「Windows To Go」を徹底解剖
「USBメモリで携帯できるWindows 8.1」は何がうれしいのか
米MicrosoftがWindows 8.1 Enterpriseのプレビュー版を公開。PC環境をUSBメモリで携帯できる「Windows To Go」が評価可能になった。PC運用の在り方を変えるとの声もあるWindows To Goの実力とは?
USBメモリからWindowsを起動する機能「Windows To Go」を備えた「Windows 8.1 Enterprise」のプレビュー版が、IT管理者向けのオンラインアップデートとして利用できるようになった。IT管理者は、Windows To Goの認証を取得したUSBメモリを使用すれば、端末にOSをインストールすることなく、USBメモリからWindows 8.1 Enterpriseのプレビュー版をブートしてテストできる(参考:Windows 8環境をUSBメモリで携帯できる「Windows To Go」)。
米Microsoftの意図は、Webサイトからのダウンロードという形態でWindows 8.1 Enterpriseのプレビュー版を提供することで、ユーザー企業がWindows To Goを評価できるようにすることにある。既に一部の同社パートナーには、Windows To Goを利用してWindows 8.1 Enterpriseプレビュー版をインストールしたUSBメモリを提供している。
Windows To Goは、BYOD(私物端末の業務利用)や従業員の社外業務で社内データを持ち出す場合などの、モバイル機器のセキュリティ問題を軽減するために開発された。
「ドライブは暗号化されているので、例えば会社の従業員であれば、Windows To GoでWindowsをインストールしたUSBメモリを自宅のコンピュータに接続すれば、社内で利用している環境と同じインストールイメージを使用して自社のLANへVPN接続できる」と、MicrosoftのWindows Commercialグループ シニアプロダクトマネジャー、クレイグ・アシュリー氏は説明する。
「暗号化したUSBメモリを使うことで、社内で使う端末がウイルスに感染するのを防ぐことができる。従業員が各自のニーズに応じてカスタマイズした端末に影響を与えず、社内共通の作業環境を利用できる点は、ITプロフェッショナルにとって大きな魅力だ」と、米ITコンサルティング会社Baroan Technologyの社長、ガイ・バローン氏は語る。
米市場調査会社Frost & Sullivanの一部門、Stratecastの副社長であるマイケル・サビー氏は、「Windows To Goは高度なセキュリティが要求される業務にも便利だ」と指摘する。
「Windows To Goは、軍事や政府などの公共機関、教育、医療といった分野で普及する可能性がある」と話すのは、Windows To Goの認定プロバイダーの1社、米ストレージ関連機器メーカーImationでシニアプロダクトマネジャーを務めるゲーリー・ガーバー氏だ。Imationは、数十個のUSBメモリに社内システムのインストールイメージを同時に展開できる、プロビジョニング用のアプライアンスを市場に投入する予定だ。
ガーバー氏によれば、このアプライアンスでプロビジョニングしたUSBメモリは一元管理が可能で、紛失したり盗まれたりした場合には、IT部門の管理者がリモートでメモリの内容を消去してデバイスを無効化できるという。この機能のおかげで、「USBメモリに社外秘のデータを保存していたとしても、漏えいの心配はなくなる」と同氏は付け加える。
Windows To Goがニッチな業界からさらに他の分野にも広がるかどうかは、現時点では分からない。企業におけるWindows To Goの利用方法として、フル装備だったデスクトップやノートPCにWindows To GoのUSBメモリを装着してシンクライアントのように再利用する方法が考えられるだろう。ただし、現時点でWindows To Goが動作するのは、米Intelのx86またはx64ベースのプロセッサを搭載したMicrosoft認定端末のみとなっている。
「ユーザーのニーズは、クライアント側の負荷が重いアプリケーションから、より軽量なアプリケーションへ移行しつつある」と、Stratecastのサビー氏は語る。「企業は、フル装備の端末を丸ごと入れ替えずに、組み込みOSも搭載していないシンクライアントとして、USBメモリにあるクライアントPCのイメージを起動するというモデルを採用する可能性がある」(同氏)
こうしたモデルを採用すれば、企業は保守の負荷が高い社内のクライアントPCの数を減らすことができ、機器の利用期間を延ばすことができ、エネルギー消費量も削減でき、環境を個別にカスタマイズする手間も軽減できる。さらに、「IT部門のスタッフは、エンドユーザーに汎用的な端末を提供し、各ユーザーの用途に応じてシステムを短時間で組み替えることもできるようになるだろう」とサビー氏は語る。エンドユーザーは、適切なイメージを搭載したUSBメモリを互換性のあるデバイスに装着するだけで済む。
ただし、フルセットの機能を備えたデスクトップを実際にWindows To Goベースのデスクトップで置き換えるとすれば、IT管理者が端末を配備する方法やエンドユーザーの操作など、コンピュータ利用の根本的な作法から変える必要があるだろう。サビー氏は、「企業でのデスクトップの使い方が画期的に変わる」と語る。
MicrosoftがUSBメモリ以外のフォームファクター(ハードウェア規格)でもWindows To Goを利用できるようにするかどうか、今後も長期的に同社の動向に注意を払うべきだ。ノートPCやデータセンターのサーバなど、起動時間やデータへのアクセス時間を短くする必要がある端末には、設定を固定したSSDやフラッシュメモリカードが組み込まれる例が増えつつある。
Microsoftのアシュリー氏は「今はUSBメモリに注力している」と語る。ただし、同氏は将来USBメモリ以外のストレージテクノロジーを採用する可能性を否定しなかった。
なお、Windows To Goが利用可能なUSBメモリを提供するベンダーとして認定されているのは、米Kingston Technology、米SPYRUS、米Super Talent Technologyなど数社。また米Western Digitalは、Windows To Go用に開発した外付けHDDを提供している。
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