MacBook AirでもWindows 8を起動
Windows 8環境をUSBメモリで携帯できる「Windows To Go」
USBメモリにWindows 8をインストールして、外出先のPCでWindows 8を起動できる「Windows To Go」。現時点で判明している情報を整理した。
米Microsoftは次期OS「Windows 8」に「Windows To Go」と呼ばれる新機能を搭載する。この機能は、USBメモリを使って職場と同じWindowsデスクトップ環境を私物PCでも起動できるようにする。「Windows 8 Consumer Previewに見る企業向け機能」で予告した通り、今回はこのWindows To Goについて解説する。
Windows To Goを使えば、企業は私物端末の業務利用を認める「BYOD(Bring Your Own Device)」を実施できるとMicrosoftは主張している。ただし、この機能を役立てられる端末の種類はかなり限られたものとなりそうだ。
Windows To Goを使うことで、企業は従業員の業務アプリやデータ、個人設定とともに、IT部門の管理下にあるWindows 8環境を丸ごとUSBメモリにインストールできる。エンドユーザーはそのUSBメモリを自分のデスクトップPCやノートPCに差すだけで、職場で利用しているWindows 8デスクトップ環境を実行できる。
「Windows To Goを使えば、IT部門はBYODをサポートでき、企業はセキュリティを危険にさらすことなく臨時スタッフにも社内のWindows環境へのアクセスを与えられる」とMicrosoftは3月6日付のブログ記事で説明している。
だがこの技術についてはまだ多くの疑問点が残っている。例えば、タブレット端末など、Windows以外の人気端末でもWindows To Goを使えるのかどうかはまだ不明だ。Microsoftは2011年の開発者会議「BUILD」でWindows To Goに関するセッションを行い、Windows 8の開発者向けプレビュー版を公開したが(関連記事「IT管理者がチェックすべきWindows 8の機能と仕様」)、このプレビュー版をインストールできるのはWindows VistaかWindows 7のロゴを搭載するx64システムだけだ。
Windows To Goの製品版がiPadやAndroidタブレットといった非Windows端末をサポートするかどうかについては、まだMicrosoftから新たな情報は提供されていない。
Windows 8搭載のARMタブレットについては、Microsoftは自社のTechNetサイトにおいて、Windows To Goの機能は使えないと説明している。さらに、ARM版のWindows 8は会社のドメインには接続できないという。社内のIT環境にWindows 8搭載ARMタブレットを統合しようと考えていた企業は、計画を見直す必要がありそうだ(米AppleのiPadも会社のドメインには接続できない)。
「ARM版でWindows To Goをサポートしないのは理解できる。ARM版Windows 8はいずれにせよ制限付きのバージョンであり、Windows To Goを利用する可能性が高い企業ユーザー向けとは言い難いからだ」と語るのはWindows To Goをテストしたという英Tribal Labsのコンサルタント、ベン・ロウ氏だ。
ARMベースではないWindows 8搭載タブレットも登場する予定だが、そうした端末でWindows To Goが使えるかどうかは定かではない。
AppleのMacでWindows To Goが使えるかどうかについても、Microsoftは言及していない。ただし、少なくとも1人の開発者はWindows To Goを使って「MacBook Air」でWindowsを起動させている。
確かにWindows To Goは、従業員の私物Windowsマシンを職場のWindows 8デスクトップ環境に変える方法を提供してはくれる。だが、実際にBYODを実施している企業でこの機能が活用されるケースはそれほど多くなさそうだ。
ロウ氏は当初、Windows To Goが「仕事でも出張先でも自宅でも使える端末」という夢のような世界をかなえてくれるのかと期待したという。ARMベースのタブレット端末を自宅用の設定で1台持っておけば、出張先であれ会議中であれ、その端末にWindows To GoのUSBメディアを装着するだけで事足りるという世界だ。
さらにそのUSBメディアをデスクトップPCに装着すればWindows 8デスクトップ環境も使えるものと同氏は期待していたという。「だが残念ながら、ARMと64ビットハードウェア間の素早い切り替えは期待できそうにない」と同氏。
それでもなお、Windows To Goのコンセプトには幾つか魅力的な点がある。
「私は時々、地元の法科大学院の法律図書館を利用する。そのようなとき、わざわざPCを持って行かなくても、Windows To Go用のUSBメモリさえ持って行けば、図書館にあるコンピュータで用が済む」と米独立系調査会社Directions on Microsoftのアナリスト、マイケル・チェリー氏は言う。
