製品選定のための「データ管理/保護」コラム【第1回】
「フルバックアップが終わらない」を解決する2つの方法(1/2 ページ)
バックアップ容量が増え続ける中、手動運用でカバーするには無理がある。そこで検討したいのがフルバックアップを不要にする2つのバックアップ方法だ。データ種類別のバックアップ方法のベストプラクティスも紹介。
TechTargetジャパンが2017年3月に実施した「企業のバックアップ/リカバリー環境に関するアンケート調査」によれば、「バックアップ/リカバリーの重要項目」と「バックアップ/リカバリーの不満項目」を尋ねた回答の上位に「バックアップ時間」が挙がった。この背景には、企業システムのバックアップ容量の増大や、夜間にフルバックアップが終わらないといった現場の課題が考えられる。なぜバックアップに時間がかかってしまうのか、また、どのような対策があるのか。今回は、バックアップ時間を考慮したバックアップ設計の見直しについて解説する。
なぜバックアップに時間を要するのか?
通常のバックアップは、平日の「増分バックアップ」と週末の「フルバックアップ」の組み合わせで運用する。「増分バックアップ」は前日のバックアップからの変更データを取得し、「フルバックアップ」はバックアップ対象の全データを取得する。
バックアップ対象の総容量が大きいと、週末のフルバックアップが想定時間内に取得し切れず、バックアップ運用が破綻してしまう。この課題に対する従来の運用の工夫としては、「フルバックアップの頻度を減らし、1日で実施するフルバックアップの対象システム数を減らす」がある。例えば毎週、全システムでフルバックアップを取得する場合と、週次のフルバックアップを月次にして、かつシステムごとにフルバックアップのタイミングをずらした場合を図式化すると、下記の図1になる。
図1の左と右を比較すると、右の方が左に比べて1日で取得するバックアップ容量が減っていることが分かる。「フルバックアップが終わらない」という課題は解決できるが、実は弊害も大きい。フルバックアップを取得した日付がシステムごとに異なるため、複数システムを同一の時点にリストアするための手順が複雑になる。またバックアップ対象のシステム数や容量が増加したときに、バックアップスケジュールの調整や、バックアップサーバの増強を都度検討する必要がある。
バックアップ対象の総容量が爆発的に増加している現在、手動での運用でカバーするには無理がある。そこで検討したいのが「フルバックアップが不要になるバックアップ方法」であり、下記の2つがある。
- ストレージのバックアップ機能(スナップショット、クローン、レプリケーション)による方法
- バックアップソフト/アプライアンスの「永久増分バックアップ」による方法
以降で、動作概要、注意点、向いているデータ種類などを詳しく解説する。
ストレージのバックアップ機能(スナップショット、クローン、レプリケーション)
1つ目の方法がストレージのバックアップ機能(スナップショット、クローン、レプリケーション)である。ハードウェアベースのストレージ、SDS(Software Defined Storage)や、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)のバックアップ機能もこの方法に分類できる。
「スナップショット」は本番ボリュームを使用して、ある時点の仮想的なボリュームを作成する機能である。そのため、ボリュームの総容量に左右されず、短時間でスナップショットを作成することができる。
「クローン」「レプリケーション」は本番ボリュームと同等サイズを持つ物理的に異なるボリュームに、本番ボリュームのある時点のデータを完全に複製して維持する仕組みである。一般的にストレージ筐体内で複製することをクローン、ストレージ筐体間で複製することをレプリケーションと呼ぶ。初回の複製はボリュームの全データをコピーするが、2回目以降は増分データのコピーになるため、ボリュームの総容量に所要時間が影響しにくい。
ただし下記が注意・検討事項である。
- ストレージ製品ごとの機能/操作方式の違い
- データの整合性
- リストア単位、リストア時間
- ストレージ筐体外へのデータ複製の検討
ストレージ製品ごとの機能/操作方法の違い
ストレージ製品ごとに機能や操作方法が異なるため、ストレージ製品を選ぶ際に、バックアップの要件も同時に検討する必要がある。
データの整合性
特にハイパーバイザーやアプリケーションで使用しているストレージの場合は、ストレージ機能のスナップショットやクローンを実行する前に、データの整合性を確保する必要がある。具体的には、仮想マシンのスナップショットを実行する、データベースをバックアップモードに設定する、などである。ストレージベンダーがソフトウェアを提供しているので、実績を確認した上で使用を検討してほしい。
データの整合性確保に利用できる主要製品は、「NetApp SnapManager」「Dell EMC AppSync」「HPE Recovery Manager Central」などだ。
リストア単位、リストア時間
ストレージの機能のバックアップ/リストア単位は、基本的にLU(論理ユニット《注1》)やボリュームである。ストレージ機種によっては、ボリューム内のファイル単位でリストアが可能だ。それにより、ファイルサーバ内のファイル単位でリストアをしたり、ハイパーバイザーが使用しているストレージから仮想マシン単位でリストアをしたりできる。ストレージベンダーが提供するソフトの機能を確認してほしい。
※注1 ストレージのデータ領域を論理的に分けたディスクスペースのことで、サーバがアクセスする単位。SANストレージの場合LUと呼ぶ。LUとボリュームは、ほぼ同義であるが、NASの場合はLUとは呼ばず、ボリュームと呼ぶ。
