データ志向への転換に必要なこと(前編)
ビッグデータプロジェクト、失敗の理由は大抵“人”
企業でビッグデータ活用を成功させるには、データ志向の文化を育む必要がある。その1つの鍵となるのが企業文化である。実際に、どのようにすれば良いのだろうか。
Nationwide InsuranceでITアーキテクチャ部門のアソシエイトバイスプレジデントを務めるタラ・パイダー氏は、ビッグデータプロジェクトの成功を目指すデータ専門家に忠告する。ビッグデータプロジェクトが失敗する最大の原因の1つは、テクノロジーでも、データの品質でもない。それは人にある。
パイダー氏は、自社をその典型的な例として引き合いに出している。Nationwide Insuranceの保険代理店は、業務の一環として保険料値上げのタイミングで顧客離れが生じないように対策を講じている。その対策とは、あと30日で料金の変更が見込まれる保険の一覧をチェックして、該当する得意先の顧客に電話し、変更内容を説明するというものだ。だが、新しい顧客データ分析プログラムのデータから、このような顧客対応が逆効果になる場合があることが明らかになった。電話することで、保険料が値上がる顧客をつなぎとめるどころか、顧客離れを引き起こしていたというのだ。
パイダー氏は、ラスベガスで開催された「Gartner Business Intelligence & Analytics Summit」で次のように述べている。「20年間信じて行動してきたこととデータの示す事実が違うという状況は、代理店にとって受け入れにくいものだった」
そこで、パイダー氏のチームは、「電話で連絡するのが有効な顧客」のみに代理店が保険料値上げの通知についてコンタクトできるよう、より詳細な顧客の一覧を作り始めた
この話は、最高情報責任者(CIO)という地位が誕生したときからいわれている。例えば、ERP統合プロジェクトが失敗する原因の多くは、人の問題であって、テクノロジーの問題ではない。ビッグデータもERP統合プロジェクトと変わらないように見える。だが、企業インフラストラクチャから組織図まで、あらゆるものに影響を与える分、ビッグデータの方がERP統合プロジェクトよりも影響力は大きい。専門家は、データの示す事実を恐れず、歓迎できるようになるために、データ志向の文化を育むよう企業にアドバイスする。ただし、これは口で言うほど簡単ではない。
パイダー氏が指摘するように、企業文化といったものの始まりは、経営陣の着想によるかもしれない。だが、経営陣だけでなく、現場の従業員の賛同も得なければならない。これが、データ志向の文化を育む、さらなる障害を生む可能性がある。「『今まで20年、30年とこのようにやってきた。最適な方法は分かっている』という思い込みを克服するのは非常に困難だった。これは当社にとって最大の課題だった」(パイダー氏)
データを使用することを表す
このように考えるのは、パイダー氏だけではない。PricewaterhouseCoopersの調査では、企業のデータ利用や情報化時代における成功を阻害する3つの障害物の1つとして「企業文化」が挙げられている。この調査は、Iron Mountainと合同で実施されたもので、「データをほとんどあるいは全く活用していない企業」が全体の75%を占めていることが明らかになった。
だが、どうしたらデータ志向の文化への転換を図れるのだろうか。Gartnerは、データを使って活動の計画や意思決定、論争の解決などをする文化を「データ志向の文化」と定義している。Nationwide Insuranceにおける転換の1歩は、パイダー氏の報告先となる最高データ責任者(CDO)の任命だった。
「企業にCDOがいることは、意思決定にデータを利用したいことの表れになる。これだけが文化を変える方法だとは思わない。だが、適切な行動を引き出すには、ビジネス部門とIT部門の両方でデータに関するメッセージを伝える担当者を置く必要がある」とパイダー氏は語る。
後編では、データ志向の文化への転換ポイントと築く具体的な方法について紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[アルプス システム インテグレーション株式会社] 中小企業でも安心して活用できる「手ごろなSOCサービス」とは? -
製品資料
[株式会社シーイーシー] 脱VMwareに成功した企業は何をどう実践した? 事例に学ぶ戦略立案&実装のコツ -
製品資料
[株式会社オービックビジネスコンサルタント] ランサムウェア攻撃を“二重の防御構造”で防ぐ、クラウド型基幹システムの実力 -
製品資料
[株式会社オービックビジネスコンサルタント] 動画で知るランサムウェア被害企業のリアル、会計データが無事だった理由とは -
市場調査・トレンド
[セコムトラストシステムズ株式会社] EDR導入を成功に導くロードマップ:選定/稟議/運用のつまずきを防ぐコツ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
4
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「Excel管理」では限界――製造現場の改善が進まない“隠れた原因”
-
7
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
8
生データを隠してデータ連携 KDDIが4000万人の顧客情報を安全に分析できた理由
-
9
日本HP×大塚商会が明かす「AI時代のPC選定の落とし穴」とは
-
10
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー