SSDの導入では「DIY(Do It Yourself)」方式を選択する企業が増えている。しかし、エンタープライズ環境では、DIY方式の採用に当たり考慮すべきポイントがある。
米Enterprise Strategy Groupの上席研究員、トニー・パルマー氏によると、ソリッドステートライブ(SSD)によるパフォーマンス改善で最も大きなメリットが期待されるのが「ランダムアクセスが多く、遅延による影響を受けやすいアプリケーション」だ。具体的には、オンライントランザクション処理、電子メール、仮想デスクトップインフラなどが、SSD導入対象の有力候補だという。
「アプリケーション仮想化が進み、少ない台数のサーバで多数のアプリケーションをホスティングしている。それに伴い、I/Oワークロードの変動が激しくなっている。ExchangeやSQL Server、SharePointなどのアプリケーションを1台ないし2台のサーバで稼働させている中堅・中小企業の場合は、SSD導入のメリットがある」とパルマー氏はメールでの取材で述べている。
コンサルティング・テスティング会社の米Demartekの創業者であるデニス・マーティン社長によると、「シーケンシャルなI/OであればHDDで十分だが、データベースの更新やオンライン解析処理などのランダムなI/OパターンにはSSDの方が適している」という。DemartekがSSDを搭載した電子メールサーバをテストしたところ、最速クラスのHDDと比べても大幅に優れたパフォーマンスが得られた。「DIY方式で臨むのであれば、SSDをブートドライブあるいはストレージドライブとして電子メールサーバに組み込めばよいが、全ての電子メールを保存するのに十分な容量を持った高品質のドライブを選ぶ必要がある」と同氏は指摘する。
「SSDはどこに導入しても効果があるが、私の場合はVMwareを使った小規模な環境をSSDで運用している」と同氏は付け加える。
米調査会社Gartnerの主席調査アナリスト、サーギス・マッシェル氏は、SSDの利用対象としてミッションクリティカルでないアプリケーションやワークロードを選ぶのが望ましいとしている。「メタデータをSSDに置いて検索を高速化したり、アクセスの多いWebサイトや人気の高い動画のページなどをSSD上で運用すればいい」と同氏はアドバイスする。
「こういった運用方法であれば、高速化を実現でき、しかもリスクは最小限で済む」とマッシェル氏は話す。だが、「SSDを本格的なストレージとして利用する場合は注意が必要だ。DIY方式でそういったSSD環境を構築するのは非常にリスクが大きい」という。
SSDの制約の1つとして「ウェアアウト」(消耗)という問題が挙げられる。NANDフラッシュメモリのブロックに存在するデータは、新たなデータを書き込んだりプログラムしたりする前に消去されなければならず、このプログラム/消去プロセスの繰り返しによって、電子を閉じ込めた酸化膜を破壊し、NAND型フラッシュメモリのウェアアウトを引き起こす。
ウェアアウトに至るまでの書き換え回数は、SSDの種類によって異なる。現在、企業向けのNANDフラッシュメモリには3つの主要なタイプが存在する。すなわち、シングルレベルセル(SLC)、マルチレベルセル(MLC)、そしてエンタープライズマルチレベルセル(eMLC)である。従来の数字では、SLCの場合で10万回のプログラム/消去(P/E)サイクル(「書き込み/消去サイクル」あるいは「耐用サイクル」ともいわれる)、eMLCでは約3万回、MLCでは1万回以下だとされている。
ストレージおよびサーバのメーカー各社は当初、企業向けにはSLCを採用していたが、最近では比較的安価なMLCやeMLCを組み込むようになった。その背景には、ドライブメーカー各社が、ウェアレベリングとエラー訂正のためのアルゴリズムの改善や、オーバープロビジョニングなどの高度な技術によってMLCとeMLCの信頼性を高めたことがある。MLCでは1つのセルに2ビット以上の情報を書き込めるため、SLCドライブよりも大容量を実現できる。
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