SSDを賢く保守するための4つの秘訣HDDとは異なるアプローチが必要

HDDと比べて処理性能が高いSSDだが、その保守に際しては留意すべき重要なポイントがある。社内システムへのSSD導入を検討する企業担当者へのアドバイスを紹介する。

2013年02月15日 18時30分 公開
[Serdar YegulalpTechTarget]

 SSD(ソリッドステートドライブ)は「値段が高すぎる珍しい存在」から「必須アイテム」へと変わってきた。とはいえ、HDDを全てSSDに置き換えるには、まだ費用対効果が十分ではない。1Gバイト当たりの価格では、従来型のHDDの方がまだはるかに安価だからだ。ただし、I/OスループットやIOPS(1秒間に処理できるI/O数)が重要となる場面では、SSDが断然有利だ。

 保守という観点では、SSDには回転式ドライブとは異なるアプローチが必要となる。それを念頭に、SSDの保守に際して留意すべきポイントを幾つかまとめた。

デフラグは不要

 既に広く知られていることとはいえ、この点は繰り返し詳述する必要がある。SSDはデフラグを行う必要がない。ランダムI/Oであろうとシーケンシャルリードであろうと、SSDではどのセルもアクセスタイムが変わらないからだ。そのようなディスクをデフラグしても、パフォーマンスの向上はそれほど得られず、処理能力を浪費するだけだ。ただし、デフラグのせいでSSDの寿命がはっきり認識できるほど短くなるかという点については、私は疑わしく思っている。詳しくは以下の説明を参照いただきたい。

 現在、大半のOSはSSDの存在を検出して、SSDにはデフラグを行わないよう設定できる。例えば、Windows 7はOSのインストール時にSSDの存在を検出し、デフラグツールのスケジュールにSSDを自動的に追加しないようになっている。ただし、その後に追加されたSSD、つまり同じドライブ文字で既存ドライブの代わりに使われているSSDに関しては、自動的に除外されない場合もある。

 全てのSSDをデフラグスケジュールから確実に除外するためには、[ディスクデフラグツール]の[スケジュールの構成]を開き、[ディスクの選択]を選んで、SSDのチェックが全て外れていることを確認するといい。このリストにSSDが全く表示されなければ、そのままで大丈夫だ。

photo CドライブはSSDであり、Windowsによって自動的に除外されているため、リストにはCドライブが表示されていない

寿命は気にしない

 SSDが初めて市場に出たときに、反対意見として最も多かったのは「メモリセルへの書き込み回数に限界がある」というものだった。実際、SSDに使われているフラッシュメモリには寿命があり、書き込みの上限は一般的に1ブロック当たり10万~100万回とされている。だが、これを理由にSSDを日々の利用に不向きとするのは、非現実的で不当な判断だ。

 SSDなどのフラッシュデバイスでは通常、ディスクの寿命を延ばすために、書き込み時に「ウェアレベリング」と呼ばれる技術が用いられる。これは、書き込みが同じセルばかりに集中することなく、全てのメモリセルに均等に分散されるように制御するメカニズム。この機能だけでディスクの寿命はかなり延びる。

 SSDの平均寿命は、たとえ書き込みが多い使われ方でも、「今よりはるかに高速かつ大容量で、より損耗にも強いモデルに置き換えられるまでの期間」と比べても、恐らくはるかに長い。

 SSDの寿命を懸念している向きからは、「SSDをシステムドライブに使用する場合には、ハイバネーション(休止状態)を無効化し、スワップファイルを別のドライブに移動させた方がいい」との指摘も挙がっているが、無意味な指摘だ。SSDシステムドライブを搭載するノートPCはハイバネーションにSSDを使っているが、それで何も問題はない。

 スワップファイルに関しては、着眼点としては良いが、実際には間違って行われているケースも少なくない。SSDと回転式ドライブを搭載するシステムを使っている場合、スワップファイルの大半をSSD以外の場所に置く方がいい。だがこれも、主として並列処理やI/Oのボトルネック解消のためであって、SSDの寿命を気にしてのことではない。例えば、SSDの寿命にはあまりこだわらず、一部のサーバクラスタについては、SSDをスワップ専用ディスクドライブとして使用しているホスティング企業の例もある。

 要するに、実際にディスクドライブに欠陥がある場合を除いて、SSDの寿命は気にする必要がないということだ。実際の数値が気になるのなら、マックス・シレソン氏のデータが参考になるだろう。同氏は大量の演算処理を行い、「データベースサーバ環境での最悪のシナリオ」を想定した場合の寿命が5年程度との結論を得ている。

 なお、回転式HDDと比べ、SSDは発熱量がはるかに小さく、熱による影響もはるかに少ない。そのため、SSDでは冷却や空気の流れが少ない環境でも、寿命やパフォーマンスを気にする必要はない。

S.M.A.R.T.情報を利用する

 SSDも含め、各種のストレージ装置では、自己診断機能のオープン規格「S.M.A.R.T.(Self-monitoring, Analysis and Reporting Technology)」に基づく情報が得られる。提供される情報の内容はディスクのメーカーや種類によって大きく異なるが、SSDでは時折チェックする価値のある統計情報が幾つか提供される。

会員登録(無料)が必要です

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 日本アイ・ビー・エム株式会社

ハイブリッドクラウドとAIで実現する「2027年への架け橋」

メインフレームを生かしつつシステムを進化させるには。

事例 株式会社AIT

「高速/高価」と「低速/安価」のいいとこどりのストレージシステムとは?

データ生成デバイスの進化・多様化により、保存すべきデータ容量は急増した。その管理においては、コストとパフォーマンスのバランスが課題となっている。解決策の1つとして注目される「HPSS」の効果について、導入事例を紹介したい。

事例 株式会社AIT

IBM Power 10 & FlashSystem導入事例:堅牢性・処理性能・安全性の評価は?

業務のデジタル化が進み、データ量やワークロードが増大していた大阪府農協電算センター。それによりインフラの負荷が高まり、性能を向上させることが喫緊の課題になっていた。本資料では同社がどのようにインフラを移行したのか解説する。

製品資料 NTTドコモビジネス株式会社

ストレージの課題を解決、容量無制限の法人向けファイル共有サービスとは?

「データを共有しておいてください」といった言葉はもはや日常となり、共有ストレージの活用は欠かせないものとなっている。一方で、「容量が不足している」「外出先で社内ファイルを閲覧できない」などの課題を抱える企業も多い。

製品資料 株式会社ネットワールド

今さら聞けないストレージの基礎知識:自社に適したモデルをどう選ぶ?

ビジネスにおけるデータの重要性が増す中、それを保存するためのストレージへの注目度が高まっている。それでは、自社に最適なストレージを導入するためには、どのように選定すればよいのか。重要なポイントを分かりやすく解説する。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか

なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
メインフレームを支える人材の高齢化が進み、企業の基幹IT運用に大きなリスクが迫っている。一方で、メインフレームは再評価の時を迎えている。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...