半導体大手のIntelが、5Gやエッジコンピューティングを担うネットワーク事業部を分社化する。AI技術という中核事業に集中することが目的だ。だが一部の専門家は、その判断が「短絡的」だと指摘する。それはなぜなのか。
苦境からの再起を目指す半導体ベンダーIntelは、中核事業に注力するため、ネットワークおよびエッジ部門(NEX)を分社化する計画を認めた。
この分社化は、ITニュースメディアCRNが最初に報じたものだ。近年データセンター市場でシェアを大きく落としているCPU事業と人工知能(AI)技術への取り組みに注力するという、IntelのCEOリプブー・タン氏の方針に沿ったものだ。この方針は、同社のAI技術への注力という方針転換を後押しするのか。
CRNは、NEXのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーであるサチン・カッティ氏の社内メモの内容を伝えた。それによると、新会社は「ミッションクリティカルな通信や企業向けネットワーク、イーサネット用インフラ向けに最先端の半導体製品を提供する独立企業」を目指す。
Intelは、同社が分社化後も主要な投資家であり続け、新たなパートナー投資家を探す方針を示した。同社は2025年4月、子会社のプログラマブルロジックデバイス(PLD:Programmable Logic Device)メーカーAlteraも同様の方式で分社化を実現した。外部の戦略的投資家を迎え入れて事業を独立させつつ、自らも少数株主として残る形で切り離したのだ。
事業部門の分社化は、Intelが将来の利益を確保する手段になる。2017年に買収し、 2022年に新規株式公開(IPO)を通じて分社化した自動運転技術ベンダーMobileye Technologiesがその例だ。Intelは2025年7月にMobileye Technologiesの株式5750万株を売却し、約9億2200万ドルの資金を調達した。
IT分野のアナリスト企業HyperFRAME Researchのアナリストであるロン・ウエストフォール氏は、NEXの分社化に対して「タン氏が2025年4月に示した戦略を実行に移している証拠であり、同氏はIntelを中核事業の強みを発揮できる方向へ導こうとしている」と分析する。Intelの事業を整理する上で、NEXは「分社化の最有力候補」だったとウエストフォール氏は結論付ける。
Intelの2025年第2四半期(4〜6月)決算では、収益は横ばいながらも市場予想を上回った一方、29億ドルの純損失を計上した。これを受けてタン氏は、全世界の従業員数を7万5000人に削減するなど、大規模なコスト削減を継続する意向を示した。
ネットワークインフラやエッジコンピューティング(データの発生源でデータを処理する技術)、通信分野における市場機会の拡大に追随するため、Intelは2021年にNEXを事業部門として設立した。
NEXの法人顧客は、Intelの仮想無線アクセスネットワーク(vRAN)実装用レファレンスアーキテクチャ「FlexRAN」や、AI関連処理に特化したエッジデバイスを利用している。これらの製品はクラウドネイティブな「5G」(第5世代移動通信システム)の展開やvRAN、エッジデバイスにおけるAIアプリケーションの実現を後押しする。
ネットワークインフラとエッジコンピューティングの分野において、NEXはNVIDIAやBroadcom、Marvell Technologyといった競合他社との厳しい競争にさらされていた。同部門は2022年に89億ドルの収益を上げるなど好調な業績を記録したが、その後成長は鈍化した。
ウエストフォール氏は次の見解を示す。「NEXは独自のブランドと方針を掲げ、Intel本体では難しかった提携関係を追求できるようになる。全体としてプラスに働く見込みはあるが、今後の詳細を見守る必要がある」
Informa TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Groupでアナリストを務めるジム・フレイ氏は、IntelによるNEXの分社化は「やや性急な判断だった可能性がある」と指摘する。AI技術の需要がネットワークやエッジデバイスの需要を喚起しているというのが同氏の見解だ。そのため、Intelが“AIファースト戦略”にネットワーク事業を含めていないことは「短絡的な見方」だと指摘する。
「Intelがどのように自社を改革しようとしているのかは興味深い。AI技術を最優先する戦略を掲げているが、システム間の通信には依然としてネットワークやイーサネットが不可欠だ」(フレイ氏)
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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