クラウドERP製品カタログ【第10回】PCA
利用1000社突破、「PCA for SaaS」が他サービスと違う点は?
早くからクラウドERPに取り組んできたPCA。こだわってきたのはオンプレミス版の使い勝手の良さを犠牲にしないことだった。利用1000社を突破した「PCA for SaaS」を紹介する。
多くのベンダーが激しいシェア獲得競争を繰り広げてきた中堅・中小企業向け業務パッケージ市場で、早くからパッケージ製品の開発に取り組み、高いシェアを保ってきたベンダーがピー・シー・エー(以下、PCA)だ。同社の主力パッケージ製品「PCA会計」「PCA給与」「PCA商魂」「PCA商管」は、主に従業員100人以下の中小企業の基幹業務に最適化した製品として、多くのユーザーを獲得してきた。また同社は、特定の業界や特殊法人の業務に特化した業務パッケージ製品も多く提供しており、特に公益法人向けの会計パッケージ「PCA公益法人会計」はベストセラー製品として知られる。
同社のもう1つの主力製品が、中堅規模企業での利用を想定した統合ERPパッケージ製品「PCA Dream21」だ。既に800社以上のユーザーを獲得しており、その機能の豊富さもさることながら、全ての業務モジュールを単一のマスターデータベースを中心に配置した完全統合アーキテクチャを特徴とする(参考記事:販売管理を起点に社内全体の業務効率化を実現する「PCA Dream21」)。
これらパッケージ製品の間接販売を中心にこれまで業務を展開してきたPCAだが、2008年に新たな事業を開始した。それが、SaaSで提供する「PCA for SaaS」だ。これは、冒頭で紹介したPCA会計、PCA給与、PCA商魂、PCA商管をデータセンターの仮想サーバ環境上で運用し、その機能をインターネット経由でユーザーに提供するサービスだ。
このPCA for SaaSで、業務パッケージベンダーとしていち早くクラウドビジネスに参入した同社だったが、PCA 営業本部 戦略企画部 プロダクト企画グループ 課長 篠崎洋介氏によれば、サービス開始当初は思うようにユーザー数が伸びなかったという。
「2008年当時は、クラウドやSaaSがまだユーザーの間で認知されておらず、またわれわれのサービス提供形態もライセンス買い取りと毎月のサーバ利用料の組み合わせだったため、思うようにユーザーは増えなかった。しかし、2010年ごろ、SaaSの認知度が上がるにつれ、料金プランに月額課金方式を加えたこともあって、一気にユーザーが増え始めた」
また、同社 DSS事業部 パートナー支援課 東日本エリア担当 課長 伊藤 真一郎氏は、「東日本大震災の影響も少なくなかった」と振り返る。
「社内にPCが1台しかないような小規模な企業でも、震災以降は重要なデータの保全に気を使うようになった。時を同じくして、クラウドコンピューティングの認知度も上がってきたため、災害対策やBCPの観点からPCA for SaaSに興味を持ってもらえる機会が増えた」(参考記事:ユーザー企業調査が伝える「大震災後のIT投資動向」)
しかし、中小企業におけるSaaSへの最大のニーズは、やはり「自社内にサーバを置きたくないことに尽きる」と篠崎氏は指摘する。
「従業員数100人以下の企業は情報システム部門を置いていないケースも多く、経理や総務、販売管理の担当者が兼務でサーバの管理をしている。あるいは、販売代理店がサポートを提供しているケースもある。こうしたことから、サーバを自社内に設置しなくても済むというSaaSのメリットに高い関心を持つ中小企業は多い」(クラウドERPの事例記事:サントリー、ロイター、ピーチがクラウドERPを選んだ理由)
こうした事情を背景に、PCA for SaaSのユーザー数はここ数年で急速な伸びを見せている。同サービスの導入実績数は、本稿執筆時点(2012年8月)で既に1000社を超えているという。
オンプレミス製品の機能をそのままSaaSとして提供
PCA for SaaSは、オンプレミスのパッケージ製品と同じ機能をユーザーに提供する。クラウド専用サービスというよりは、従来のパッケージ製品がそっくりそのままSaaS化されたというイメージだ。現時点でSaaSとして提供されているのは、前述した主力4製品に加えて、「PCA公益法人会計」「PCA建設業会計」「PCA社会福祉法人会計」「PCA医療法人会計」の計8製品だ。
課金体系は、「ソフト利用ライセンス」と「サーバ利用ライセンス」の合計額を月単位で支払うプランと、ソフトウェアライセンスを一括購入した上で毎月のサーバ利用ライセンスを支払うプランとに分かれる。前者のプランで1製品を使う場合、ソフト利用ライセンスが2ユーザーで月額3675円、サーバ利用ライセンスが1万9950円からとなっている。
| 製品名 | ユーザー | ソフト利用ライセンスA | ソフト利用ライセンスB | ソフト利用ライセンスC |
|---|---|---|---|---|
| PCA会計 PCA給与 PCA商魂 PCA商管 |
2ユーザー | 3675円 | - | - |
| 3~24ユーザー | - | 6300円 | - | |
| PCA公益法人会計 PCA建設業会計 PCA社会福祉法人会計 PCA医療法人会計 |
2ユーザー | - | 6300円 | - |
| 3~24ユーザー | - | - | 7875円 |
| 契約タイプ | ライセンス | 月額利用料 |
|---|---|---|
| タイプ2 (2ユーザー、1Gバイトまで) |
基本ライセンス | 1万9950円 |
| タイプ6 (最大6ユーザー、2Gバイトまで) |
基本ライセンス (3ユーザーライセンス付き) |
2万5200円 |
| 追加ライセンス (1ユーザー単位) |
8400円 | |
| タイプ12 (最大12ユーザー、4Gバイトまで) |
基本ライセンス (6ユーザーライセンス付き) |
4万7250円 |
| 追加ライセンス (1ユーザー単位) |
7875円 | |
| タイプ24 (最大24ユーザー、8Gバイトまで) |
基本ライセンス (12ユーザーライセンス付き) |
8万8200円 |
| 追加ライセンス (1ユーザー単位) |
7350円 |
同サービスのSaaS基盤は、PCAが契約する国内大手データセンターで運用されており、ユーザーは関東と関西の2つのエリアから運用サイトを選択できる。サービスレベルは契約上保証していないが、2010年5月30日から2011年5月29日までの一年間で99.9995%の稼働率を達成するなど、優れた運用実績を残している。また、万が一の事故や災害を想定した事業継続の仕組みも用意されているという。
「ユーザーが自社のローカル環境にバックアップデータを取っていれば、万が一データセンターがダウンしたり回線がつながらなくなっても、PCにオンプレミス版のパッケージをインストールし、バックアップデータを読み込んで業務を継続できる。こうした柔軟な運用が可能な点は、パッケージベンダーならではの強みだと考えている」(篠崎氏)
サービスを利用開始するために必要な準備と手続きも、極めて簡単だという。PCAのサイトからクライアントソフトウェアをダウンロード、インストールして設定を行う必要はあるが、最短のケースでは3営業日ほどで利用準備が整う。またPCA for SaaSには無償トライアルサービスも用意されている。これを使っていたユーザーが正式利用に移行する際も、同じシステムをそのまま継続利用できる。
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中小企業ユーザーの使い勝手を重視したアーキテクチャ
SaaSというと、Webブラウザで利用するというイメージが強いが、PCA for SaaSでは、パッケージ製品のクライアント/サーバアーキテクチャを継承し、クライアントPC上で同社が独自開発したクライアントソフトウェアが稼働する。これは、パッケージ製品の使い勝手の良さをそのまま受け継いだ結果だが、この専用クライアントソフトウェアと専用IDを使わないとデータセンター上のサーバにアクセスできないことから、セキュリティ強度を高める上でも一役買っている。
クライアント環境の使い勝手を重視する考え方は、バージョンアップ版の提供形態にも表れている。通常、SaaSの大きなメリットの1つとして、ソフトウェアのバージョンアップがデータセンター上で自動的に行われるため、ユーザーの手間が掛からない点が挙げられる。しかし篠崎氏によれば、同社製品のユーザーの場合、事情は若干異なるという。
「基幹業務を担うシステムの画面や操作性が突然変わってしまうと、業務の現場で混乱が生じることが多い。法改正対応でも、パッケージがいち早く対応しても、それを実際に使うユーザーの現場がすぐに対応できるとは限らない。従って、われわれ開発元の都合でバージョンアップを一律に行うのではなく、個々のユーザーの都合に合ったタイミングでバージョンアップをできなくてはいけない。そのためPCA for SaaSでは、バージョンアップされたソフトウェアをユーザーが任意のタイミングでダウンロードし、クライアント環境に適用する方式を取っている」(篠崎氏)
また近年、SaaS型の業務パッケージの導入理由として、「企業グループ内における業務システムの統一」を挙げる企業が増えてきている。こうした動きは、特に海外に拠点を設けている大手製造業において顕著だが、篠崎氏によればPCA for SaaSのメインユーザーである中堅・中小企業においてもそうした動きは見られるという(参考記事:製造業が直面する残念なERPと幸せなERP)。
「比較的小規模なグループ企業の場合、たとえ親会社で本格的なERPシステムを導入していたとしても、子会社側は安価な業務パッケージ製品をばらばらに導入していることが多い。そのため、決算時に各子会社から収集する会計データの形式もばらばらになってしまい、決算業務が煩雑になってしまう。こうした問題を解決するために、各子会社の業務システムをPCA for SaaSで統一するグループ企業も出てきている」(篠崎氏)
Dream21のプライベートクラウド型の提供形態も
PCAは、PCA for SaaSの正式サービスとして前述の8製品を提供する他、2012年7月には人事管理パッケージの最新版「PCA人事管理X」のトライアル提供を始めた。実は、現在PCA for SaaSで正式版として提供されている製品は、オンプレミス版の最新バージョンより1世代古い製品が使われている。しかし2012年10月からは、現在トライアル提供中のPCA人事管理Xに加え、最新バージョンである「PCA会計X」「PCA給与X」「PCA商魂X」「PCA商管X」の「Xシリーズ」製品群を提供開始する予定になっている。
さらに、冒頭で紹介した同社の統合ERP製品「PCA Dream21」のクラウド版も個別提供されている。ただしその提供形態は、PCA for SaaSとはかなり異なる。伊藤氏は次のように説明する。
「PCA Dream21は柔軟にカスタマイズできることが特徴で、導入されるケースのほとんどでカスタマイズが施されている。そのため、PCA for SaaSのようなパブリッククラウド型のSaaSにはあまりそぐわない。しかし一方で、自社でサーバを持たずにPCA Dream21を利用したいという要望も多い。そうしたニーズに応えるため、弊社のパートナー企業が運営するデータセンター上にシステムを構築し、VPN経由で利用してもらうような提供形態が増えてきている」
いわゆるプライベートクラウドのような形態でPCA Dream21を利用する企業が、ここ数年の間で増えてきているのだという(プライベートクラウド型ERP利用についての記事:「SAP ERPは月額料金で利用」が当たり前になるか)。パブリッククラウド型のPCA for SaaS、そしてプライベートクラウド型のPCA Dream21、この両形態のソリューションをそろえているところにPCAの強みがあると伊藤氏は述べる。
「この両方の提供形態をそろえていることで、ユーザーのニーズに幅広く応えることができる。今後は、個別のユーザーニーズごとに合致するクラウドサービスを柔軟に提案できるよう、販売代理店やパートナー企業との協業体制をより一層深めていきたいと考えている」(伊藤氏)
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