検索とモバイルでライバルを追撃開始
Bing、Kinect……血まみれになってITパワーを維持するMicrosoft
業界におけるMicrosoftの影響力は落ちたのだろうか。その答えは、同社がモバイルからゲームコンソールまで、あらゆる分野に参入しなければならない事情に隠されているのかもしれない。
少なくとも1年に一度は、財務アナリストの誰かが米Microsoftの長期的影響力について疑問を投げ掛ける。イノベーターとしてではなく、市場のパイオニアの失敗から学ぶ俊足の追随者として有名なのがMicrosoftだ。
この影響力という問題は、2010年10月を境に一層重要性を増した。Microsoftが「Windows Phone 7」および「Kinect for Xbox 360」技術によってコンシューマーの心をつかむことを目指した大々的なキャンペーンを開始したからだ。その一方では、数千社のMicrosoftソリューションプロバイダーが、厳格な新Microsoftパートナープログラムの下で認定ゴールドパートナーという名誉ある地位を継続すべきかどうか迷っている。
一部の中小パートナーによると、この資格のマーケティング価値は新たなトレーニングと認定費用に見合うほどではないという。しかし米ITソリューションプロバイダー、Baroan Technologies社長のガイ・バロン氏にとっては、十分な価値があるようだ。Baroan Technologiesは2年前にゴールドパートナーという地位を放棄したことがあるが、現在はこの資格を更新する考えだ。バロン氏は、Microsoftは技術革新をリードする企業ではないという認識を抱きながらも、「同社はしっかりとした製品を作るのに必要なリソースを持っており、特定の市場で客寄せ的な立場を取る必要がある」と指摘する。確かに、年商625億ドルのソフトウェア企業を無視するわけにはいかないだろう。
「Microsoftが影響力を失うなどと考えている人はどうかしている」とバロン氏は話す。「Microsoftはあらゆる分野に首を突っ込む必要があるのだ。業界で何が起きているのかを知る必要があるからだ。彼らは新たな分野にかかわることによって、実際に存在する機会および影響力を発揮する方法に関する十分な知識を獲得するのだ。かかわらなければ、何も知ることができない」
Microsoft、検索とモバイル分野で進撃開始
2010年におけるMicrosoftの攻勢は数字が物語っている。大きな期待を受けて登場したWindows 7から見てみよう。米Forrester Researchの調査によると、同OSは現在、北米および欧州の商用デスクトップの約10%で使用されているにすぎない。しかし採用に向けた動きは力強く、90%近くの企業が18カ月以内にアップグレードを予定している。これは、2011年にはWindows 7の普及が一気に進むことを意味する。つまり、Windows 7は少なくとも、4年近く前の精彩を欠いたWindows Vistaリリースの記憶を薄めることになりそうだ。
Microsoftは2010年9月、検索エンジンで1つの勝利を手にした。米Yahoo!を抜いて米国で第2位の検索エンジンになったのだ。米調査会社Nielsenによると、Microsoftのシェアは前年同期比で3割増の13.9%となった。とはいえ、Google検索はまだ65.1%もの市場シェアを確保している。この勢力地図は、次の月次集計から変化することになりそうだ。9月末からYahoo!が自社の検索サービスでMicrosoft Bingを採用する一方で、「Google Instant」機能の提供が始まったからだ。
コンシューマー市場に目を向ければ、MicrosoftのKinect for Xbox 360は2010年11月初めの発売から10日間で販売台数が100万台を突破した。同社では年末までに500万台の販売を見込んでいる。アナリストらは、11月に市場に投入されたWindows Phone 7でMicrosoftが同じマイルストーンに到達するのにどれくらい時間がかかるかという点に注目している。だが、当初の予測はあまり芳しいものではない。
米VAR(付加価値リセラー)のJenaly Technology Groupで社長兼CTO(最高技術責任者)を務めるM・J・ショアー氏によると、Windows Mobileの各バージョンが不満足なものだったという苦い記憶があるため、Windows Phone 7を企業に売り込むのは容易ではないという。「iPhoneは人々に衝撃を与えた。これに対してGoogleは最初に、しかも効果的に反応した」とショアー氏は語る。「Microsoftが反応したのは3番目だ。これではチャンスを逃したと思われても仕方がない」
しかしソリューションプロバイダーらによると、Microsoftはモバイル市場にとどまる必要があるという。なぜなら、この市場で存在感を示すことは、Microsoftにとって最も重要な次の分野であるクラウドコンピューティング環境に移行する上で欠かせないからだ。「Microsoftが次世代のビジネスユーザーの間で自社ブランドを確立することが重要だ」と彼らは話す。
手負いの稼ぎ頭、Office
「Microsoftは非常に深刻な問題を抱えている」と話すのは、米ITソリューションプロバイダー、Connections for Business社長のデビッド・ベネット氏だ。「同社の最大の収入源はMicrosoft Officeだ。この分野で対抗するGoogleなどのライバルは、まだそれほど有力な存在ではないが、ユーザーの意識に着実に浸透しつつある。Microsoftはとても心配している」
ソリューションプロバイダーの間には、MicrosoftはAzure開発プラットフォームを利用することによってオンプレミス型、IaaS(Infrastructure as a Service)、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)などすべてのデリバリーオプションを提供することができ、それが同社の最大の強みだとする見方もある。
「Microsoftの力を疑問視するのは、IBMに影響力があるのかと尋ねるようなものだ。クラウドによってMicrosoft Officeビジネスが消滅するとは思わない」とショアー氏は語る。しかし、クラウドに関するMicrosoftのメッセージが時として分かりにくいことは同氏も認めている。
米ネットワークインテグレーター、INXの先進的コラボレーションソリューション部門の副社長であるデレク・ダウンズ氏によると、Microsoftがクラウドサービスに移行するに当たっては、Xboxのオンラインゲームサービスの経験が役立つ可能性があるという。ただし、そこで得たノウハウをうまく活用すれば、という条件付きだ。
「Microsoftが今後活用できる強力な戦略的兵器はほかにもある」とダウンズ氏は話す。それはSharePoint Serverだ。同製品は多くの大手・中堅企業でドキュメントリポジトリとして定着しているからだ。「このため、Microsoftはクラウドに移行しても非常に大きな影響力を発揮するだろう」(同氏)
米マネージドサービスプロバイダー、Alvaka Networks CEOのオーリ・ソーダーソン氏によると、Microsoftが持っているもう1つの重要な武器は、その巨大なパートナーチャンネルだという。「精神面でも金銭面でもMicrosoftに依存しているVARとソリューションプロバイダーは多い。確かにGoogleなども営利を目的としない熱狂的なプロシューマー(先行ユーザー)を抱えているが、Microsoftの巨大な支援軍団は無視できない。逆に言えば、もし同社のパートナーチャンネルが裏切られた、あるいはないがしろにされたと感じるようなことがあれば、Microsoft信奉ユーザーが同社から離れるという事態になったとき、Microsoftは冷酷な現実を目の当たりにすることになる」とソーダーソン氏は語る。
Microsoftのパートナーが新たな認定更新プロセスでゴールド認定を申請するのかどうか注視しなければならない、もう1つの理由がそこにある。
本稿筆者のヘザー・クランシー氏はビジネスジャーナリストとして20年以上のキャリアを有し、受賞経験もある。「Entrepreneur」「Fortune Small Business」「International Herald Tribune」「The New York Times」などに寄稿している。ハイテク流通業界のニュースとトレンドを専門に扱うB2B業界紙「Computer Reseller News」の編集者を務めたこともある。ニューヨーク在住。
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