Cisco対Apple
ポストiPadになれるか? タブレット市場に切り込むCisco
米Cisco Systemsのタブレット製品「Cisco Cius」はiPadの牙城に切り込むことはできるのか? Appleとの関係も見ながら検証する。
米Cisco Systemsはことあるごとに、提供を予定している同社のタブレット製品「Cisco Cius」と、同タブレットがいかに緊密にIPテレフォニー、プレゼンス、および同社の仮想化戦略「Virtualization Experience Infrastructure」(VXI)の仮想デスクトップと統合されているかを宣伝している。同社の壮大なエンタープライズタブレット構想がうまくいくかどうかは分からないが、確かなのは米AppleのiPadとの衝突が避けられないことだ。
しかし、Ciscoには、Cius対iPadの戦いで勝利できるだけのエンジニアリング力やアプリケーションがあるのだろうか? そうであれば、現在双方にメリットがある協力関係を両社は維持できるのだろうか?
CiscoとApple、敵か味方か?
両社が現在、友好的(かつ利益に結び付く)関係であることを示す証拠は十分にある。まず、iPadとiPhoneのプラットフォームiOSでCisco AnyConnect SSLクライアントが利用できることは軽視できない。多くのユーザーはこのおかげで、既存のVPNリモートアクセスソリューションを使用してiPadやiPhoneから社内リソースに簡単にアクセスできている。さらに無視できないのは、CiscoがMac OS Xをクライアントとしてサポートしている点だ。Ciscoのエンジニアの80%は、Mac OS X搭載のコンピュータを使用している。Ciscoにとってこれらは、iPadと直接競合するAndroidベースのCiusを投入するからといって、みすみす手放せるものではない。
Cius対iPad戦の問題はエンジニアリング?
Appleとの関係を危険にさらす以外にも、企業でのタブレット採用に向けて、Ciscoは厳しい課題に直面している。まず、何といってもエンジニアリングだ。Ciscoには独自のハードウェアとソフトウェアを開発してきた実績があるが、Ciusに使用されているのは既存の電子部品とAndroid OSだ。つまり、Appleが完全に統合されたハードウェアおよびソフトウェア製品の開発を積極的に進める一方で、Ciscoはノーティフィケーション、QoS、Wi-Fiなどの機能の追加をGoogleに頼ることになる。
CiscoがAppleのような開発者エコシステムを築くには?
AppleとCiscoでは、開発者に対する取り組みの度合いに雲泥の差がある。iPad 2のリリース時にAppleのスティーブ・ジョブズCEOは、iPadには35万本のアプリケーションがあり、20億ドルが開発者の懐に入っていることを明らかにした。Ciscoは早急に、Cisco Unified Communications戦略に関わっている企業開発者のCiusへの取り込みを図るだろう。そうした開発者は、カスタムAPIを使用してビジネスアプリケーションを開発できる。とはいっても、Appleがアプリケーションの価格を非常に低く設定していることを考えると、勝ち目はないかもしれない。Appleの同等アプリが2ドルで買えるのに、ライセンスが1シート20ドルや30ドルのCiscoのコミュニケーションアプリケーションを購入するIT管理者はいるだろうか。
最後の砦はビデオ会議?
間違いなく、Ciscoはテレプレゼンス会議ソリューションとノルウェーのビデオ会議システム企業TANDBERGの買収で名をはせている。だが、Appleもビデオ会議技術FaceTimeの開発を急速に進めている。FaceTimeはCisco+TANDBERGのビデオ会議システムのような「企業向けソリューション」ではないかもしれないが、その方向に進む可能性はある。FaceTimeは多くの端末にインストールされているし、Macでも稼働する。
CiscoとAppleのマーケティングメッセージと価格設定の違い
やはり、ユーザーが欲しがるのはiPadだ。Android端末を提供する場合は、ユーザーの支持を得るまでかなり苦労する可能性がある。カナダのResearch In Motion(RIM)製BlackBerryやフィンランドのNokiaのスマートフォンに心を躍らせるユーザーはほとんどいないが、Appleは完成度の高いユーザー体験の創出に注力することでユーザーを魅了し、Appleのテクノロジーにくぎ付けにしている。これと同じことをCiscoがすぐに実現するとは想像しにくい。
さらに価格の問題がある。Ciusは1台1200ドル程度になるとうわさされている。一方、iPad 2は現在499ドルからで、Appleではさらに価格を抑えられるように、サプライチェーンの管理に力を入れている。
Ciscoは、Appleとの関係を協調的競争関係に変えるという重荷を背負いながら、苦しい戦いの道を進まねばならない。
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