タブレットが企業に本格進出の兆し
メイン用途はWeb閲覧? 米調査の企業58%が1年以内にタブレットを導入予定
米TechTargetが実施した会員調査によると、多数の企業がタブレットやスマートフォンへの投資を検討。将来的にノートPCを代替する端末として、信頼性の高いビジネスアプリを求めている。
タブレット端末がITの領域に進出したのは明らかだ。米TechTargetが読者を対象に実施した年次調査でも、タブレットの成長と普及はほとんど驚異的といえる状況が浮かび上がった。組織のIT部門は、将来的にノートPCを代替する端末として利用する可能性を視野に入れ、積極的にタブレットに先行投資し、信頼性の高いビジネスアプリケーションを探し求めている。
2011年時点でタブレット市場の成長をけん引しているのは、個人ユーザーの利用や一部の企業での実験的な導入だ。しかし、IT管理者の多くはタブレット導入を真剣に検討しており、早期に導入を拡大する計画を立てている。調査に回答した読者の58%は、「自社でのタブレットへの投資が向こう12カ月で増える見込み」と答えたのに対し、「今後1年間はタブレットに支出する予定はない」と答えたのは14%にすぎなかった。「今後1年間で最も投資が拡大するモバイル技術あるいは端末は何か」という質問に対しては、回答者の40%がタブレットを選んだ。「スマートフォンへの投資が最も拡大する見込み」という回答も同率でトップに並んだ。この数字はノートPCへの投資を拡大するとした回答者の2倍に上る。
「タブレット端末の購入に際してどのベンダーを検討するか」という質問に対する回答では、米Appleが72%と他社を大きく引き離し、米Dell(29%)、米Hewlett-Packard(HP)(25%)、米Motorola(22%)がそれに続いた。カナダのResearch in Motion(RIM)は18%の得票を獲得し、UC(統合コミュニケーション)用のタブレットを製造している米Cisco Systemsと米Avayaはそれぞれ12%と3%だった。
Appleはタブレット市場だけでなく、米TechTarget調査のスマートフォン部門にも顔を出している。これには、早期に端末を市場に投入したこと、広範なアプリケーションがそろっていること、CiscoやAvayaが製造する企業向け端末と比べると安価であることなど、幾つかの要因が寄与していると考えられる。調査の回答者は、タブレットベンダーの選定に影響する要素として上から順に、コスト、エンドユーザーレベルでの使いやすさ、OSの柔軟性を挙げ、iPadはコンシューマー向け製品ではあるが、これらの長所を備えているとしている。回答者はコメント欄で、メインストリーム製品市場ではセキュリティ、ビジネス対応アプリケーション、相互運用性の分野に弱点があると指摘しながらも、これらの問題の解決の見通しについては楽観的だ。
市場が拡大するタブレットの利用形態は多岐にわたる。今回の調査では、タブレットを大型スマートフォンとして利用するという回答から、独自の用途にタブレットを配備するといったものまで、実にさまざまな利用形態が読者から報告された。医療分野でも多数の利用例が見受けられる。米Methodist Le Bonheur Healthcareでネットワークマネジャーを務めるジョー・ベーリング氏がiPadを選んだのは、サイズがちょうど適当だったことと、主要な用途となる電子カルテ(EMR)に対応していたことだ。「院内回診ではタブレットの方がはるかに使いやすい」と同氏は語る。「小さいフォームファクターなので患者と対話したり、EMRアプリケーションに記録したりするのも簡単だ」
もう1人の読者、アンソニー・アレン氏も、特定の用途を想定してタブレットを導入しようとしている。同氏は、運転シミュレーションシステムを開発する米Doron Precision Systemsでシステム管理者を務める。同社では、予定表やSkypeを含むUCアプリケーションをタブレットで処理する他、AS400システム上で稼働しているCRMアプリケーションと連係する新しいタブレット用アプリケーションを運用する予定だという。
