生成AIの本格活用が進む中で、企業のITインフラに求められる要件も変化している。データの整備と活用において重要になるストレージでも同様だ。Pure Storageが打ち出したストレージの機能強化とは。
オールフラッシュストレージベンダーのPure Storageは、2025年6月に開催した年次イベント「Pure//Accelerate 2025」で、同社の今後を象徴するビジョンとして「Enterprise Data Cloud」(EDC)を打ち出した。ハードウェアとソフトウェアを密接に統合し、クラウドの特性をオンプレミスで実現するというこの構想は、AI時代に求められる新たなデータ基盤の在り方を提示している。EDCの構想を中心に解説した前編「『HDD終焉説』に現実味 600TBが見えたPure Storageの“次世代ストレージ”構想」に続き、本稿ではPure//Accelerate 2025で打ち出された機能強化や、日本国内におけるPure Storage製品の活用状況などを中心に整理する。
製品の強化に関しては、パフォーマンス指向の「FlashArray//XL」の次世代モデル「R5」や、低レイテンシを追求した新モデル「FlashArray//ST」、スケールアウト型ストレージ「FlashBlade//S」の新世代製品「R2」などが発表されている。
AIの爆発的なユースケース拡大を受けて、高パフォーマンスや低レイテンシといったAI向けの機能強化が目立つ。また、製品機能のAIによる強化として、運用管理を支援してくれる「常時稼働するパーソナライズされたアシスタント」と位置付けられる「AI Copilot」が一般提供開始されることに加え、新たな取り組みとして、一般的なLLM(大規模言語モデル)とストレージシステムに組み込まれた「Pure Fusion」が連携できるよう、AIを外部のツールやデータと接続するためのプロトコル「MCP」(Model Context Protocol)がサポートされる方針も明かされた。Pure Fusionは同社の中核ソフトウェアである「Purity」に新たに組み込まれたもので、複数のストレージアレイを仮想的に統合して集中管理できる機能だ。従来のような高いスキルを備えた運用管理者がいない場合でも、自然言語による対話形式で運用管理を支援してくれる体制が整う他、ユーザーの対話的な指示を受けて必要な運用管理操作をユーザーに変わって実行してくれるAIエージェント機能の提供にも期待が持てる。
同社のAI戦略について説明したショーン・ハンセン氏(コア・プラットフォーム事業部門 VP兼ゼネラルマネジャー)は、ユーザーに変わって操作を実行することを考えるとミスや誤動作が許されないことから慎重な検証が必要であると示唆しており、実際に利用できるようになるまでにはまだ時間を要することが予想されるが、Purityに対する機能拡張モジュールとして組み込まれたPure Fusionが予想以上に重要な意味を担うものであったことが改めて明確になったと言える。
Pure Fusionの開発を含め、数年前から取り組んで来た同社内のイノベーションの成果が次々と段階的に明かされていくという展開になっており、今後しばらくは同社発のイノベーションの話題が途切れることなく続くものと期待できそうだ。
最後に、Pure Storageの日本国内でのビジネス状況について、同社の販売代理店である東京エレクトロンデバイスの内山 忠氏(CN BU CN営業本部 パートナー営業部 部長)に聞いてみた。Pure//Accelerate 2025と併催される形になったパートナー向けイベントで東京エレクトロンデバイスはAPJ Partner of The Yearを受賞している。端的に言えばアジア太平洋地域で東京エレクトロンデバイスが最も大きな売り上げを達成したということであり、さらに対前年比で大きく伸びているという点も考慮されたという。内山氏は日本国内における需要の伸びとして「もともとキャリア(通信事業者)やサービスプロバイダーのお客さまは多かったのですが、ここ2〜3年くらいは公共/パブリックのお客さまが急激に増えているという印象です」と語った。同社から見たPure Storage製品の特徴は「差別化しやすい」とのことで、アップグレード不要で永続的に最新機能が利用可能なサブスクリプションモデル「Evergreen」や、独自開発のNVMe接続のフラッシュモジュール「DirectFlash Module」(DFM)による省スペース・省電力、さらに容量や機能、性能に対して「価格が高くなり過ぎない」点もポイントだという。
公共や地方自治体にもクラウド移行の波が押し寄せており、その観点からPure Storageに対するニーズも高まっているようだ。国内でもAI関連のワークロードを意識したシステム導入の話も増えてきていると言い、スペース効率や省電力性能が決め手となってPure Storageが選定される例も多いそうだ。
新たな取り組みとして発表されたEDCに関しては、「日本のお客さまではまだシステムごとにサイロ化されている部分がまだあるので、EDCのような仮想化のコンセプトを持ち込むのは直近ではチャレンジかなと思いますが、Pure Storageと一緒に中長期的に取り組んでいきたい」とのことだった。
国内企業に関しては、DX(デジタルトランスフォーメーション)に対する取り組みの遅れなどが繰り返し懸念材料として挙げられる状況だが、ことPure Storage製品の導入に関してはAPAC(アジア太平洋)エリアでも顕著な伸びを見せているということで、少なくともストレージインフラのモダナイズに関しては順調に進展しているとみてよさそうだ。今後さらに重要度を増していくと考えられるAI向けデータプラットフォームの整備に関しても期待が持てるのではないだろうか。
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