ただしアプリ連係は未熟
「iPad版Microsoft Office」の完成度の高さで“PC不要論”が加速
iPadでMicrosoft Officeが使えるなら、もうクライアントPCは不要なのではないか――。iPad版Officeのリリースで、企業や組織の間に端末環境を再考する動きが現れつつある。
米Microsoftは2014年3月、米Appleのタブレット「iPad」版の「Microsoft Office」(以下、iPad版Office)をリリースした(国内未提供)。企業のIT担当者は、iPad版Officeが組織にもたらす価値を測り始めている。
「Microsoft Word for iPad」「Microsoft Excel for iPad」などのiPad版Officeは登場から1週間、米Appleの「App Store」で、ダウンロードされたアプリの上位を占め続けた。このランキングは、サードパーティーの代替製品ではなく、iPad版Officeへの積もりに積もった需要があったことを表している。
「リリースされる前から間違いなく、顧客の関心をつかんでいた」と、IT関連サービスプロバイダー米Tech Superpowersの創始者兼社長、マイケル・オゥ氏はiPad版Officeについて話す。
Tech Superpowersの社員は、早速iPad版Officeをダウンロードしてテストした。「アプリが巧みに仕上がっていることには驚かされた」とオゥ氏と述べ、「単にアプリを寄せ集めたのではなく、多くの開発リソースが費やされている」と評価する。
「従業員が個人的にiPad版Officeをダウンロードして、自身の生産性をどれくらい高めることができるのか、そして組織にどんな影響を与えるのかを検証していた」と明かすIT担当者もいる。
「私たちに調査を依頼する前に、最高情報責任者(CIO)は既にiPad版Officeに注目していた」と、米アラバマ州のガス会社、Alabama Gasのデスクトップシステム部門のスーパーバイザーであるデビッド・ドリッガーズ氏は語る。
確かに、伝統的なデスクトップPCおよびノートPCを軽量のタブレットで置き換えることは、多くの人にとって魅力的で興味をそそる提案だ。
「推測だが、本腰を入れてiPadだけを使うことになるかもしれない。OfficeがiPadで使えるようになった今、クライアントPCは何のために必要なのだろう?」とドリッガーズ氏は言う。
iPad版Officeのアプリ自体は無料だが、基本的にはファイルの閲覧だけが可能だ。完全な編集機能を使うには、オンラインサービス版のOfficeである「Office 365」の契約が必要になる。
ドリッガーズ氏は、今回の検証がうまく運べば、同氏の会社の経営幹部がOffice 365を契約して、iPad版Officeの使用を検討するはずだ、と強く感じている。
iPad版Officeは皆のためのものではない
しかしながら、誰もがiPad版Officeを必要とするわけではない。クライアントPC版Officeのよりディープな機能を使っている従業員は、iPad版Officeが本格的なMicrosoft Officeを置き換えるほど、十分に魅力的であるとは考えないだろう。
既に「Windows 8/8.1」搭載デバイスを導入して、クライアントPCでOfficeの使用を続ける例もある。
米テキサス州クリアクリーク独立学区で最高技術責任者(CTO)を務めるケビン・シュワルツ氏は、「当学区ではWindows 8タブレットを大量に採用したので、iPad版Officeの需要は全くない。ただし、iPadを採用している学区では、iPad版Officeに既に飛びついているに違いない」と語る。
タブレットは全般的にまだまだ魅力的であり、IT部門はエンドユーザーからのタブレット利用の要求に応える準備ができていなければならない。米調査会社IDCは、2014年のタブレット市場は全世界で2億6090万台に達すると予測する。
米ITサービスプロバイダーMCPcのモバイル・エンドユーザーコンピューティング担当CTO、アイラ・グロスマン氏は現在、米Citrix Systems製品で構築した既存の仮想環境にあるファイルを使って、iPad版Officeをテストしている。「iPad版Officeが仮想デスクトップインフラ(VDI)の世界にどんな影響を与えるのかに興味がある」(グロスマン氏)
全ての管理に取り組む
iPad版Officeのリリースに関連して、エンドユーザーをサポートしなければならないIT部門を悩ませているのが、アプリ間の連係やモバイルデバイス管理(MDM)などの問題だ。
IT担当者にとっては、「Googleフォーム」のような共同作業ツールや調査用の機能が重要になるだろう。iOS用Officeでは、こうした機能はまだ用意されていない。
前出MCPcのグロスマン氏は、「Microsoftのオンラインストレージ『OneDrive for Business』を使用していれば話は別だが」と前置きしつつ、「従業員にしてみたら、共同作業が十分にできない製品やサービスにお金を払うなんてがっかりだろう」と話す。
Microsoftが、「Salesforce CRM」などの企業向けWebアプリケーションを、iOS用Officeとどう連携させるについても市場は注目するだろう。
グロスマン氏は、「Microsoftは、クライアントPC用と同じレベルでiPad版Officeと他のアプリとの連係を進めるだろうか」と疑問と投げ掛け、「もし同レベルでの連係を実現したら、Appleのデバイスがさらに売れるという、Microsoftにとって困った状況になる」とも述べる。
IT部門はiPad版Officeの導入に先駆け、デバイスと企業のデータがどう管理されているかを調査する必要がある。最初のステップとして、OneDrive for Businessを詳しく調べ、Boxや他の企業向けオンラインストレージと比べて、どのような利点があるかを確認することだ。
「OneDrive for Businessは、Microsoftが発表したデバイス管理サービス群『Enterprise Mobility Suite』の導入に直結する重要なカギとなる。MicrosoftはOneDrive for Businessをうまく使い続けなければならない」(シュワルツ氏)
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