しかし今回の調査の結果を総合すれば、タブレット用アプリケーションの現在の利用形態および向こう24カ月の導入目的は、スマートフォン用アプリケーションの場合とあまり変わらない。既に利用中のアプリケーションで最も多かったのが、電子メール、インターネットアクセス、そしてワープロなどのオフィス系アプリケーションだった。読者が今後導入する可能性が高いと答えたのは、UC(21%)、個別コラボレーションアプリケーション(IM、SharePoint、ワークフロー用のアプリケーションなど)(19%)、仮想デスクトップとの連係およびWebベースのアプリケーション(いずれも18%)だった。
企業向けタブレットアプリケーションへのニーズ
回答者が答えた現在のタブレットの利用目的と、彼らが望む2年後の利用形態との間には大きなギャップが存在する。米Alpine BankのITスタッフであるジェフ・モジンゴ氏によると、標準的なソフトウェアに加え、同社の主要サードパーティープロバイダーのアプリケーションをタブレットで利用しているが、2011年時点では「当社のユーザーにとって、スマートフォンとタブレットは外見、すなわち画面の大きさが異なるだけだ」という。
モジンゴ氏のようなITプロフェッショナルがタブレット端末の利用価値を高める上で鍵となるのは、IT環境全体で安全かつ確実に運用可能なエンタープライズクラスのアプリケーションを開発することだ。米Southwest Washington Medical Centerでセキュリティコンプライアンスを担当するクリストファー・ペイドリン氏は「補完的コントロール機能を備えたサービスだけを許可している。この制約に不満を抱く従業員もいる。大多数のアプリケーションプロバイダーは、まだ自社のアプリケーションをタブレット対応にしていない」と話す。
タブレットはノートPCをリプレースするか
ビジネス機能という点では、タブレットがエンタープライズコンピューティング用PCにまだまだ追い付けないのは明らかだ。しかし今回の調査結果が示すように、タブレットとスマートフォンへの投資はノートPCの2倍のペースで伸びているとすれば、伝統的なPCの時代の終わりが見えてきたということなのだろうか。しかしそれは一部のシナリオにおいてのみ見られる現象であるようだ。
今回の読者調査では、「向こう24カ月間でデスクトップあるいはノートPCを代替端末でリプレースする可能性がある」と答えたのは回答者の28%だった。このうち60%は、代替端末としてタブレットを選ぶとしている。それ以外の端末への関心は比較的低く、Netbookを検討しているという回答は20%、モバイルワークステーションは17%だった。
また、「タブレットはノートPCやデスクトップへの追加的なデバイスとして、インターネットやパーソナライズされたアプリケーションを頻繁に使う必要があるユーザーに供与される可能性が高い」と指摘した読者もいる。ペイドリン氏が勤務する医療機関では、タブレットがノートPCに取って代わることはないという。「ノートPCは今後も重要な役割を果たす。タブレットは一部の“閲覧中心型”機能用として導入する」と同氏は語る。
米BB&TでIT戦略と業務連携を担当するデビッド・バリック副社長は、端末の数の削減に期待している。「まだリプレースするつもりはない」と同氏は話す。「2011年時点では、外回りの営業などモバイル性が高い業務でノートPCを補完する端末としてラップトップをサポートすることを考えている。これらの業務の一部はラップトップでリプレースできるかもしれないが、まだその方針を進めていない」
調査概要:米TechTarget Networking編集部によるSearchMobileComputing.com会員を対象とした年次調査は2011年5月に終了した。製造、政府関連、金融、教育、医療などの業種を中心とした360人余りのITプロフェッショナルが回答した。回答者の25%は中間レベルのITマネジャー。その他の職種としては、ネットワーク担当アーキテクト、エンジニアまたは管理者(12%)、セキュリティ管理者(12%)、上級ITマネジャー(11%)、業務部門の幹部、マネジャーあるいはスタッフ(9%)など。
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