SSDの恩恵を享受するために必要なこと
もはやぜいたく品ではないSSD、効果を上げる選び方とは
HDDの出荷台数が減少する一方で、SSDの出荷台数は着実に増加し、ユーザーの利用も急速に拡大している。その効果的な利用方法を伝授しよう。
資金に余裕があるデータセンターにとって、ソリッドステートライブ(SSD)技術はもはやぜいたく品ではなくなった。SSDの低価格化が進むとともに、さまざまなフォームファクターが登場したことで配備の選択肢も広がっている。
ソリッドステートストレージ技術は、コンシューマー向けの電子機器に革命をもたらした。SSDは携帯端末やタブレットPCなど、ほとんどあらゆるタイプの携帯型コンシューマー機器の回転式ディスクドライブに取って代わるとともに、薄型ノートPCにも標準で装備されるようになってきた。そして今、ソリッドステートストレージの恩恵と魅力は、データセンターにも徐々に浸透しつつある。
NAND型フラッシュSSDと書き込み回数
一部のタイプのHDDの出荷台数が減少する一方で、SSDの出荷台数は着実に増加しており、エンタープライズアプリケーションでのSSDの利用も急速に拡大している。ソリッドステートストレージが適しているのは、データベースアプリケーション、仮想サーバ、仮想デスクトップ環境など、以下のいずれかの指標で高いパフォーマンスを必要とするワークロードである。
- トランザクションパフォーマンス――1秒間当たりのI/O(IOPS)
- 総合スループットあるいは帯域――1秒間当たりのMバイト(Mbps)
- I/O処理のラウンドトリップ時間――遅延(ミリ秒またはマイクロ秒)
HDDと同様、SSDも2つの基本的なカテゴリーに分類できる。エンタープライズとクライアントだ。エンタープライズ向けSSDは(エンタープライズ向けHDDと同じく)24時間365日稼働が前提となっており、優れたパフォーマンスを提供する。一般的に保証期間および予想耐用年数が長く、Gバイト当たりの単価も高い。一方、クライアント向けSSDは(クライアント向けHDDと同じく)24時間365日稼働を前提としておらず、一般的に容量が大きく、Gバイト当たりの単価が低い。
SSD技術で用いられているNAND型フラッシュメモリの物理的特性により、フラッシュメディアの各ビットの書き込み回数には限界がある。
業界およびSSDメーカー各社は、1日当たりの全容量書き換え回数に基づく指標を用いている。エンタープライズSSDは、少なくとも5年間にわたって毎日、全容量を数回書き換えることができる。これに対して、クライアント用SSDは、毎日、全容量以下の書き換えで数十カ月程度というのが一般的だ。この特性を示すのには「総書き込み容量(TBW)」(Terabyte Written)という単位が用いられることが多い。このため、エンタープライズSSDは毎日大量の書き込みを実行するアプリケーション(データベースなど)に適している。
フォームファクターについて
SSD技術には、単体で提供されている製品や、HDDなどの技術と組み合わせたハイブリッド製品など各種のフォームファクターが存在する。SSD単体をキャッシュとしてITインフラの一部に組み込んだり、プライマリストレージとして単独のデバイスや大規模なオールフラッシュストレージアレイに組み込んだりすることが可能だ。ハイブリッド方式では、SSD技術をHDD技術と組み合わせることにより、単体型のハイブリッドデバイスや、フラッシュメモリを利用した大規模なハイブリッド型ストレージアレイを構成することができる。
ディスクドライブ型フォームファクター
SSDで一般的なパッケージング形態は、「ディスクドライブ」型のフォームファクターだ。1.8インチ、2.5インチ、3.5インチのディスクドライブ型フォームファクターのSSD製品では、今日のHDD技術と同じコネクタとインタフェースが採用されている。SSDで最も一般的な物理サイズは2.5インチである。今日のSSDの容量は、単独のドライブで最大2Tバイトである。これらのフォームファクターのSSDで一般的なインタフェースは、SATAとSASだ。最近のエンタープライズSSDでは、従来よりも高いパフォーマンスを提供する12Gbps SASが採用され始めている。ディスクドライブ型フォームファクターのSSDの中には旧式のインタフェースを備えたものもあるが、最近ではあまり見掛けなくなった。SSDは高いパフォーマンスを提供するため、ディスクドライブ型フォームファクターに対応した「SATA Express」「SCSI Express」「Non-Volatile Memory Express(NVMe)」などのインタフェースの開発も進められている。これらの新インタフェースを搭載した製品は、2013年末あるいは2014年初頭に登場する見込みだ。
PCI Express(PCIe)カード型フォームファクター
SSDで一般的なもう1つのフォームファクターがPCIeカード型のフォームファクターだ。これらのカードはコンピュータのPCIeスロットに装着する。高速なPCIeバス経由でストレージに直接アクセスできるので、素晴らしいパフォーマンスを提供し、遅延も極めて少ない。エンタープライズ向けのPCIe型SSDは、ディスクドライブ型フォームファクターのSSDと比べると同じ容量でも価格が高くなる傾向があるが、パフォーマンスは一般にPCIe型の方が優れている。今日のPCIe型SSDの最大容量は10Tバイトだが、この製品の価格は、標準的なサーバ用のHDDの数倍だ。
PCIe型SSD製品の多くは「PCIe 2.0」をサポートし、x4またはx8スロットが必要とされる。最近のカードの中には「PCIe 3.0」をサポートする製品もある。PCIe 3.0は2012年以降に発売されたサーバで利用できる。
SSD型フォームファクターには、もう1つ重要なポイントがある。それはカードの物理的サイズである。ハーフハイト/ハーフレングスの製品であれば、小型のフォームファクターのサーバを含むほとんどのサーバに組み込むことができる。フルハイトやフルレングスのPCIe SSDカードは大容量だが、全てのサーバに組み込めるわけではない。
