ハイブリッド vs. オールフラッシュ
導入企業が指南する“SSDの使いどころ”
企業向けストレージシステムで採用が広がるSSD。その利点は圧倒的なパフォーマンスにあるが、採用企業によって利用形態は異なる。ストレージの性能や容量、コスト面を考慮した各社の取り組みを紹介しよう。
フラッシュメモリの容量はどれくらいあれば十分なのだろうか。2012年10月中旬の「Storage Networking World」ではSSD(ソリッドステートドライブ)をテーマとしたパネルディスカッションが行われ、企業のストレージ管理者たちが「オールSSD型アレイ」のメリットと「SSDとHDDを組み合わせたハイブリッドシステム」のメリットについて議論を交わした(関連記事:SSD利用形態の2つの選択肢──キャッシングかプライマリストレージか)。
パネリストのうち2人はオールSSDアレイを使っており、別の2人はハイブリッドシステムを使っていた。「両方式にはそれぞれメリットがあるが、選択の決め手となったのは自社独自のニーズだ」と4人は口をそろえた。また、4人とも「フラッシュアレイに移行したのはパフォーマンス問題を解決するためだった」としている。
貨物車両メーカーの米TTXでビジネスソリューション技術マネジャーを務めるステファン・ハンドリー氏によると、米Whiptailの17Tバイトフラッシュアレイ「Invicta」は、自社で以前から保有する米EMCの「Clariion」よりも安価だったという。このClariionはハイブリッド構成だが、HDDが中心でSSDの容量は少ない。
「自社で使ってきた従来型アレイでは、パフォーマンス、容量および予算の面で問題があった」とハンドリー氏は語った。「このため、低コストの個別ソリューションとしてWhiptailの100% eMLC(エンタープライズマルチレベルセル)フラッシュアレイを導入した。この製品は費用対効果が高く、極めて短時間で配備でき、データベースのパフォーマンスが飛躍的に向上した。当社では、パフォーマンスが深刻な問題になっていた」
カナダのアニメーション製作会社、Rainmaker EntertainmentのIT担当ディレクター、ロン・スティンソン氏によると、同社の大規模なレンダーファームのパフォーマンスを大幅に引き上げる必要に迫られていた。既存の日立データシステムズ(HDS)のHDD型NAS(Network Attached Storage)である「BlueArc」をアップグレードするよりも、米AlacritechのオールSSD型NASアレイ「ANX」を追加する方がコストが安いことが分かったという。
Rainmakerでは、HDSのNASをアップグレードせず、SSDアレイを追加することにした。「フラッシュシステムの採用により、500台のサーバと650台のワークステーションで構成されるレンダーファームが、スケジュールの厳しい2つのレンダリングプロジェクトに対処することができた」とスティンソン氏は話す。
「以前はアプリケーションのロード時間が20秒だったが、それが最大で2分間もかかるようになっていたため、『NASシステムを新たに追加する必要があるのだろうか』と思った。パフォーマンスは向上するかもしれないが、われわれが求める結果が得られるかどうか疑問だった」(同氏)
ファームを1000台以上のサーバという規模に拡大しなければならないような「とてつもないレンダリングの嵐」に直面したスティンソン氏は、Alacritechのフラッシュシステムを導入したところ、すぐさまその効果を実感した。フラッシュシステムの導入後、CPUのピーク利用率が70%から40%に低下し、NASシステムからのネットワークトラフィックも20%減少したという。また、NASコントローラーを新たに追加するのと比べ、40%も低いコストで済んだ。
米半導体メーカーのLinear TechnologyのITマネジャー、アミット・パテール氏、そして米金融サービス会社Calypso TechnologyのIT管理ディレクター、ブラッド・テイラー氏によると、HDDアレイよりも高いパフォーマンスを必要としていたが、オールSSDアレイは高価で手が届かなかったという。このため両氏は、米Nimble Storageのハイブリッドシステムを選択した。このシステムは4台のSSDと12台のHDDを搭載し、SSDはキャッシュとして利用する。
