大量データ時代の分析インフラ構築法【後編】
社内と社外、ビッグデータ分析基盤を置くべきはどっち?
データ分析基盤は、社内の仮想環境に置くこともできるが、社外のIaaS上に構築する方法もある。それぞれのメリット、デメリットを考えるとともに今後のデータ分析基盤の在り方を占う。
インフラの観点では、ビッグデータ活用をどのような形でサポートするのが最適か――前編『ビッグデータ分析、Hadoop活用の意外な落とし穴』では、多くの企業でシステムの仮想統合が進む中、Hadoopが専用の物理インフラを求める問題点と、その解決策としてHadoopクラスタを既存の仮想プラットフォーム上で迅速に展開できるテクノロジ、「仮想Hadoopクラスタ」を紹介した。
だが一部のアナリストは、「ビッグデータインフラとして仮想化中心のソリューションを使うことには特有の課題がある」と指摘している。
Hadoopの仮想化に伴う課題
「仮想Hadoopは宣伝通りに動くかもしれない。だが、ライセンシングとシステムに掛かるコストの面で、企業のビッグデータプロジェクトにおいてはコモディティ型のスケールアウトDASを採用した方が安上がりかもしれない。また、仮想環境の管理技術は仮想化されたビッグデータクラスタの管理にはまだ最適とはいえない」と語るのは、コンサルティングファームの米Taneja Group シニアアナリスト、ジェフ・ボールズ氏だ。
「仮想化ベンダーが、あらゆるものを仮想化できるソリューションを提供するようになっている以上、今後は既存環境とビッグデータ環境が仮想プラットフォーム上にある程度集約されることになるだろう。しかし、企業はビッグデータクラスタをメインのインフラプールに配置することを必ずしも望まないはずだ」
一方、米Evaluator Groupのシニアパートナー、ジョン・ウェブスター氏も次のように語る。
「純粋主義者は、ファイルシステムを別のものに置き換えたり、EMC Isilonのようなものを使ったりするとコストがかさみすぎるというはずだ。また、Hadoopノードとは別にスケールアウトストレージを使うと、クラスタに新たなネットワークを追加することになり、システムの複雑性が増してしまう」
その結果、一部の企業が検討しているのは、データセンターで独立したビッグデータインフラを展開する代わりに、外部のパブリッククラウドを利用して、インフラの分離問題を回避する方法だという。このアプローチには、データセットや分析結果をビジネスや研究のパートナーと共有できるというおまけもある。米Medio Systemsや米Amazon Web Servicesなどのクラウドサービスプロバイダーは、そうしたビッグデータサービスを何年も前から提供している。
しかし、「クラウドでビッグデータアナリティクスを行う場合、企業がIaaSを利用する際に懸念している、コンプライアンスやガバナンスの問題に直面しかねない」と指摘するアナリストもいる。また、社内インフラを使わないことは、IT部門に話を通さないことにつながるかもしれない。「そうなれば、IT部門が関知しない“シャドウIT”がパブリッククラウドベンダーのインフラ上に展開されることになる」とウェブスター氏は警鐘を鳴らす。
「パブリッククラウドがIT部門の承認を得て使われている場合でも、誰がデータに責任を持つのかが問題だ。預けるデータが何らかのコンプライアンスの対象である場合、サービスプロバイダーが責任を持ってきちんと保護してくれるのか疑問が残る」(ウェブスター氏)
ビッグデータインフラの将来
米Intelのような企業は、ビッグデータとともに使われるスケールアウト型インフラと、この10年間にわたって広く利用されてきた集中型の仮想インフラは、将来的にはSoftware Defined Data Centerに集約されるだろうと予想している。
Intelのストレージ部門マーケティングディレクター、クリスティー・ライス氏は、「今持っていながら利用していないデータに大きな価値が眠っていることを、理解している企業はますます増えている。いずれは多くの企業が『事業を存続したければ、拡大したければ、データの価値を理解することが必須だ』と考えるようになるだろう」と話す。
ライス氏は、「長期的には、Software Defined Data Centerがハードウェアをコモディティ化し、集中型のストレージシステムとスケールアウトDASの違いは問題ではなくなるだろう」と予想している。コンピューティング、ネットワーキング、ストレージといった用途にかかわらず、ソフトウェアによってサーバのワークロードがオンデマンドで変わるようになるという。
「ソリッドステートドライブ(SSD)の利用もますます進むだろう。リアルタイムアナリティクスが注目されていることがその背景だ。ストレージメディアに対するデータの入出力が高速に行えることが、一段と重要になっている」(ライス氏)
Taneja Groupのボールズ氏も、「アナリティクスを行おうという機運が高まっており、アナリティクスソリューションの展開もこれまでになく容易になっている。そのおかげで門戸が広がり、全く未経験の企業でも着実に取り組めるようになっている」と指摘する。
「今のところ、ビッグデータプロジェクトに取り組む企業はごく一部にとどまっており、全体の3~5%程度と推計している。しかし大企業から中小企業へビッグデータ活用のすそ野は着実に広がりつつある。テクノロジの進展を受けて、1年から1年半後にこの割合は倍増することだろう」
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