また、大容量のPCIe SSDカードの中には、PCIeスロットから直接供給される標準の25ワットよりも大きな電力を必要とする製品もあり、その場合には追加電源用のコネクタを装備したサーバを使用する必要がある。
SSD独自のフォームファクター
SSDはサイズが小さく消費電力も少ないため、上記の他にも各種のフォームファクターが存在する。その多くは「mini-SATA(mSATA)」や「μSSD(micro SSD)」などの小型のフォームファクターだ。mini-SATAは名刺の半分程度(あるいは半分以下)のサイズで、最大256Gバイトの容量がある。SATAコマンドインタフェースを使用し、PCIeスロットに装着できる。μSSDはマザーボードに直接実装されるシリコンチップで、OSからはSATAインタフェースを備えたストレージ装置のように見える。モバイル端末など、電力消費が非常に少ない製品向けだ。
エンタープライズ向けとして注目されるSSDのフォームファクターとしては、DIMM(Dual In-line Memory Module)スロット型フォームファクターがある。これらの製品はNAND型フラッシュメモリと不揮発性DRAMで構成される。標準のDDR3 DIMMソケットに装着するが、不揮発性のストレージ機能をサーバに提供するため、多数のDIMMスロットを装備したサーバ用のエンタープライズストレージとして興味深い利用方法がありそうだ。
ハイブリッド型ドライブおよびアレイ
SSDとHDDの両方を組み込んだハイブリッド型のSSD/HDD製品は多数存在する。単体型のハイブリッドドライブは主としてコンシューマーおよびデスクトップ向けで、HDDへの読み書きの前段階のキャッシュとしてSSDを利用するものが多い。フラッシュメモリを利用した大規模なストレージアレイは、単独のソリッドステートデバイス(SSDまたはPCIeカード)と単独のHDDを組み合わせたもので、エンタープライズストレージという用途を想定している。これらのハイブリッド型アレイで使用されるSSDは、キャッシュとしてだけでなく、プライマリストレージの階層化にも利用することができる。
ユースケースとワークロード
筆者が勤務する米Demartekのテストラボでは、ほとんど全てのワークロードにおいてSSDを使うことによってパフォーマンスの改善が見られた。SSDでパフォーマンスの向上が特に著しかったワークロードもある。SSDと相性が良いのがデータベースのワークロードだ。これは、SSDの生のパフォーマンスが高いだけでなく、遅延が少ないという理由によるものだ。SSDをキャッシュとして使用した場合でも、プライマリストレージとして使用した場合でも、大幅なパフォーマンス改善が見られた。アプリケーションのデータを全てSSDメディア(プライマリストレージ)に置くと、即座にアプリケーションのパフォーマンスが著しく向上した。SSDをプライマリストレージとして使用した場合のパフォーマンス向上は、8倍から16倍、あるいはそれ以上だった。しかし企業のあらゆるアプリケーションでこのような構成にするのは、コスト的に困難な場合もあるだろう。
単独のHDDの性能は数百IOPS程度だが、SSDでは単独のデバイスで通常、数千あるいは数万IOPSというパフォーマンスを提供する。データベースやWebサーバなどのOLTP(オンライントランザクション処理)アプリケーション環境では通常、レスポンスタイムの短いことが非常に重要な要件とされる。トランザクションではデータベースに対して多くのクエリが連続して実行され、各クエリが直前のクエリから返される結果に依存している場合もある。こうした場合では、ユーザーにとってのレスポンスタイムは、一連のクエリ全体に対してストレージがどれだけ素早く結果を返すことができるかに依存することになる。ラボのテストでは、SSD技術を使った場合、遅延が1ミリ秒以下であることが多かった。これはIOPSやスループットの生のパフォーマンスよりも重要な性能かもしれない。
SSDキャッシュおよびキャッシュ効果の高いワークロード
SSDをキャッシュとして利用すれば、パフォーマンス改善効果を多数のアプリケーションで共有できるというメリットが得られる。アプリケーションにかかわらず、現在動作中の全てのI/Oのパフォーマンスが、キャッシュを利用することによって改善するからだ。比較的小さな容量のソリッドステートストレージからSSDの導入を開始する場合にも、SSDをキャッシュとして利用するといいだろう。
キャッシュは、頻繁に使用するデータをため込むための“ウォーミングアップ”時間が必要であり、環境にもよるが、これには数分あるいは数時間かかる。データ全体のサブセットへのアクセスが頻繁に繰り返される“ホットスポット”が存在するワークロードの場合はキャッシュ効果が高く、SSDキャッシュを使用するメリットが大きい。ラボのテストでは、キャッシュ製品の種類やバックエンドストレージの速度などの要因にもよるが、SSDキャッシュを使用することによってOLTPワークロード処理のパフォーマンスが2.5~8倍に向上した。
SSDキャッシュはITインフラ内の3つの場所に配備可能だ。サーバサイド、ネットワーク内、そしてストレージシステム内だ。これらの配備場所にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、自社のニーズに応じて選択すればよい。異なるアプリケーションの間でキャッシュを共有する機能が重要とされる環境もあれば、サーバやバックエンドのストレージを変更しなくても済むことが重視される環境もあるだろう。サーバサイドのSSDキャッシュは、アプリケーションの遅延が大幅に減少するというメリットがあるが、(仮想マシン環境などで)アプリケーションを別のサーバに移動した場合には、そのサーバ上でキャッシュが再びウォームアップするまでは十分なキャッシュ効果が得られない可能性がある。
本稿筆者のデニス・マーティン氏は、コンピュータ業界のアナリスト組織およびテスティングラボ、米Demartekの創立者で社長。1980年からIT業界に関わる。
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