BIのROIは高められるか
BIを全社利用するために「セルフサービスBI」に足りないもの
特定部門にしか使われなかったBIツールの全社利用を促進するために、BIベンダーは「セルフサービスBI」を主張している。しかし真の全社利用を実現するにはまだ幾つかの課題がある。
2009年に米調査会社のGartnerが開催したビジネスインテリジェンス(BI)に関するカンファレンスで、幅広いユーザーが情報を探索し、独自のダッシュボードやリポートを作成できる新タイプのデータ発見ツールが話題を呼んだ。今では「セルフサービスBI」と呼ばれることが多いこのアプローチは、BIの投資対効果(ROI)を最大限に高める鍵になる可能性がある。しかし、その実現のためには、専門家によるおぜん立てが不可欠だ。
カナダのRBC Capital Markets傘下の投資会社であるRBC Wealth Management USAの例を見てみよう。従業員数6000人の同社では、米Tableau SoftwareのWebベースのデータアナリティクスツール「Tableau Server」を導入して以来、BI担当者チームに依頼する従業員が40人から450人に増えている。Tableau Serverは、BIツールの専門家でなくても、また、複雑なデータクエリを覚えなくても利用できる。従業員が欲しいデータを要求すると、Webリンクが提供され、そこにアクセスしてカスタムリポートを作成したり、データを操作して、ドリルダウン機能を持つ独自のチャートやダッシュボードを作成したりできる仕組みだ。
このセルフサービスBIツールは利用が目覚ましく進んでいると、RBC Wealth Managementのコーポレートインテリジェンス担当副社長、ショーン・スポット氏は語った。しかし、それは専門家によるガイダンスや膨大なバックエンド作業のおかげだ。「スタッフ全員のデスクトップにBIツールを配布して、彼らが自力でマスターしてデータを探せるようになると期待するわけにはいかない」
スポット氏に直属する2人の担当者から成るBIチームは、RBC Wealth ManagementでBIが継続的に利用されるように、従業員が個々のビジネスラインや全社の業績測定に使う1.25Tバイトのデータ全体にわたってユーザーをガイドする。また、ユーザーが目にするのはWebリンクだけかもしれないが、スポット氏のチームは、メインフレーム、米MicrosoftのMicrosoft SQL Server、米Teradataのデータウェアハウス(DWH)、米SAS InstituteのSAS Enterprise BI Serverからの8年分のバックエンドデータを統合している。
スポット氏は、セルフサービスBIプログラムを段階的に導入した。最初は、RBC Wealth Managementの資産運用コンサルティング部門における導入に重点を置いた。同部門のコンサルタントはBIに幻滅していた。同社の既存ツールでは、依頼に対して満足のいく対応が得られたためしがなかったからだ。コンサルタントは、同部門内外の営業チームと協力関係にある2200人のブローカー(仲介業者)の中で、誰が同社に大きな収益をもたらしているのかを特定したいと考えていた。
「コンサルタントは、トップクラスの収益をもたらしているブローカーは、例えば、ブローカーA、B、Cだと知っているが、ブローカーDも極めて有力な取引相手であることを示す定量的な指標を持っていなかった。支社で取引があるこうしたブローカーの実績を総合的に評価することは、コンサルタントにとって切実な課題となっていた。彼らにはできていなかったが、そうした評価が要求されていた」(スポット氏)
資産運用コンサルティング部門はセルフサービスBIツールを使って、パフォーマンスの高いブローカーを特定してビジネスの強化につなげることに成功し、このことは他の部門にも知られるようになった。間もなく、人事やコンプライアンスといった部門からスポット氏のBIチームに、セルフサービスBIツールを使いたいという要望があった。「コンプライアンス部門から話が来たのはびっくりした。彼らはかなり自己完結型の組織だからだ」とスポット氏は語った。
セルフサービスBIと従来のBI
活用に成功すれば、セルフサービスBIツールは、ユーザーが従来のBIツールで感じる最大の不満の1つを解消できる。それは、リポートやダッシュボードの提供を依頼してから(あるいは、既存リポートへの単純な変更を依頼した場合でも)、ITチームやBIチームが対応するまでに時間がかかるという不満だ。
「企業のIT部門でBI分野の人材が不足しているだけでなく、ユーザーがデータを使ってやりたいことが増え、広がっていることが背景にある」と、米Forrester Researchのシニアアナリスト、ジェームズ・コビーラス氏は説明した。同氏の顧客の間では、セルフサービスBIは、「BI市場で一番ホットなセグメント」だという。「セルフサービスBIでは、ユーザーは独自のツールにより、データをソースアプリケーションから直接引き出したり、IT部門がユーザーのために用意した中間データベースから引き出したりできる」
リポートやダッシュボードの作成プロセスにIT部門が関与しなければ、このBIプロセスのアジリティが向上し、企業は洞察を迅速に行動に取り入れることができるとコビーラス氏は語った。
セルフサービスBIでは、ユーザーはリポートやダッシュボードを自分で作成できるだけでなく、利用できるデータ分析方法も広がるとコビーラス氏は説明した。多くのユーザーは、Excelスプレッドシートで可視化、リポーティング、モデリングにある程度接している。しかし、予測分析ツールや統計モデリングを手軽に利用できる環境にはない。「こうしたセルフサービスBIツールは、予測モデリング機能や統計モデリング機能を、セルフサービス型で非常にユーザーフレンドリーなドラッグ&ドロップユーザーインタフェースに統合している」(コビーラス氏)
もちろん、スポット氏のアプローチが示しているように、IT部門も舞台裏で大いに奮闘している。例えば、データを統合し、テンプレートを開発し、セルフサービスBIツールで提供されるウィザードドリブンのドラッグ&ドロップインタフェースの使い方を従業員に案内するなどしている。
スポット氏にとって、セルフサービスBIで肝心なのは、GUIではなく(同氏は、市場で提供されているどのツールも、GUIはほとんど同じだと考えている)、メタデータをいかにうまく扱ってさまざまなデータソースに接続できるかだ。同氏の見方では、IT部門がデータツールを選択する際には、それが最大の問題になる。「私が探していたのは、バックエンドでマルチプラットフォームのさまざまなデータソースに動的に接続できるツールだった」と同氏。「データツールは大抵の場合、同時にさまざまなデータソースに接続し、取得したデータを結合できることが要求される」
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