パテール氏によると、Nimbleのハイブリッド型フラッシュシステムは、30個の仮想サーバに加え、OracleデータベースとMicrosoft SQLデータベースを動作させるのに十分なパフォーマンスを提供するという。
「Nimbleのシステムは、ランダムリードが頻繁に行われるデータをフラッシュドライブに置き、シーケンシャルライトが行われるデータをHDDに保存するため、高速で非常に信頼性が高い」と同氏は語る。「HDDに書き込む際にも、データの圧縮が行われる。私がそれを聞いたとき、パフォーマンスが損なわれるのではないかと心配したが、そんなことはなかった」
テイラー氏によると、Nimbleは中道路線を行くベンダーだそうだ。「SSDをキャッシュとして利用することで優れたパフォーマンスを提供するという狙いだ。フラッシュドライブでは、10倍、場合によっては100倍といった大幅なパフォーマンスの向上を期待する人が多い。ビジネスニーズがあるのなら、100%フラッシュシステムを選択すべきだ。だが当社の場合、Nimbleのシステムで処理できないほどのワークロードは存在しない。HDDストレージをSSDで強化するというのがNimbleの手法だ」(同氏)
PCIeフラッシュはまだ高価?
サーバベースのPCIe(PCI Express)フラッシュカードを検討した2人のパネリストは、フラッシュはPCIeよりもアレイの方に適していると思ったという。ただしスティンソン氏は「PCIeフラッシュが手頃な価格になれば採用するかもしれない」と述べた。
「自社のワークステーションに米Fusion-ioのPCIeカードを搭載することを検討している」とスティンソン氏は語る。「これはコストが掛かるソリューションだが、いずれ価格が下がれば、検討する価値があるのは間違いない。しかしまだその段階には達していない。SSDなら10分の1のコストで導入でき、Fusion-ioの製品の45%の改善効果が得られる」
ハンドリー氏は、サーバベースのフラッシュの有用性は認めながらも、同氏のニーズには合わないとしている。パフォーマンスの改善が必要な全てのサーバにPCIeカードを組み込むつもりはないという。
「PCIeカードが適している用途があるのは分かるが、当社に必要だったのはSAN(Storage Area Network)をベースとした共有ストレージであり、個別ソリューションではない」とハンドリー氏は語る。「当社の環境は米VMwareの製品で完全に仮想化されており、全てのESXホストに共有ストレージを提供する必要があった」
アプリケーションのパフォーマンス改善にも効果
Linear Technologyのパテール氏によると、Nimbleのストレージ製品の導入による最大のメリットは、夜間のバックアップ時間が減少したこと、そしてデータベースから生成されるリポート数が増えたことだという。
「パフォーマンスの限界に達する気配すらない」とパテール氏は語る。「SQLデータベースを入れ、Oracleデータベースを入れ、大量のリポートを生成させたが、速度の低下は見られない。規模を拡大する余地はまだ大きい。アプリケーションのパフォーマンスが素晴らしいため、SQL担当者たちは次から次へとリポート生成を要求している。以前はリポートの生成に24時間もかかっていたが、今では毎朝、リポートが担当者を待ち受けている」
Calypsoのテイラー氏によると、Nimbleのシステムで得られた最大のメリットは、処理できるトランザクション数が増えたことだという。「金融業界では1秒間で何件の取引を処理できるかが重要な指標だ。トランザクションの処理量が10倍、場合によっては20倍にも改善された」と同氏は語る。
スティンソン氏によると、Rainmakerにとってのメリットは、同じ時間でより多くのレンダリングプロジェクトを完了できるようになったことだという。「今では、以前よりも大規模なプロジェクトに取り組める。レンダーファームを数千台のサーバという規模に拡大できるようになった」と同氏は語る。
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