リストア時間は、本番ボリュームが全損していない場合は、増分データのコピーでリストアができる。本番ボリュームが全損した場合も、クローンやレプリケーションのボリュームをマウントするとシステムから利用可能なので、大容量のデータを短時間で復旧させることができる。
ストレージ筐体外へのデータ複製の検討
本番ストレージ内でスナップショットやクローンを取得、保管する方法では、データ保護レベルは十分とはいえない。本番ストレージに障害が発生した際に、データが担保されないからだ。バックアップデータの保護レベルを向上させるためには、バックアップサーバ経由で外部の媒体に保管するか、別のストレージ筐体にレプリケーションをする必要がある。
ストレージ筐体間でレプリケーションをするためには、同一機種のストレージが必要になる。また本番ストレージから重複排除ストレージへ複製できる製品もある。
- 「NetApp FAS/All Flash FAS」から「NetApp AltaVault」へ
- バックアップ製品「HPE Recovery Manager Central」によって「3PAR StoreServ」から「HPE StoreOnce」へ
- バックアップ製品「Dell EMC ProtectPoint」によって「XtremIO」から「Data Domain」へ
などである。特にNetApp AltaVaultは、NetApp FASから直接レプリケーションができることに加え、バックアップソフトの保存先にすることができる。「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)や「Microsoft Azure Storage」などのクラウドストレージへ重複排除したまま複製できるなど、実装において抜きんでている。
バックアップサーバからSAN(ストレージエリアネットワーク)ストレージのスナップショットやクローンをマウントしてバックアップしたい場合は、バックアップ対象のファイルシステムに注意が必要である。「VMware vSphere」のVMFS(Virtual Machine File System)、「Oracle Database」のOracle ASM(Oracle Automatic Storage Management)は、バックアップサーバからマウントできないので注意してほしい。マウントできなくても技術的にはRAWデバイスとしてバックアップできるが、LUを丸ごとバックアップすることになり、取得容量が大きくなるので推奨しない。複数世代を保持するためには、筐体内にクローン領域を確保したり、レプリケーション先に別筐体を準備したりすることが必要だ。
NAS(ネットワーク接続型ストレージ)の場合、ファイルシステムをNASが持つことになり、バックアップサーバからNFSまたはCIFSでマウントできるが、vSphereのVMDKファイル、Oracle Databaseのデータベースファイルを常にフルバックアップをすることになり、取得容量が大きくなることに注意してほしい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[キヤノンマーケティングジャパン株式会社] マンガで学ぶXDR/MDRのメリット、中小企業のセキュリティ強化になぜ有効か? -
市場調査・トレンド
[キヤノンマーケティングジャパン株式会社] 有識者が語る、中堅中小企業に求められる最新のサイバーセキュリティ対策とは -
製品資料
[キヤノンマーケティングジャパン株式会社] マンガで解説:情シスの負担を減らす「MDRサービスのインシデント対応」の中身 -
市場調査・トレンド
[SANS Training Japan 合同会社] “知識”では守れない AI時代に問われる実戦力の身に付け方 -
製品資料
[株式会社イトーキ] 会議室不足を解決する「AI×データ」活用術
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
年収が増えても幸せになれない 給与増でエンジニアが直面する「幸福度の壁」
-
5
SAPやOracleが警戒する「ERPの土管化」 汎用AIとの主導権争いが激化
-
6
Microsoft 365移行で露呈した標準機能の限界 地方銀行は上長承認や「脱PPAP」をどう実現?
-
7
“クラウド安全神話”の崩壊 AWS、Azure障害で情シスが直面した「SLAの死角」
-
8
Microsoft 365導入後も稟議は「Excelをメールで回覧」 承認が止まる理由
-
9
米国防総省で300万人分の個人情報が流出 その「意外な原因」と教訓
-
10
突然“給与が払えない”を回避する「給与システムのDR計画」には何が必要?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
3
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
4
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
5
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
6
SASE選定は「見極め力」で大きな差――本当に必要な製品を選ぶための6つの視点
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
9
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー