クラウドでもHDDでもなく「オンプレミス×SSD」を選んだRed Lobsterの理由DR対策のためにPure Storageに統一

シーフードレストランチェーンのRed Lobsterは、DR対策の強化を視野に入れてPure StorageのSTaaS(Storage as a Service)を採用した。クラウドも選択肢になったが、なぜオンプレミスでの運用を選んだのか。

2025年08月11日 08時00分 公開
[Antony AdsheadTechTarget]

 米国のシーフードレストランチェーン「Red Lobster」は、Pure Storage製のフラッシュストレージアレイをストレージの標準インフラとして採用した。その背景には、ディザスタリカバリー(DR:災害復旧)対策におけるギャップを埋める狙いがあった。Red Lobsterが特に懸念していたのは、そのギャップを放置した場合、メインのデータセンターで予期せぬ障害が起きたときにストレージが極めて脆弱(ぜいじゃく)な状態に置かれる危険があったことだ。

クラウドではなくオンプレミス、HDDではなくSSDを選択

 Red Lobsterはシーフード料理を専門とするチェーンで、米国とカナダに500店舗を超えるレストランを展開している他、テイクアウトやデリバリーのサービスも提供している。その事業継続を支えるインフラとして、同チェーンはクラウドではなく、完全にオンプレミスのインフラでデータセンター間のミラーリングを実現する道を選んだ。これにより、クラウドであれば最大6倍に膨らむ可能性があった運用経費(OPEX)の増加を回避できた。

 Red Lobsterは、バージニア州アッシュバーンとテキサス州ダラスにあるEquinixのデータセンターを活用し、主要な業務システムを運用している。システムの中核にあるのは、POS(販売時点情報管理)の他、人事や財務、調達などに関するシステムだ。これらのシステムは、食材の調達、飲食物の提供、従業員の雇用・管理、決済対応など、同社の主要業務を支えている。

 同チェーンのCIO(最高情報責任者)を務めるショーン・ハーズ氏がRed Lobsterに入社した時、最も差し迫った課題は、DR対策に生じていたギャップを埋めることだった。従来のものでは、同社のメインのデータセンターの情報が、もう一つのデータセンターに複製されない状態だったからだ。

 DR対策の見直しに取り組む中で、Red Lobsterは複数ベンダーに分かれていたストレージインフラを刷新。従来の4社体制を廃止し、Pure Storage製品に統一した。CIOに着任した際、ハーズ氏はまず同チェーンのIT機能全体を評価した。その過程で、Equinixのデータセンターにはすでに高性能なインフラ基盤が構築されていたことが明らかになった。しかしDR対策としては未完成であり、事業継続に必要なフェイルオーバー機能などは整っていなかった。プロジェクトは途中で中断されたままとなっており、抜本的な見直しが必要な状態だった。

 ハーズ氏は、自ら投資対効果を検討し、その内容をRed Lobsterの取締役会に提示し、DRの重要性と必要な投資の妥当性を訴えた。同氏が特に重視したのは、本番システムが全て停止した場合でも、即座に稼働可能な“完全なコピー”を用意する機能の実現だった。その実装方法として、複数の選択肢を比較検討したという。

HDDは性能不足、クラウド案もコストが課題に

 社内で当初評価された選択肢は、全てクラウドに移行するか、オンプレミスにするかの二者択一だった。ここにはフラッシュストレージではなくHDDの利用も含まれていたが、オンプレミスで試験運用をした結果、リストア(復旧)に要する時間がビジネス要件を満たせないことが明らかになり、移行案の見直しを迫られることになった。

 そこで検討したもう一つの選択肢が、SSDを搭載するPure Storageのフラッシュストレージアレイをオンプレミスで採用するというものだ。これであれば、片方のデータセンターの状況をリアルタイムで複製し、別のデータセンターへ迅速に転送することが可能になる。そのスピードと可用性こそがDRに不可欠だとハーズ氏は判断した。

 「費用の観点では、Pure Storageを使う選択肢は、コストが最も高い選択肢と最も低い選択肢の中間にあった」(ハーズ氏)という。コスト面では“中程度”だとしても、復旧までに1日を要することはなく、最短で1時間以内に業務を再開できるというメリットが見込めた。ハーズ氏はこの点を踏まえ、1日分の減収リスクと、1回限りの導入コスト、もしくは短時間で復旧可能な構成を維持するための継続コストを比較検討。結果として、財務部門にとってもその判断は明確で、投資対効果が高いと評価されたという。

 そこでハーズ氏のチームは、両方のデータセンターでPure Storageのフラッシュストレージアレイ「FlashArray」を採用し、データセンター間で複製を実施することでフェイルオーバーを可能にした。容量はP(ペタ)B規模に達した。

 新たなストレージの導入に当たり、Red LobsterはPure StorageのSTaaS(サービスとしてのストレージ)「Evergreen//One」を選択した。これによってコストを運用経費で分散させることが可能になった。

「STaaS」で初期投資を抑制

 ハーズ氏は、一時的な設備投資(CAPEX)と継続的なOPEXを、財務的にバランスの取れた形で組み合わせることを目指した。もし従来型のCAPEXモデルを採用していた場合、多額の初期コストを1回のプロジェクトで負担し、それを5年で減価償却することになる。そうなれば初年度の財務負担が大きくなっていた可能性が高い。採用したSTaaSモデルにより、プロジェクト全体のコストを3年間に分散できたという。

 ハーズ氏は、Pure Storageのストレージに移行するメリットを“睡眠”という形で享受できたと語る。「内情を知らない人には分かりにくいことだが、夜に眠れるようになった点ではメリットのある投資だった。店舗の経営に関わる人であれば、『明日開店できるのか』『無事に運営できるのか』を常に気にかけているものだ」(同氏)

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