「ひとり情シス」課題別解決マニュアル【第3回】
運用管理コストをもっと削減できる、Windows/モバイル徹底活用術
業務部門から何かを相談された際、本来いらないツールまで購入してはいないだろうか? WindowsのOS機能をはじめ、今あるツール類を見直すと、運用負担/コスト削減に役立つさまざまな機能を発見できるはずだ。
本連載ではシステム運用管理の業務に日々1人で奮闘されている「ひとり情シス」の方々に役立つと思われるポイントを、実際の調査データを踏まえて紹介している。連載の第1回は全体状況を俯瞰し、ひとり情シスが直面しやすい3つの課題を挙げた。
- 課題1:販社/SIerとうまくコミュニケーションが取ることができず、自社が必要としているソリューションを提案してもらえない
- 課題2:スマートデバイスの効果的な活用法が分からないことに加え、拠点に散在しているクライアントPCのトラブル対応で手いっぱいである
- 課題3:クラウドコンピューティングを導入する価値が本当にあるかどうかの判断ができず、一方で個人向け無償クラウドの勝手な利用も不安である
今回は第1回で挙げた2つ目の課題、「課題2:スマートデバイスの効果的な活用法が分からないことに加え、拠点に散在しているクライアントPCのトラブル対応で手いっぱいである」について考えてみよう。PCやスマートデバイスは個々の社員が利用する「端末」という観点でまとめることができる。こうした「端末」はサーバと違って管理すべき台数が多くなる。そのため、ひとり情シスにとっては「端末の管理負担をいかにして軽減するか?」が重要となる。
スマートデバイスでは「その場で文書を編集できる」メリットに注目
まずはスマートフォンやタブレットといったスマートデバイスから見ていくことにする。昨今は「紙面のカタログや契約書類をタブレットに置き換えることで、大幅なコスト削減に成功した」といった事例を目にすることが多い。経営層から「ウチもタブレットやスマートフォンを使って何かできないのか?」と聞かれているひとり情シスの方も少なくないだろう。
だが、以上のような活用法は大企業における事例が比較的多い。社員数がそれほど多くない中小企業では、ペーパーレス化によって得られるコスト削減効果も限定的だ。中小企業に適しており、ひとり情シスが無理なく進められるスマートデバイス活用とはどのようなものか? 調査データを基に詳しく見ていこう。
以下のグラフはスマートデバイスを活用中または活用予定のユーザー企業に対して、活用の対象となる業務を尋ねたものだ。ここでの「スマートデバイスの活用」とは社員が業務においてスマートフォンやタブレットを利用するケースを指す。「一般消費者が持つスマートフォン向けにクーポンを発行する」など、社員以外の利用者が使用/所有する端末を対象とした業務は含まれない。前回と同様に、ひとり情シスの割合が比較的多い、従業員数50人未満の企業層と従業員数50人以上500人未満の層に分けて集計している。
従業員数50人以上500人未満ではグループウェアなどの情報系、CRMなどの顧客管理系に加えて、IT運用管理担当者が監視ログや障害通知をスマートデバイスで確認するといった利用シーンも2割程度存在していることが分かる。それに比べると、従業員数50人未満では情報系の割合が高くなっている。
もう1つ調査データを見てみよう。以下のグラフはスマートデバイスを活用中または活用予定のユーザー企業に対して、「端末の所有者は誰か? 端末をどのようにして管理するか?」を尋ねたものである。先のグラフと同様に従業員数50人を区切りとして集計している。
従業員数50人未満では従業員数50人以上500人未満と比べて、「社員が個人で購入したものを利用させており、端末の管理は個々の社員に任せている」が多くなっていることが分かる。
これら2つのグラフの結果を見ると、ひとり情シスが多い従業員数50人未満では「社員が個人で所有する端末を用いて、グループウェアのスケジュール確認などを行う」といった利用法が多いことが分かる。いわゆるBYOD(Bring Your Own Device)と呼ばれる形態に該当する。
だが、こうした利用法はスマートデバイス以前から存在する携帯電話でも実現できていたことだ。スマートデバイス登場以前と同様に「社員が自己責任で個人端末からスケジュールを確認する」という方針で、「ひとり情シスとしては関知しない」のも1つの選択ではある。しかし、スマートデバイスの有効な活用法を社内に提示することによって、業務効率の改善に一役買うことにチャレンジする良い機会でもある。
では、具体的にはどうすれば良いのか? スマートデバイスの強みはネットワークを介してさまざまなアプリケーションを手軽に利用できることにある。例えば、Microsoft Office文書を閲覧するだけでなく、編集することも可能だ。一般コンシューマー向けのサービスも利用できる。例えば、富士ゼロックスとセブン-イレブン・ジャパンが共同で提供している「ネットプリントサービス」を利用すると、スマートデバイスで編集した文書を最寄りのセブン-イレブン店舗で印刷することができる。つまり、外出先の営業マンが顧客の求めに応じて値引きなどを行い、その結果を反映した見積書をわざわざ帰社せずにスピーディに提示するといったことが可能になるわけだ。単なるスケジュールの閲覧にとどめておかずに、こうした売り上げ向上につながる活用提案をしてみる価値が十分にある。
