Researchのアナリスト、カール・ブルックス氏は語る。
「既に人々が使っている多くのGoogleサービスが、この新機能を必要としないのは興味深い」(ブルックス氏)
大手IaaSへのキャッチアップ
IaaSへのGoogleの本気度を疑問視する向きもあるが、自動スケーリングや専用ネットワーキング機能を含む11月に発表された幾つかのツールは、こうした懸念の一部を和らげた。だが、Googleにはまだまだやるべきことがあると、アナリストは指摘する。
「Googleがここにきてこうしたツールをリリースしたのは、かなり基本的なIaaSツールへのニーズを読み誤っていたか、あるいは、それらを適切に実装するのに相当苦戦していたということだ」と、米IT調査会社Neoviseのポール・バーンズ社長は語る。Googleは2013年にようやくCompute Engineをリリースしたことで、少しは市場で認められるようになったが、さらにサービス強化を推進していかなければならないと、同氏は付け加える。
「Googleが後れを取り続け、新機能のリリースをスピードアップしなければ、大変な状況に陥るだろう」(バーンズ氏)
Googleは差を詰めているが、Amazonよりも少なくとも2~3年遅れていると、451 Researchのブルックス氏は語る。Googleはまだディレクトリサービス、相互運用性、アイデンティティーおよびアクセス管理、マネージドセキュリティサービスを追加する必要があるという。
しかし、ある意味では、両社を比較するのは不公平だと、ブルックス氏は語る。Google Cloud Platformはさまざまなユーザー層をターゲットにしており、(AWSで定評がある)ビルディングブロックインフラツール以外のサービスのためにかなり高度なITタスクも提供しているからだ。しかし、1年後にはこの状況も変わっているかもしれない。Googleは広範なリーチと莫大な資金力を生かし、IaaS市場で先行する大手に真っ向から対抗しようとしているからだ。
「時間とお金をつぎ込めば、Googleは強力な競争者になれる可能性がある。そうなれるだけの実力がある企業は数社しかない。だが現時点では、まだGoogleはライバルに太刀打ちできない」(ブルックス氏)
また、一部のアナリストは、GoogleのAutoscalerはAmazonやMicrosoftの自動スケーリング機能に匹敵するとしているが、IDCのポージー氏はこう指摘する。「GoogleはAutoscalerを、『他社の競合する機能よりもきめ細かな対応ができる』と売り込むかもしれない。この機能では、検索やGmailなど、Googleが最も成功しているサービスの一部を支える技術が利用されているからだ」
「Autoscalerはデータ点を追加していくやり方で、『アプリケーションがリクエストに応じて、自動スケーリングをどれだけの規模と早さで行わなければならないか』を判断するようになっている可能性がある。そうだとすると、Googleは、『他のプロバイダーの自動スケーリング機能は、単純な力技に頼りがち』とあげつらうかもしれない」(ポージー氏)
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