タレントマネジメント製品紹介【第8回】
カシオ「iTICE」が支援する人事部による人材情報の一元管理と可視化
人事業務全体の統括から人事戦略の実行支援へと人事部の役割が変わりつつある。その際に重要になるのが人材情報の一元管理と可視化だ。カシオヒューマンシステムズの「iTICE」は人材情報の社内基盤を目指す。
カシオヒューマンシステムズは人事関連ソリューションを専門に手掛ける、カシオ計算機の100%子会社。もともとはカシオ計算機の人事関連ソリューションを扱う部署が母体で、2009年に別会社として独立した。
同社が扱う主力パッケージ製品には2つある。1つが1990年にオフコン上の人事管理システムとして提供を開始した「ADPS(アドプス)」。ADPSは、人事管理や給与計算、就業管理といった、人事部門の労務系業務を支援するための、いわゆる昔からあるオーソドックスな人事給与システムだ。現在ではWindowsサーバ上で稼働するWebシステムとして提供されており、発売以来5000社以上の導入実績を持つ。
タレントマネジメント製品紹介
同社のもう1つの主力製品が、2009年の会社設立と同時に新たに提供を開始した「iTICE(アイティス)」というパッケージ製品だ。こちらは、人事給与システムとしてのADPSではカバーされていない「人材情報のプロファイリングや検索」「人材育成支援」といった、いわゆるタレントマネジメントの領域をカバーする。カシオヒューマンシステムズ 人事統轄部 統轄部長 佐藤政弘氏は、同社がiTICEの開発・提供に至った経緯を次のように説明する。
「ADPSの発売以来、20年以上にわたってさまざまな企業の人事部を支援してきたが、特にここ数年、企業の中で人事部に求められる役割が変わりつつあると感じる。グローバル化や市場の構造変化に対応するため、多くの日本企業の経営者が従来の人材育成や人材評価、人材登用の見直しを始めており、事業遂行に適した人材をより効率的に育成・登用できる方法を模索している。しかし、現在の人事部では、現場の事情や戦略をなかなか知ることができない。人事部ではなく、事業戦略を考える立場にある経営企画部門や事業部門長が、直接人材情報を参照して判断を下した方がいいというのが多くの経営者の考えだ。人事部には、そのための人材情報をそろえて、いつでも提供できる環境を整備する役割が求められるようになってきている」(参考記事:読めば分かる! ERPの人事・給与管理)
このような役割の変化があるにもかかわらず、多くの企業の人事部では、日々の労務管理に必要な人事情報はそろっていたとしても、経営陣や経営企画、マネジメント層が人材戦略を練るための基礎となる人材情報は管理できていないのが実情だ。こうした人材情報を一元管理・可視化して、社内のさまざまな立場の人々の間で広く共有できるような仕組みを実現するのが、iTICEなのだという。
ユーザー部門のERP導入参加についての記事
社内外に散在した人材情報を広く収集し可視化する
iTICEによって可視化・共有できる情報は、大きく分けて3種類がある。1つは、タレントマネジメントソリューションの基本中の基本ともいえる「人の見える化」。多くの企業では、人に関する情報が社内のさまざまな場所に散在している。例えば、勤務評定や勤怠情報、給与といった人事情報は人事・給与システムのデータベースに、教育に関する情報は教育担当者のPCの中に、各従業員の詳細な評価情報は事業部長の下に、アンケート調査やアセスメントの結果は調査会社が管理している、といった具合だ。
このように社内外のあちらこちらに散在している人材情報を、まずは全て取り込んで単一の人材データベース上に集約する。iTICEはウィザード機能で効率的に外部からデータを取り込める機能を備える他、アンケート機能も内包しており、従業員の満足度調査やスキル情報調査などを簡単に実行し、結果情報を自動収集できるようになっている。また、オプションとして適正診断やメンタルヘルスチェックといったアセスメントを実行する機能も用意されている。
「アセスメントの実施や結果診断などを外部の専門会社に委託する企業は多いが、実施のたびに費用が発生する上、結果情報を社内でまとめて一括管理するのも難しい。そのためアセスメントもiTICEの仕組みの中で実施したいというニーズが多くなっている。そこで、弊社と契約している幾つかのアセスメントサービスをiTICE上で実行できるオプション機能を用意している。何度実施しても追加コストが発生しないので、長く使えば使うほどコスト効果が出てくる」(佐藤氏)
こうして幅広く収集した人材情報は、人材リストやプロファイルシートの形で可視化・共有される。また人材データベースの中から特定の条件に合致した人材を自由に検索できたり、さらには個々の人材の属性や特性を解析し、グラフィカルなチャートの形で表示する分析機能も備える(参考記事:ITを使った経営の「見える化」、そのノウハウが分かるホワイトペーパー)。