さらにWindows To Goについては、ライセンス体系に関する疑問点も残っている。Windows To Goは企業ユーザー向けの機能であるため、恐らくMicrosoftの企業向けライセンスとソフトウェアアシュアランス(SA)が必要となるだろう。Microsoft以外の端末での使用についても、ライセンスで規定されることになる。一部のアナリストは、Windows To Goを利用する場合にWindowsライセンスの追加購入が必要となるかどうかにも注目している。
「Windows To Goがどれだけ有用なアプローチかは、ライセンス体系に関する疑問が解けた時点ではっきりするはずだ」とチェリー氏。
Windows To Goのライセンス体系について、Microsoftはまだ明らかにしていない。
管理の面では、USBメモリからWindows 8が起動された場合でも、IT管理者は通常のノートPCやデスクトップPCを扱うのと同様、グループポリシーやソフトウェア配信機能などを使ってWindowsイメージを提供できる。Microsoftによると、ユーザーがログオンした時点でポリシーがプッシュされる仕組みだという。
さらにWindows To Goではパスワードやディスク暗号化機能「BitLocker」を使ってデータを暗号化できるため、USBメモリの紛失や盗難に関する懸念を最小限に抑えられる。
Windows To Goのプレビュー版をテスト
ロウ氏によると、Windows 8のコンシューマープレビュー版のISOイメージをUSB 2.0のメモリにロードするには4時間以上かかり、設定にさらに数時間がかかるという。ただしUSB 3.0にロードするのであれば、所要時間は大幅に短縮される。MicrosoftはUSB 3.0の使用を推奨している。
ハードウェアの要件はまだ発表されていないが、MicrosoftはBUILDのセッションにおいて、Windows To Goを使用する要件としてポートまでのハブの接続段数を最小限に抑えたシステム構成、信頼度の高いUSB起動をサポートするファームウェア、USB起動エントリをサポートするUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)ファームウェアを挙げている。USBメモリには32Gバイト以上の容量が必要だ。
コンピュータでの起動に際しては、初回起動時のみ、ドライバのインストールに20分ほどかかる。ロウ氏によると、USBから起動した後の5分間ほどはユーザーインタフェースの反応が鈍いという。
「いったん全てが整えば、非常にきびきびと動作する。ただしアプリを開こうとすると再び動作は鈍る。そのため、Metroアプリの中にはロードできないものもある。Windows Updateも対応していないようだ」と同氏。
もっとも同氏によれば、こうした問題は製品版のリリースまでには解消されるはずという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[Datadog Japan合同会社] Wantedlyのオブザーバビリティはどう進化したか 10年の軌跡と実装の変遷 -
事例
[Datadog Japan合同会社] エラー検知から原因調査までを最短5分で、日経新聞に学ぶアプリ監視の改善方法 -
製品資料
[Datadog Japan合同会社] クラウドのコストと利用状況を可視化&最適化、「Datadog」の実力とは? -
事例
[Datadog Japan合同会社] クラウド移行で見えた監視の死角、SBI証券が選んだ統合オブザーバビリティ実践 -
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] リソースに限りのある中堅企業で「多層防御」の運用負荷をどう乗り越える?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ITエンジニア1265人調査 生成AIを使い込むほど「人の確認」が重い理由
-
2
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
3
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
4
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
5
「有線LAN環境」に関するアンケート
-
6
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
7
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
8
高額GPUを買っても成果ゼロ? 「プライベートAI」の落とし穴
-
9
「最大の脆弱性は従業員」が8割 AI活用で深まるCISOの孤立と苦悩
-
10
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
2
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
6
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
7
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
8
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー