CIOの知恵袋:SAP ERP開発編
SAP ERP導入のテストフェーズを推進する3つのポイント
SAP ERPの品質向上に欠かせないテストフェーズ。掛けられるコストや工数には限界があるため、効率的で要点を押さえたテスト計画が必要になる。3つのポイントを解説する。
SAP ERP導入フェーズの中でテストフェーズは最も工数が必要となる。そのため要点を押さえた推進が重要だ。SAP ERP導入に必要なテストは下図に示した通りであるが、今回はテストフェーズを円滑に推進するために確認したいポイントを紹介する。
(1)適切なタイミングで適切なバグを出し尽くすべし
適切な工数で適切な品質を得るためには、テストの目的を整理し、適切な検証を実施することが必要である。これらのテストを実施するに当たり、品質管理上で押さえるべきポイントは以下の2点となる。
- 発生している障害内容はテストの目的に対して適切か
本来は前フェーズで出るべき障害、バグがテストで多く見つかる場合、前フェーズでのテスト信頼性が低い。
- テスト実施件数・障害発生件数は妥当か
障害が多過ぎる領域には根本的な課題があり得る。また、少な過ぎる領域はテストの信頼性が低い。
この2点は品質を計測するための指標となる。この2点を照らし合わした上で、先手先手の対策を打つことより、影響の肥大化を防ぐことができる。例えば、ある特定の領域においてエラー処理記述の誤りが結合テストで見つかった場合、当該領域において同じような別の潜在的な障害が潜んでいる恐れがある。誤りが見つかったタイミングで当該領域に対して横ぐしの確認を行うことで、後続フェーズでの障害発生リスクを低減できるだろう。これによって一時的に工数は増えるが、後続フェーズにおける発見で工数を肥大させることを考えれば、結果的に負担は小さくなる。
(2)自動化すべきものを選別し、テストの自動化を促進すべし
世間にはさまざまなテストツールが出回っている。ぜひこれらのツールを有効に活用し、テスト自動化のメリットを享受してほしい。テストの自動化により得られるメリットには以下のようなものがある。
- 導入時テスト実施工数の削減
- オフショア活用の促進
- 本番運用開始後の検証工数削減
つまり、自動化によるメリットは導入段階だけではなく、本番運用開始後にも受けられるのだ。ただ、どのようなテストでも自動化すれば効果が出るということではない。自動化を成功させるには幾つかのポイントがある。まず重要なのは、何を自動化すべきかを把握することだ。次に人手でどの程度きちんとテストができているのかを判断すること。最後に自動化できない部分や、自動化で発生する手間を評価することとなる。
自動化の対象として、例えば障害・仕様変更発生時のリグレッションテスト(既構築機能に対する再検証)が考えられる。システム規模が大きくなればなるほど、またフェーズが進めば進むほど、1つの変更に伴う影響範囲は拡大し、再検証のための工数は膨大なものとなる。だが実施内容はパターン化が可能であり、再実行頻度も高い。
このようにパターン化できるものこそ、正しく評価した上で、テストの自動化を進めるべきである。また、自動化による検証漏れを防ぐためにも、自動化対象パターンそのものの継続的なメンテナンスは必要である。
(3)開発アプローチの特性に応じた、補完的なテストを企画すべし
SAP ERP導入に際しては、標準的なテストに加え、ユーザー企業の業務特性/既存システムを含めた周辺システムの特性などにより、柔軟なテストのやり方が求められる。例えば、帳票・インタフェースの開発では、ドキュメントなどが残っておらず不明確な現行システムの仕様を新システムにおいて実現しなければいけない場合がある。これを実現できなければ業務に支障を来たし、大きなトラブルとなりかねない。
ERP導入におけるユーザー参加についての記事
現行システムの仕様が新システム上で実現できているかを確認する1つの方策としては、現行システムとの処理結果比較テストが考えられる。例えば、本番実稼働している既存システムと新システムに同じデータを投入し、データパターンに漏れがなく、出力が完全一致しているかどうかを業務部門のユーザーおよび既存システムの担当者が確認する方法である。
SAP ERP開発に関するテストでは、業務改革の推進を前提としつつも、通常のテストだけでなく、ビジネスニーズやシステム特性を踏まえたテストの実施も必要だ。
望月竜介
アクセンチュア株式会社
テクノロジー コンサルティング本部 SAPビジネスインテグレーショングループ シニア・マネジャー
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