BIのモバイル対応は単なるトレンドか?【前編】
BIのiPad/Android対応がユーザーに与えるメリット
2011年5月から7月にかけて、複数のベンダーがBI製品のスマートデバイス対応に関する発表を行った。前編ではBI専業ベンダー2社の発表を基に、そのメリットをひも解く。
2011年5月から7月にかけて、4社のビジネスインテリジェンス(BI)ベンダーがメディア関係者を集めたカンファレンスや発表会を開催し、BI製品のスマートデバイス対応を語った。発表が相次ぐ状況を見ると、BI製品のスマートデバイス対応は1つのトレンドとなっているようだ。そこで本稿では2回に分けて、マイクロストラテジー・ジャパン、クリックテック・ジャパン、SAPジャパン、日本オラクルの発表会の内容から、BI製品のスマートデバイス対応がユーザーにもたらすメリットを探りたい。
BIと他アプリの連携で「何も持たない世界」を
マイクロストラテジー・ジャパンは2011年5月16日、同社のBI戦略についてのプレスカンファレンスを実施した。米MicroStrategyは同社BIスイート製品の最新バージョン「MicroStrategy 9.2」の一般提供開始を2011年4月に発表。スマートデバイス対応に関してはそれまでBlackBerryのみ対応だった「MicroStrategy Mobile」を、2010年6月にはiPhone/iPadに対応させる(2011年度中にはAndroidにも対応する計画)など、他社に先駆けてスマートデバイス対応を図っている(参照:BIの基本をきっちり提供、最新モバイルにも対応する「MicroStrategy 9」)。
プレスカンファレンスで登壇した米MicroStrategy 取締役副会長 COO(最高執行責任者)のサンジュ・バンサル氏は、モバイルインターネットを、メインフレーム、ミニコンピュータ、PC、デスクトップインターネットに次ぐ「情報テクノロジーの5つ目の波」と表現する。「モバイルはこれまでで最大のインターネットユーザー数の増加をもたらすだろう。近い将来、われわれは服を着てモバイル端末を持つだけで、他には何も持たずに生活する時代が来る。モバイルはこれまで別々に必要だったソフトウェアを統合し、常時携帯するものや紙などを全てラップ(吸収)する」(サンジュ氏)
具体的に、MicroStrategy Mobileは以下、3つの機能を提供する
- BI機能:データをさまざまな形で利用/分析できる環境
- トランザクション機能:データベースの書き込みや既存情報の更新といったトランザクションをモバイル上で実行
- コンテンツ配信機能:動画・音声・PDFなどマルチメディアの配信環境
注目すべきは2で挙げた「トランザクション機能」だ。専用の入力画面とデータベースやWebサービスとの接続環境を用意することで、ERPで行っている各種申請・精算処理やCRMで行うクーポン発行、カスタマーサポート情報などの入力やアップデートを、モバイル上で行うことができる。「発注状況の分析、編集、発注量や価格の更新などをモバイルで行うことができる。ユーザーが分析したい角度を自由に選べるコンポーネントを用意しているだけでなく、その画面設計をIT部門に頼む必要はない。ユーザーの手元にあるデータ、アクセスできるデータを基に、エンドユーザー自身が情報を視覚化できる」(サンジュ氏)
また、同カンファレンスでは、全てのMicroStrategy BIプラットフォームをクラウドサービスで提供することを発表しており、まずは2011年7月~9月に北米およびヨーロッパで提供を開始する予定だという。一方で同社は2011年5月にFacebookアプリの「Wisdom.com」の提供を開始している。これは無料で利用できるFacebook分析アプリケーションであり、「世界最大級のデータベースの1つを利用して個人のコンテンツをソートしたり分析したりすることが可能だ」(サンジュ氏)。同社は「モバイル」「クラウド」「ソーシャルメディア」の3つを今後の注力分野に掲げており、モバイルに関しては既に150を超えるプロダクトに着手しているという。同社BI製品をコアにしながらこれらをどう融合させていくのか、今後も注目していきたい。
Webブラウザで実現する「現場で決める」分析
クリックテック・ジャパンは2011年6月14日に開催した記者説明会で、モバイル端末向けBIプラットフォーム「QlikView on Mobile」を発表した。他社との差別化ポイントとして同社が挙げるのは、BI製品「QlikView」と全く同じインタフェースを、スマートデバイスのWebブラウザで利用できる点だ。専用アプリケーションをインストールすることなくサーバアーキテクチャを活用することで、異なる種類の端末を混在利用する場合などでも一元管理ができるとともに、端末にデータを残さない安全性を強調している。また価格面では別途専用のユーザーライセンスを購入する必要はなく、単一のユーザーライセンスでPC、モバイル端末共に利用が可能だ。
クリックテック・ジャパン 代表取締役社長 垣田正昭氏は、「QlikView on Mobileの使い勝手は、デスクトップPCやノートPCと同様。QlikViewはデバイスにとらわれないツールであり、ユーザーはデスクトップPCで分析を開始して突然外出することになっても、iPadで同じ作業を継承できるため、思考を継続し、集中力を維持できる」という。
QlikViewは昨今のBI製品で注目を集めているインメモリデータベース技術を採用した先駆け的な製品だ(参考:独自の連想技術でインメモリ処理を実現する超高速BI「QlikView」)。その高速性と直感的なUIに代表される同社製品の機能や使い勝手は高く評価されており、ガートナーのマジック・クアドラントではBIプラットフォーム分野のリーダーに位置付けられている。国内では2009年3月に正式販売を開始し、わずか2年強の間に180社以上で導入されているという。
QlikViewはハードウェアの性能進化と独自の連想技術による分析高速性を生かし、ERPやCRM、データウェアハウス(DWH)から各種明細データを収集して瞬時に計算が可能だ。そのため、BIツール専用のデータ構造を設計する必要がなく、ユーザーは明細データに直接アクセスして分析できる点が大きな特徴だ。「データとルートが制限されては真のリアルタイム分析は実現できない。明細データを画面操作するその瞬間に集計でき、どういう視点でデータを見るかをユーザーが『現場で決められる』ことが重要だ」(垣田氏)
また、垣田氏はWebブラウザでの提供理由を「ドリルダウンの機能などは実は専用アプリを作った方がベンダーとしては楽。それをしないのは同じ操作性をどこででも体感してほしいから」と話す。「ユーザーがiPadやAndroid端末でサーバにアクセスして自分で非定型リポートを作成できる。BIの最終ポイントはユーザーの切り口だ。思考を邪魔しない操作性と高速性がきっとユーザーの力になる」(垣田氏)。なお、QlikViewは同社のデモサイトで実際に触ることができる。
以上、前編ではBI専業ベンダー2社のモバイル対応を紹介した。専用アプリとWebブラウザという提供形態や各種テクノロジーで差別化を図っているが、「いつでも、どこでも、最新のデータをユーザーの切り口で分析できる環境を用意する」という意味では両社共似たアプローチといえるかもしれない。経営スピードが一層速まる現在、BIには分析データと分析結果のリアルタイム性が求められている。その点でBI製品のスマートデバイス対応は当然のトレンドといえるだろう。
後編ではSAPジャパンと日本オラクルの発表を基に、包括的にアプリケーションを提供する巨大ベンダーが目指すモバイルインテリジェンスの姿、それがユーザーにもたらすメリットをまとめる。
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