MS直撃「次期Exchange Serverはどうなる?」
スクリーンショットで見る、Exchange Server 2010の新機能
現在β版を公開中の「Microsoft Exchange Server 2010」。現行バージョンまでのユーザーからのフィードバックを基に強化された各機能を、スクリーンショットを交えて見ていこう。
マイクロソフトが提供する総合メッセージングプラットフォーム「Microsoft Exchange Server」が「Microsoft Exchange Server 2010(開発名:Exchange 14)」としてさらなる進化を遂げようとしている。現在は全世界で約230社がβ版の評価を行っており、2009年末の正式リリースに向けた歩みも順調だ。本稿ではマイクロソフトへの取材を基に、ユーザーからのフィードバックを受けて追加されたExchange Server 2010の新機能を中心に紹介する。
「S+S」をテーマとした機能拡張
現行バージョンのExchange Server 2007では、より少ない物理サーバで大容量に対応できる64ビット版のみでの提供形態や、可用性に関する強化機能が話題となった。また、1つのサーバに全機能を盛り込む従来型のアーキテクチャではなく、役割ごとにサーバを分けて大容量や高トラフィックに対応する役割別モデルを採用したのも特徴といえる。そして、このExchange Server 2007が持つベーステクノロジーを継承した機能拡張版が、次期バージョンのExchange Server 2010となる。
Exchange Server 2010で重要なテーマの1つに挙げられているのが、マイクロソフトが提唱する「S+S」(Software+Service)への対応だ。S+Sとは、社内に設置するサーバ製品とクラウド上のサービスを統合運用し、ユーザーに新しい価値やさらなる利便性を提供しようというもの。このS+Sを前提条件に、クラウドサービスプラットフォーム「Azure Service Platform」などの技術を用いてExchange Server 2010は各機能を強化している。機能的にはExchange Server 2007が持つ「柔軟性と信頼性」「場所を問わないアクセス」「保護&コンプライアンス」という3つの価値を継承・強化しつつ、S+Sに対応した最適化が図られている。
Exchange Server 2010から採用された主な新機能を、前述したExchange Server 2007が持つ3つの価値に分類すると以下のようになる。いずれもExchange Server 2007ユーザーからのフィードバックを受けて追加されたものであり、システム管理者やユーザーの利便性の向上を目的としている。
Exchange Server 2010における主な新機能
柔軟性と信頼性
- S+Sに対応した共存運用が可能なアーキテクチャ
- より強化された可用性と事業継続性を1つのソリューションで提供
- 役割別の管理権限を与える「役割モデル」と「セルフサービス機能」
場所を問わないアクセス
保護&コンプライアンス
- 一括して承認プロセスを設定できる「トランスポートルール」
- 誤操作に対する注意を促す「メールチップス」機能
- サーバ側でのPSTファイル管理とくし刺し検索
それでは、Exchange Server 2010の新機能をスクリーンショットを交えて詳しく紹介していこう。残念ながら次期「Microsoft Office Outlook」(以下、Outlook)はテクニカルプレビューを開始したばかりのためスクリーンショットを入手できなかった。そのため、本記事に掲載するスクリーンショットは「Outlook Web Access」から接続した、開発中のExchange Server 2010の画面である。
企業のビジネス価値を高める柔軟性と信頼性
Exchange ServerとExchange Onlineのハイブリッド運用
Exchange Server 2010は、社内サーバで運用するExchange Serverと、Exchange Serverのホスティングサービス「Microsoft Exchange Online」(以下、Exchange Online)のどちらからでも、電子メール、予定表、アドレス帳の各機能を利用できる。これにより、「東京本社は社内のExchange Serverに接続し、サーバを設置するまでもない少人数の営業所ではExchange Onlineを利用する」といったハイブリッド運用が可能となる。すべてを社内環境でそろえた場合と比べてコストメリットが生まれる場合があるほか、機密保持やコンプライアンスの観点から一部社内サーバを残したい場合にも有効だ。
可用性と事業継続性
Exchange Server 2007ではWindowsクラスタをベースに高可用性の実現を図ったが、ユーザーからは「4種類ほどの設定を組み合わせる展開方法が複雑すぎる」という声もあったという。そこでExchange Server 2010では、Windowsクラスタを使わずに独自のレプリケーション技術で1つのアーキテクチャへと集約した。展開や管理が容易になったのはもちろん、ローカルのデータ複製から遠隔サイトでのデータ複製まで柔軟に対応でき、高可用性と迅速な回復を実現している。また、以前はメールボックスの移行の際はサービスを停止する必要があったが、ユーザーが利用中に移行できるという副次的な効果ももたらしている。
さらにExchange Server 2010では、大容量のメールに対応するべくデータベースの最適化も図られている。ディスクI/OはExchange Server 2007と比べて約2分の1、Exchange Server 2003と比べると約10分の1まで削減し、レスポンスを向上している。また、ストレージに安価なSATAタイプが使用できるなど、情報の内容や使用頻度に応じた選択肢も拡大した。
役割別管理機能の強化
役割別の管理機能については、従来Exchange Server上の変更が必要になった際、社内サーバならシステム管理者に、オンラインサービスであればサービスプロバイダーやマイクロソフトに、変更依頼を毎回出す必要があった。Exchange Server 2010では、ユーザー自身が「Exchange Control Panel(ECP)」上から連絡先情報の更新や受信ボックスのルールを定義するといった変更を行える「セルフサービス機能」で解決を図っている。
また、システム管理者が、法務責任者や人事担当者、ヘルプデスクといった特定業務の専門家に対して役割別の管理権限を与える「役割管理モデル」も大きな特徴だ。このセルフサービス機能と役割管理モデルを併用すれば、人事担当者が人事異動による社員情報の更新を自力で行ったり、ヘルプデスクで一定期間だけメールボックスを増やしてほしいなどの要望にも迅速な対応が可能だ。つまりシステム担当者の負担が減るだけでなく、エンドユーザー側の利便性も向上するわけだ。
幅広いアクセス環境を実現
Exchange Serverが持つ特徴の1つに、OutlookからだけでなくWebブラウザ経由や携帯電話からでも同じ情報にアクセスできることが挙げられるが、今回はこうしたアクセスの利便性も向上している。一番の違いがWebブラウザ対応で、Exchange Server 2007までがInternet Explorerのみのサポートだったのに対し、Exchange Server 2010からはFirefoxおよびSafariにも対応している。今まで「Windows以外の端末があるからExchangeの導入を見合わせていた」という企業には朗報といえる。一方で携帯端末に関してもWindows Mobile搭載機に加えて、「Exchange ActiveSync」対応のiPhoneなどからのアクセスも実現している。
また、外部のパートナーや家族と予定表を共有したい場合は、個人認証サービス「Windows Live ID」との連携機能が効果を発揮する。これは、Windows Live IDで認証した相手に対して予定表の参照権限を与え、スケジュールを公開しているWebサイトへと誘導するというもの。例えば、Windows Live IDでプライベートの予定を入れておき、会社のExchange Serverと同期するといった使い方もできるようになるという。日本のユーザーからは「プライベートの予定と仕事の予定を共有したい」という要望はあまりないが、海外で多く上がった要望だという。
また、ビジネスでは1つの案件に対して何度もメールをやりとりする、1人が複数案件を担当する、といったことは日常茶飯事だ。メールの前後関係や履歴の管理が複雑になり、場合によっては重要なメールを見失ってしまうこともあるだろう。そこでExchange Server 2010では、会話の前後関係を分かりやすく表示する「カンバセーションビュー」を採用した。この機能はメールの流れを自動的にスレッド化してくれるため、フォルダへの仕分けルールを使っている場合でも1通の電子メールから簡単に会話の履歴をさかのぼることができる。
特にエンドユーザーにとってうれしい機能が、メーリングリスト(グループ)を自分で作成できるようになったことだ。情報システム部門に新規のメーリングリスト作成依頼を出さなくても、自らオーナーとなり、新規のメーリングリストを作成できる。また、多くのグループウェアでは、各ユーザーのアカウント情報は情報システム部門が一括して設定する場合が多いが、Exchange Server 2010ではアカウント情報をユーザー自ら変更できるようになっている。
現代ビジネスに必須のセキュリティ&コンプライアンス機能も強化
Exchange Server 2010は電子メールによる情報漏えいを強制的に排除する機能が追加されている。Exchange Server 2007でもメール送信者に対して転送やコピー、印刷などを禁止する権限が設定できたが、オペレーションミスで保護をかけ忘れた場合は情報が流出する危険があった。そこで管理者側から一括してルールを適用する「トランスポートルール」を新採用し、キーワードやメールアドレス、ドメインなどの条件に合致したすべてのメールを自動保護の対象にすることが可能になった。
さらに、ユーザーの誤操作による情報漏えいを防止するべく搭載されたのが「メールチップス(Mail Tips)」機能だ。これは、事前にルールを設定しておき、ユーザーが送信ボタンを押す前に警告を表示するというもの。例えば、あて先に外部ドメインのユーザーを入れると「外部にメールを出そうとしていますが大丈夫ですか?」、大容量の添付ファイルに対して「大きいサイズのメールですが大丈夫ですか?」などのメッセージで、ユーザーへの注意を促す。強制的にメールを止めたい場合はトランスポートルール、注意喚起で構わない場合はメールチップスといった使い分けができるのは非常に便利だと感じた。
Exchange Server 2010では、今までユーザーが管理していた電子メールのPSTファイルをサーバ側で管理できることに加えて、「multi-mailbox search」で複数のメールボックスを対象にくし刺し検索が可能になったのも大きな進化だ。米国では電子情報開示(e-Discovery)により、裁判所から電子メールを含むデータの提出を要求されるケースがある。このような情報開示が必要になった際、従来は一度バックアップを作成してから特別なソフトウェアで検索を行うため、多大な手間やコストが掛かっていた。しかしExchange Server 2010ならば、くし刺し検索およびセルフサービス機能・役割管理モデルを組み合わせることで、法務責任者が情報開示請求に対して迅速かつ容易に複数メールボックスの全検索を行えるようになっている。
Exchange Server 2010の関連製品も正式リリース時から続々と登場
Exchange Server 2010の主な機能を紹介したところで、続いては関連製品の対応予定を見ていこう。まずIT管理ソリューション「System Center」については、次期製品として2010年リリース予定の高速バックアップソフトウェア「System Center Data Protection Manager 2007」を除いてExchange Server 2010の出荷から90日後に対応を予定。セキュリティソリューション「Forefront」についても2009年10月から2010年上期にかけて対応するという。また、ISVでも数多くの関連製品を開発しており、こちらは早いものでExchange Server 2010の正式リリース時から対応する予定だ。そのほか、7月1日より開始されるSIパートナー企業向けの支援サービス「Services Ready」において、Exchange Server 2010向けのメニューを提供する準備も行われている。
ちなみにExchange Server 2010の標準クライアントとなる次期Outlookについては、テクニカルプレビューを開始したばかり。Office 2007から採用されたリボンインタフェースにより操作性が向上するほか、カレンダー周辺も大幅な機能強化が図られるという。
このように、ユーザーからのフィードバックを受けて大幅に機能強化されたExchange Server 2010は、現在着々とリリースに向けた準備が進められている。2009年末の正式リリース時には、数多くの企業が新しいビジネス価値を手に入れることになるだろう。
取材対応
マイクロソフト株式会社
インフォメーションワーカービジネス本部 ユニファイドコミュニケーショングループ
エグゼクティブプロダクトマネージャ
齋藤義憲氏
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