Microsoftのリリース戦略が破綻か
Office 2013はWindows 8のリリースに間に合わない?
Windows 8およびWindowsタブレットの競争力向上とビジネスiPadユーザーの取り込みの鍵になるとみられているOffice 2013。そのリリース時期が2013年になるという臆測が流れ始めている。
「Microsoft Office 2013」は、アプリケーションの配布方式とその利用形態が従来版と異なる。クラウド時代に対応した先端機能が盛り込まれるのだ。しかし米MicrosoftがOfficeのリリースに手間取るようなことがあれば、競合製品を退けるのは難しくなりそうだ。
Office 2013(コードネーム「Office 15」)では、簡素化されたユーザーインタフェース、機能の追加、Windows 8のタッチ機能サポートといった改善が盛り込まれるが、従来版との最大の違いは、ソーシャルコラボレーションとクラウドコンピューティングが果たす役割だ。
Microsoftは、自社のクラウドストレージとファイル同期用のアプリケーションであるSkyDriveをOffice 2013に「必須の要素」として位置付けている。Office 2013では、ドキュメントと各種設定をクラウドに保存することができ、各アプリケーションはWindows 7およびWindows 8のデスクトップにストリーム配信される。
「全体的には大きな変更はないが、SkyDriveとの連係は素晴らしい機能だ」と話すのは、米不動産調査会社United One Resourcesのネットワーク管理者、ジェフ・ナパースキー氏だ。
「電子メール、ドキュメント、その他のOffice関連データがクラウドベースのOffice製品に一元化されれば、従業員は会社のVPNにログインしなくても、ほとんど全ての業務をこなすことができる」と同氏は期待する。
Microsoftのスティーブ・バルマーCEOは2012年7月16日(米国時間)に開催された製品発表会で、「Office 2013は『Office as a Service』の実現に向けた最初の一歩である」と述べた。この移行の一環として、Office 2013の採用を促すためのプロダクティビティアプリケーションとして、Officeのクラウド版であるOffice 365を全面的に推進するという。同発表会では、Officeのローカルインストール版のリリースについて、ほとんど言及がなかった。ローカルインストール版は今後も提供される予定だが、「軽量版」のみの販売となる。
Office 2013+Windows 8――最強の組み合わせ?
Microsoftは、Google Appsや米Appleの端末向けにサードパーティーが提供しているOfficeアプリケーションとの競争に直面している。Windows 8と新しいクラウドベースのOfficeが最強の組み合わせになるかどうかは、今のところ不明だ。
米独立系調査会社Directions on Microsoftのアナリスト、ウェス・ミラー氏は「新OfficeはWindows 8の機能を最大限に利用するよう改良されている。iPadの追撃をかわすために、両製品はこれからチームとして戦うことになる」と話す。
米調査会社Gartnerによると、Officeは「業務用プロダクティビティソフトウェア」として90%以上の市場シェアがあり、企業の電子メールとしては80%以上のシェアがあるという。
しかしここ数年、米GoogleがOfficeの売り上げに影響を及ぼすようになってきた。Gartnerでは、新たな企業ユーザーの3分の1から2分の1がいずれ、Microsoftの主力ソフトウェアからGoogleなどのSaaS(Software as a Service)アプリケーションに移行するものと予想している。
この競争では、Office 2013のリリース時期が重要な意味を持つことになりそうだ。
Microsoftは、Windows 8と「Surface」タブレットを2012年10月にリリースする予定だ。Appleも同月に「iPhone 5」のリリースを予定しているとうわさされている。Microsoftは当初、2012年秋の時点ではWindows端末に対応したOffice 2013のみを投入し、iPadとiPhone向けのバージョンは2013年初めに提供することにより、Windows 8とSurfaceの競争力を高めるという方針だった(関連記事:10月リリース予定のOffice 15、iOS/Android OS対応版は戦略変更?)。
しかしMicrosoftはOffice 2013のリリース日程を明らかにしておらず、同社の会見に参加した情報筋によると、Office 2013が2012年秋までに製造工程に回れば、リリースは2013年初頭になる見通しだという。
Office 2013のリリースが2013年1~3月期にずれ込んだ場合、しかもiPad向けバージョンはWindowsタブレット版から数カ月後にリリースするという方針をMicrosoftが変えないのであれば、市場をリードするiPad上にOffice 2013が登場するのは2014年になる可能性がある。
業界観測筋によると、リリース時期が先送りされることは取り返しのつかないミスになるかもしれないという。企業のIT担当者がOffice 2013にアップグレードする必要性がないと判断し、Googleのエンタープライズアプリケーションなどの競合製品に引き付けられる、あるいは許容できる代替製品が既存のApple端末上で利用できることに気付く可能性があるからだ。
既に多くのユーザーが、Microsoft、Google、Appleの製品を併用しているのが現実だ。米調査会社Altimeter Groupの創業者であるシャーリーン・リー氏は「MacBook上でGoogle Chromeを使ってOffice 365 Home Premiumを試すという皮肉な組み合わせを楽しんでいる」と話す。
Microsoftの計画に詳しい情報筋によると、Office 365の各バージョンの価格は月額10~22ドルに設定される予定だ。この価格はリリース時点での市場の状況によって変わる可能性があるという。
クラウドベースのOffice 365のサブスクリプションには、新機能が登場した時点での無償アップデートも含まれる。こういった無償アップグレードサービスは、各種SaaS型アプリケーションでは既に標準となっている。
現在、中小企業向けに提供されている軽量版Office 365は年額48ドルと低価格に設定されている。これは、1ユーザーに付き年額50ドルというGoogleのエンタープライズアプリケーションに対抗できる価格だ。しかしOffice 365がOfficeのフル機能版になることで、この状況が変化することになりそうだ。
また、Windows RTが動作するタブレットPCおよびWindows Phone端末にOffice 2013がバンドルされる見込みだ。ただし、含まれるのはWord、Excel、PowerPoint、OneNoteのみとなる。Exchange、SharePoint、Project、Lyncのサーバ専用版も販売される予定で、これについてはクラウド上でのホスティング、ローカルサーバ、あるいは両者の組み合わせというライセンス体系が用意される。
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