Microsoftライセンスとの賢い付き合い方【後編】
Microsoft「ソフトウェアアシュアランス」を買うべき企業、買うべきでない企業
Microsoftのソフトウェアアシュアランスにはリスクやデメリットもあるが、当然ながらメリットもある。ソフトウェアアシュアランスがメリットになる場合、デメリットになる場合の条件を教えよう。
前編「Microsoft『ソフトウェアアシュアランス』のリスクを理解する」では、ギャンブル並にリスクを内包するソフトウェアアシュアランスについて解説。ソフトウェアアシュアランスを購入せず、その分の資金を自社でプールしておく方法を紹介した。後編では、ソフトウェアアシュアランスの特典やメリットについても見てみよう。
Windows 8:Vistaの轍を踏むか?
Windows 8のリリースが迫っている今、ユーザーにはVistaの教訓を忘れずにいてほしい。
米調査会社IDCのアナリスト、アル・ギレン氏は、Windows 8は従来のPCにとって軌道を逸した存在だという。カナダの金融サービスプロバイダーBMO Capital Marketsのアナリスト、キース・バックマン氏は、少なくともリリース直後はWindows 8は期待外れに終わると見ている。米調査会社Gartnerのマイケル・シルバー氏は、ほとんどの組織はWindows 8にアップグレードしないと予想している。
これらの分析が正しいとしたら、現時点でWindowsのSAを購入した場合、購入者の大半は恩恵をほとんど受けられないだろう。悪くすれば、Windows 9を有利に手に入れようと、今から3年後にSAを更新してさらに3年間期間を延長するかもしれない。つまり、見返りが得られる確証のないまま、SA料金を6年間支払い続けることになる。
価格がWindowsの約3倍のOfficeにも、同じことがいえる。顧客の多くはOffice 2007を見送り、今になってOffice 2010への移行を進めている。つまり、Microsoft Officeの次期バージョンをすぐに導入する見込みは低い。
多様なSAの特典
SAの支持者は、私がSAのその他の特典を無視しているというだろう。
私にはその理由がある。1つは、SAが提供する25の特典を積極的に利用しているユーザーはごくわずかなことだ。特典のうち3つを利用しているユーザーでさえ、全体のわずか25%にすぎない。私の顧客の1社のSA特典の利用状況をMicrosoft自身が分析したところ、アップグレードを除くSAの特典6つを利用することで約20万ドルを節約できていることが分かった。しかし、この顧客がSA自体に払った費用は約85万ドルに上る。
2つ目の理由として、トレーニング受講券、テクニカルサポートインシデント、Officeの自宅使用など、人気のある特典の多くは、特にエンタープライズアグリーメント(EA)を保有している顧客であれば、SAを購入しなくても、より少ない費用で購入できる。
SAの特典は「アップグレードだけではない」とMicrosoftは言うが、現実はそのアップグレードがほとんどの顧客にとって最大のメリットになっている。
SAの特典:Windows Thin PC(WinTPC)
SAを購入しなかった場合のデメリット
SA支持者の指摘で1つ的を射たことがある。SAを購入せずその分の資金を自社に保持しておく方法は、どの企業にも有効なわけではない。以下に、期待できるメリットとリスクを挙げる。
VDI導入企業:大規模な仮想デスクトップインフラストラクチャを運用している企業にとっては、WindowsのSAがWindowsのライセンスを取得する最も割のいい方法になる可能性がある。
MDOPユーザー: Microsoft Desktop Optimization Pack(MDOP)のコンポーネントを広範にわたり導入している組織は、代替のテクノロジに切り替えられる準備ができていなければならない。MDOPを使用するにはWindowsのSAが必要だからだ。MDOPのどのコンポーネントにも代替製品があるが、MDOPよりも費用がかさむ可能性がある。
価格にうるさいユーザー: SAを購入していると、契約期間中にリリースされたアップグレード版の価格が保証される。この価格保証は、Windows(2003年以来1%の上昇)やOffice(Standardでは1%の下落、Professional Plusでは11%の上昇)などのデスクトップ製品では、必須ではない。しかし、一部のサーバ製品(特にSQL Server)の価格は、この10年で35~50%も上昇している他、仮想化への変更や移行の権利など、SAでしか提供されないものもあった。
CALスイート: Core CALスイートとEnterprise CALスイートなどの製品に対してSAを保持することで、クライアントアクセスライセンス(CAL)の管理が楽になる。Exchange、Lync、SharePointなどのプロダクティビティサーバ製品を利用しているユーザーは、特にこのことを実感できるだろう。このようなユーザーは、WindowsやOfficeのSAを保有していなくても、CALスイートのSAを購入しておくと、コスト面でも管理面でもメリットを得ることができる。
SAを購入しなかった場合のメリット
SAを購入しない方が有利になる場合は、次の通りだ。
Windows 7とOffice 2010で標準化している:この2年の間(訳注:2012年8月からさかのぼって2年間)に全社レベルでWindows 7およびOffice 2010へのアップグレードを完了している場合、今後5年間はこのデスクトップ構成を使い続けることになるだろう。
限定的にデスクトップ仮想化を導入しているケース: ごく一部のデスクトップのみを仮想化している組織では、EAでWindowsのSAを購入することは避けよう。EAでは全PCが対象になるためだ。一部のPCをライセンス対象とするのであれば、Select Plusなどのプログラムを利用した方が、より少ないコストで望ましい結果が得られる。
クラウドユーザー: Microsoftは長年WindowsとOfficeに端末ベースのライセンスを採用してきたため、使用権がユーザー単位で付与されるクラウドサービスに移行するのは複雑だ。ボリュームライセンス契約や、場合によってはSAから実現できる割引率は、Microsoftのクラウドサービスを一時的に購入することで実現できるコスト低減に比べて、非常に大きいわけではない。また、IBM、VMware、Cisco、またはGoogleのコラボレーション&プロダクティビティクラウドサービスを採用するのであれば、Microsoftに渡ったSAの購入代金からは何の見返りもない。
オンプレミス製品のソフトウェアアシュアランスを購入しないことで、Microsoftのクラウドサービスの価格がユーザーに有利な方向に動く可能性がある。Microsoftもユーザーの選択肢は1つでないことを知っているからだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Microsoftライセンスとの賢い付き合い方
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
比較資料
[セコムトラストシステムズ株式会社] 「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 過去にRPA導入をあきらめた企業こそ知っておきたい 失敗しない自動化導入術 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 自分ひとりでデスクワークを効率化 「AI&ナビ搭載RPA」で実践する業務自動化 -
製品レビュー
[サイボウズ株式会社] 京セラコミュニケーションシステムに学ぶ、製造業の現場でAIを定着させる方法 -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] 元ヤンマーCIOの矢島氏が語るDXの本質:日本企業が陥った4つの落とし穴と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
5
年収が増えても幸せになれない 給与増でエンジニアが直面する「幸福度の壁」
-
6
SAP ECCの「2027年問題」は綱渡り? 未移行企業が直面する“真の課題”
-
7
便利機能が「裏口」に コンテナの安全を脅かす“監視の穴”とは
-
8
SAPの手探り“クラウド間移行” 丸紅グループが業務停止を1営業日に抑えた方法
-
9
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
10
生成AIで開発工数を圧縮 「工数150分の1」を叩き出した実例
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
8
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー