ビッグデータは内部と外部の使い分けが重要
マイクロソフトのビッグデータ対応、明かされたSQL Server 2012の新機能
2012年上半期に提供を開始する「SQL Server 2012」。マイクロソフトのビッグデータ対応戦略とともに、SQL Server 2012の新機能を紹介する。
日本マイクロソフトは2011年11月15日、Microsoft SQL Server(関連記事:「Microsoft SQL Server 2008 R2」+「Excel 2010」が目指すセルフサービスBI)の次期バージョン「SQL Server 2012」(コードネーム「Denali」)および、ビッグデータ対応のロードマップをプレスカンファレンスで発表した。SQL Server 2012は2012年上半期(1~6月)に提供を開始する。
マイクロソフトが考えるビッグデータ活用とは
ビッグデータ活用に注目が集まる理由を、日本マイクロソフト クラウド&アプリケーション プラットフォーム製品部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの斎藤泰行氏は、「国際情勢の変化、ビジネスのグローバル化、消費者ニーズの多様化、ソーシャルネットワークの普及、急激な円高などに起因して、刻々と変化するビジネス状況に迅速に対応する必要性が求められている。それに加えてリアルタイムに顧客のニーズを捉えることで、ビジネス成長と競争力を強化したいからから」と説明する。
マイクロソフトのビッグデータ対応ロードマップ
マイクロソフトは、企業がビッグデータをビジネスに生かすために包括的な製品群を提供する。既にSQL Serverおよびデータウェアハウス(DWH)アプライアンス「SQL Server Parallel Data Warehouse」用のHadoopコネクタを無償提供している。さらに、HadoopをベースとしたWindows ServerおよびWindows Azure向けのディストリビューションを2012年中に提供することを発表、Hadoopのエンタープライズ領域における利用を推進するとしている。
しかし、SNSやセンサーデータといった社外のビッグデータを処理することに関しては、「昨今は『ビッグデータをいかに処理するか』というテクノロジーの話ばかりが先行しているが、残念ながら国内ではまだその状況ではないと思う」と斎藤氏は指摘する。「社外のビッグデータを活用するためには、まずは企業内に蓄積された多種多様なデータをリアルタイムかつ粒度細かく分析できる環境が礎になる」。それを踏まえて、SQL Server 2012ではビッグデータ処理機能と処理したデータを活用する機能をトータル提供する、「絵に描いた餅でないリアルなソリューション」に進化したとしている。以下でその詳細を見ていこう。
ユーザーニーズに応えて3つのエディションラインアップに変更
SQL Server 2008 R2では、Datacenter、Enterprise、Standard、Workgroup、Web、Developerという6種類のエディションを展開している。より細かいワークロードや個々への最適化により、ユーザー企業がニーズに合ったエディションを選択できることを主眼にラインアップをそろえてきたが、ユーザー企業からは「どれを選べばいいか分からない」という声も少なくなかったという。そこでSQL Server 2012では、エディションを以下の3つに単純化した。
- Standard Edition
- Business Intelligence Edition
- Enterprise Edition
Standard Edition
「Standard Edition」は、部門用アプリケーションや部門用でのビジネスインテリジェンス(BI)プロジェクトなど、比較的小規模な環境で使えるエントリーモデル。
Business Intelligence Edition
SQL Server 2012から新規で提供する「Business Intelligence Edition」は、データベースコンポーネントとしてのStandard Editionの全ての機能と共に、今回新しく提供するBIツール「PowerView」を搭載。全社向けリポーティングや分析環境のためのエディションとして位置付けられている。
SQL Serverは従来、データベースエンジンの中にBI機能を包含して提供していることをバリュープロポジションとして強調してきた。しかし、「残念ながらまだまだSQL ServerにBI機能が含まれているという認知が少ないのは事実。Business Intelligence Editionを投入することで、BI機能が包含されていることをあらためて市場に訴求するとともに、今までにないBI環境をブレイクスルーする機能を搭載している」という。
Enterprise Edition
最上位エディションとなる「Enterprise Edition」は、全てのSQL Server 2012の機能を包含している。基幹業務システムやオンライン株取引、コアバンキングなどのミッションクリティカルなアプリケーションにも対応できるよう、可用性を高める「SQL Server AlwaysOn」などの機能や、カラムストアインデックスや圧縮などの効果的なデータ格納手法を備える。
| エディション | Enterprise Edition | Business Intelligence Edition | Standard Edition |
|---|---|---|---|
| サポートする最大CPUコア数 | OSがサポートする最大コア数 | 16コア | 16コア |
| 基本的なOLTP機能 | ○ | ○ | ○ |
| プログラミングに関する機能 (T-SQL、Spatial データ型のサポート、FileTable) |
○ | ○ | ○ |
| 管理に関する機能 (SQL Server Management Studio、ポリシー ベースの管理) |
○ | ○ | ○ |
| 基本的なリポーティングと分析機能 | ○ | ○ | ○ |
| セルフサービスビジネスインテリジェンス (PowerView、PowerPivot for SharePoint) |
○ | ○ | - |
| エンタープライズデータ管理 (Data Quality Service、Master Data Service) |
○ | ○ | - |
| インメモリ型OLAP分析エンジン | ○ | ○ | - |
| DWH向け機能 (カラムストアインデックス、パーティショニング) |
○ | - | - |
| アドバンスドセキュリティ(監査、暗号化) | ○ | - | - |
| 高可用性(SQL Server AlwaysOn) | ○ | - | - |
高可用性とパフォーマンスを提供する「SQL Server AlwaysOn」
SQL Server 2012は、ミッションクリティカルなシステムに対応することで幅広い企業システムでの利用を想定している。その象徴となる機能が、障害対応、災害対策、負荷分散を1つの機能として提供する「SQL Server AlwaysOn」だ。
「Windows Serverフェイルオーバークラスタリングとデータベースミラーリング、ログシップなど複数の機能を融合した」というSQL Server ALwaysOnにより、ユーザー企業は、遠隔地のデータセンターへのセカンダリ作成や非同期複製設定をGUIで簡単に行えるなど、分析環境の災害対策構成を容易に実現できるという。
また、同期・非同期モードの複製処理や自動・手動フェイルオーバーで、最大4台のセカンダリシステムへの複製が可能。ログ転送時にデータを圧縮、暗号化した状態で複製を実行したり、プライマリ上のデータ破損時にセカンダリを利用して自動修復するなど、高速かつ安全な複製を可能にしている。
ビッグデータを高速処理するカラムストアインデックス
SQL Server 2012では、カラムストアインデックス、圧縮技術を採用している。PowerPivotのインメモリカラムベースエンジンを応用し、SQL Server 2012のデータベースエンジンに実装した。
列単位でインデックスを格納し、同一データ型を高度に圧縮することで、日次集計や月次集計などの参照処理を行うDWHのパフォーマンスを向上させることができる。通常のデータベースは特定の列だけを参照したい場合にも行全体を読み込む必要がある。その点カラムストアインデックスは、列単位にまとめてデータを格納することで、参照時の不要なI/Oを削減することができる(関連記事:列単位格納でビッグデータの高速処理を実現するカラム型データベース)。
ビッグデータ処理後のDWHのデータ品質を向上する「Data Quality Services」
データクレンジングや名寄せなどの処理サービスを提供する「Data Quality Services」は、SQL Server 2008 R2のマスターデータサービスを補完する機能で、散在するマスターデータからDWHに統合したデータの品質を改善する。名前や文字列の長さなどをチェックし、正規表現に修正するためのルールを定義することができる。
Analysis Servicesを強化したインメモリTabular型OLAP分析エンジン
従来、SQL Serverには多次元OLAP処理を行うための機能「Analysis Services」が搭載されていた。SQL Server 2012では、Analysis Servicesに加えてインメモリTabular型OLAP分析エンジンを搭載している。「BI Semantic Model」と呼ばれる機能によりOLAP用データベースの作成が容易になるとともに、ディスクアクセスなくサーバのメモリ内に常駐して稼働するため、高速処理が可能だとしている。
「見える化」を「見せる化」に変えるBI
セルフサービスBIツール「PowerView」は、現場社員の利用を想定したWebベースのリポーティングツールだ。マイクロソフトはこれまで、「“使い勝手が悪くて高い”というBIのイメージを、“誰もが使えて安い”というイメージにしたい」と主張してきた。それをさらに加速するために「データを見える化することから、他人に対して“見せる”ことを主眼としたUI」を目指したという。
PowerViewはクエリやリポーティングに関する専門知識がなくてもデータを操作することができ、クリック操作でドリルダウンやスライス、カード化、タイル、グラフなどのリポート作成が可能だ。その使い勝手はマイクロソフトのWebサイトで実際に体験できる。
斎藤氏はこれまでの見える化の作業の問題点を、「データベースの中身を可視化し、結果の中から気付きを得たらそれをPowerPointに貼り付けて会議で共有する。しかし、もし自分が分析していない内容を会議で突っ込まれたとしたら、そこで会議が終わってしまう。これこそが1人が一生懸命見える化している弊害だ」と指摘する。「PowerViewはビジネスパーソンの文房具ともいえるWebブラウザとExcelで分析の内容を皆に見せる化し、皆の気付きを取り込みながら分析を進めていくことができるツールだ」
ビッグデータ活用は外部と内部のデータの使い分けが必要
冒頭で述べた通りビッグデータ活用についてマイクロソフトは、まずは企業活動で発生し社内に蓄積された多種多様なデータを活用できることが重要だと主張する。その上でSNSやセンサー、デバイスから生成されるリアルタイムデータをハンドルできる環境を整えることがビッグデータ活用の道筋だという。
「例えば社内の売り上げ分析。年次から四半期、四半期から月次に変わってきているとはいえ、日次、そして超リアルタイムに今現在の売り上げ分析ができる環境を整えられている企業がどれほどあるだろうか」。カテゴリ分析から単品分析といったように、分析対象の粒度を細かくしていくと必然的にデータ量は増えていく。これが企業内のビッグデータであり、それらを企業外のビッグデータと組み合わせることでこれまで見えなかったものが見えてくるという。
「まずは社内のデータ活用から始めるべきで、SNSのデータ、センサーや携帯電話のトランザクションから上がってくる流動データを生かしていくのが次のフェーズ。社内のデータを活用できる環境を整えた上で、日々刻々と変わる消費者ニーズをハンドルしていく。外部のビッグデータだけを見て何が起きているのかを見ようとしても、例えばTwitterの情報が本当にリアリティーのあるものなのかを見分ける術がない。確たる情報なくして判断はできないため、どうしても外部と内部のデータの使い分けが必要だ」
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