日本企業独自の企業文化を配慮した人材管理機能を提供
上記の「人の見える化」機能は、ほとんどのタレントマネジメント製品が基本的な機能として備えるものだが、iTICEではさらに加えて、「組織の見える化」「変化の見える化」という2つの可視化を重要な基本機能として位置付けている。
組織の見える化とは、個人レベルで収集・管理している属性情報、アンケート結果、アセスメント診断結果などの人材情報を組織単位で集計し、その平均値を算出するなどして、組織が業務遂行に必要な人材の質と量を満たしているかを可視化できる機能だ。例えば、ある特定の評価軸で見た場合の人材の分布状況をプロットグラフに表示することで、その組織の風土やモチベーション、スキルセットの過不足など、組織ごとに抱える人材管理上のさまざまな課題を診断できる。
このような企業の組織力を高めることに重きを置いた機能は、長く日本企業の人事部門向けにソリューションを提供してきたカシオヒューマンシステムズならではのものだと佐藤氏は言う。
「海外製のタレントマネジメント製品はどちらかというと、飛び抜けて優秀なエリート人材を社内で選抜したり、あるいは社外からスカウトしてきて、次世代リーダーとして重点的に育成することを主な目的にしている。しかし日本企業は欧米の企業とは異なり、個人よりも組織の単位で仕事を進める文化が根強い。そのためiTICEも、組織の状態を分析・診断できたり、現場の従業員1人1人の能力をくまなくボトムアップして適材適所で配置できるような機能に力を入れている。このように日本企業独自の人事カルチャーに密接に寄り添っている点が高く評価された結果、海外製品を差し置いて採用されるケースが非常に多い」(佐藤氏)
また「変化の見える化」とは、時間の経過に伴う人や組織の変化を可視化する機能だ。これも、多くの日本企業において必要とされる機能なのだという。
「人材管理に関する課題を企業からヒアリングすると、人事制度や教育制度を改革したり、採用方針を変更したとしても、その効果が表れているかきちんと評価できていないという課題を挙げる企業が非常に多かった。そこでiTICEでは、人材管理のさまざまなフェーズで実施した打ち手について、投資対効果が具体的にどれだけ上がったのかを可視化・評価し、人材管理のPDCAサイクルを継続的に回せるようにするための機能を備えている。具体的には、時間の経過とともに個々の人材や組織の評価がどのように変遷したかを、グラフで把握できるような機能を数多くそろえている」(佐藤氏)
また人材の評価項目自体を、随時変更することもできる。企業の事業内容や事業目標は時とともに変化し、それに伴い求められる人材像も変わっていく。この変化する人材要件に柔軟に対応できるよう、iTICEでは人材の評価指標をユーザーが自由に設定できるようになっている。例えば、外部システムから取り込んだ人事データや、社外のコンサルティング企業やアセスメント企業が保有する評価データなどの中から、任意の評価項目を幾つか取り出し、それらを掛け合わせることで独自の評価指標を新たに設けることができる。また、そうして作成した指標をグラフやチャートとして、プロファイルシートの任意の場所に埋め込むことも簡単にできる。
iTICEは基本的にカスタマイズやアドオン開発を行わずに利用する製品だが、ユーザーニーズに応じて柔軟にデータや画面を設計できるのが大きな特徴の1つになっている。
導入に掛かるコストを極力低く設定
以上で挙げた「人の見える化」「組織の見える化」「変化の見える化」の3つの見える化を通じて、日本企業特有の人材管理ニーズにマッチしたソリューションを提供するというのがiTICEの製品コンセプトだ。ちなみに同製品には、「HERO」という兄弟製品も存在する。これは目標管理(MBO)やコンピテンシー管理、キャリア申告などの業務を支援するためのWebベースのワークフローシステムで、iTICEと連携させて利用することで、人材管理のPDCAサイクルをさらにスムーズかつ的確に回せるようになるという。
iTICEのライセンス価格は管理対象の従業員数によって異なるが、最も安価なライセンスの場合、システム導入支援サービス込みで500万円から。従業員数1000人未満まで利用できるなど、全体的に価格は低く抑えられている。この価格設定には、より多くの企業にiTICE導入のメリットを享受してもらいたいという思いが込められていると佐藤氏は言う。
「iTICEの『3つの見える化』でさまざまな気付きを得た企業は、続いてそれに基づいて社内制度改革に着手することになるが、これには恐らく長い時間と多額のコストを要する。従って、最初の部分だけでもなるべくハードルを低く設定した方がいい。そのために、iTICEの価格もあえて低く設定している。導入の手間も極力掛からないよう工夫されているので、手軽に人材マネジメントの取り組みをスタートできるはずだ」(佐藤氏)
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