その際、ひとり情シスとして気を付けるべきなのは「セキュリティの確保」だ。Microsoft Office文書を編集できるアプリケーションには無償のものも数多く存在する。だが、手元で編集できるということは、見積書などの文書が社員の所有する個人端末にダウンロードされているということになる。「編集後は必ず削除する」というポリシーを定めるといった方法もあるが、故意ではない消し忘れも起き得るので完全な対処とはいえない。
例えば、日本マイクロソフトが提供するクラウドサービス「Office 365」には「Office Web Apps」という機能があり、クラウドに格納されたMicrosoft Office文書を端末にダウンロードせずに編集することができる。セキュリティへの配慮と必要なコストはトレードオフの関係にある。それぞれの方法でどのようなメリットとリスクがあるのか、社内に説明しながら、自社に最も適したものを選ぶと良いだろう。
Windowsの機能を有効に使うことが、PC運用管理の負担を軽減する近道
次にクライアントPCについて考えてみよう。2014年4月にはWindows XPのサポートが完全終了する。それに向けて社内PCの刷新に追われているひとり情シスの方も多いのではないだろうか? クライアントPCの刷新では単にハードウェアを入れ替えるだけでなく、各種の業務アプリケーションやセキュリティツールをインストールする手間なども発生する。ひとり情シスにとって特に負担の大きい作業であることは間違いない。そのため、Windows XPからの入れ替えが必要であることは分かっているが、なかなか着手できないケースもあるかもしれない。
以下のグラフはユーザー企業に対して、「クライアントPCのハードウェアまたはOSを刷新しない理由」を尋ねた結果である。これまでと同様に従業員数50人を区切りとして集計している。
従業員数50人未満では「まだ耐用年数の限界に達していない」が突出して多く挙げられている。故障していないのであれば、可能な限り長く利用したいと考えるのは当然のことといえるだろう。ここで注目したいのは「新しいOSに魅力を感じない」という項目の割合だ。従業員数50人以上500人未満では13.7%であるのに対し、従業員数50人未満では31.3%に達している。「Windows OSをバージョンアップしても何か便利になるわけではない、むしろ画面や操作が変わることでの弊害の方が大きい」と考える方も多いかもしれない。だが、本当にそうだろうか?
例えば「BitLocker」「BitLocker To Go」はドライブやUSBメモリ内のデータを暗号化できる機能である。大企業だけでなく中小企業においても社外でのクライアントPC活用に対するニーズは意外と高い。社内業務をこなす部課長職も営業リソースとして社外で活動することが少なくないからだ。ユーザー個別のファイルや各種の設定項目を保持したままOSを初期状態に戻すことができる「リフレッシュ」機能、ユーザー個別のデータを自動でバックアップし、ファイル単位で元に戻すことのできる「ファイル履歴」機能もある。「クライアントPCを社外でも利用したい」「クライアントPCが故障してしまった、データを復旧したい」といった際、これらの機能を活用すれば、ひとり情シスの負担を軽減することができる。
一方、以下のグラフは従業員数50人未満の企業に対し、Windows OS機能の活用意向を尋ねた結果である。「OSやエディションの変更をしても良い(=バージョンアップしても良い)ので、これらの機能を利用したい」と考えるユーザー企業は2割弱に達している。
最新のOSであるWindows 8については中小企業の多くのユーザー企業が「タッチパネル対応」を大きな特徴の1つとして捉えている。だが、上記のグラフが示すようにタッチパネルは7割超のユーザー企業が「必要ない」と考えている。その結果、先に述べた「新しいOSに魅力を感じない」という回答が多くなるわけだ。
ただ、前述した「リフレッシュ」「ファイル履歴」機能は、実はWindows 8の新機能である(Windows 7にも「システムの復元」や「バックアップと復元」といった類似の機能があったが、使い勝手が大きく改善されている)。また、「BitLocker」と「BitLocker To Go」はWindows 7ではEnterpriseエディションでないと利用できなかったが、Windows 8では中小企業でも広く利用されているProfessionalエディションでも利用できるようになった。単に単にクライアントPCのハードウェアを入れ替えるだけでなく、新しいWindowsの機能を積極的に活用すれば、PC運用管理の負担を大きく軽減することが可能なのである。
新しい知識を吸収する努力を少しずつ続けることが大切
このようにスマートデバイスやクライアントPCを扱う際には、「今の時点で何がどこまでできるのか?」に関する知識を持っておくことが重要だ。営業マンから「見積書を出先で手直しして客先に持って行きたいけど、タブレットで何とかできないかな」と相談されたときに「適切な方法を答えられるか?」「本当はWindowsの機能で十分対応可能なはずなのに、有償のツールを購入してしまっていないか?」といった点をもう一度見直してみると良いだろう。本稿でも幾つか例示したように、ひとり情シスにとっても扱いやすい機能やサービスは意外と多く存在している。多忙な業務の中でも少しずつ時間を取り、常に新しい知識を吸収する努力を続けることが大切といえる。
◇
次回は3つ目の課題、「課題3:クラウドを導入する価値が本当にあるか?の判断ができず 一方で個人向け無償クラウドの勝手な利用も不安である」を取り上げる。
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