エンタープライズ向けストレージ製品紹介:総括(後)
ビッグデータからクラウドへとつながるストレージの潮流
データが増え続けるビッグデータ時代に対応できるよう、ストレージベンダーは自社製品にさまざまな工夫を盛り込んでいる。この傾向は今後も当分続くと考えられる。
前回の「徹底比較! 主要8社のハイエンド向けストレージ製品」に引き続き、連載「エンタープライズディスクストレージ製品紹介」で紹介したエンタープライズ向けストレージ製品の動向を踏まえ、ストレージ市場全体のトレンドや今後の展望などを総括する。
連載インデックス
- 日本ヒューレット・パッカード:QoS制御とデータ階層管理の自動化を実現する「HP StorageWorks P9500」
- 日立製作所:ストレージ階層の仮想化・自動化を実現する「Hitachi Virtual Storage Platform」
- 富士通:最大容量と可用性にこだわったハイエンドストレージ「ETERNUS DX8000」
- EMCジャパン:仮想化・クラウド時代のストレージ「Symmetrix VMAX」
- ネットアップ:独自のキャッシュ技術でストレージの階層化を実現する「FAS6200シリーズ」
- 日本オラクル:ZFSを活用した拡張性が強み「Sun ZFS Storage Appliance」
- デル:データ管理を自動最適化するストレージ「Dell Compellent」
- 日本アイ・ビー・エム:ビッグデータ管理を簡素化するストレージ「IBM XIV Storage System Gen3」
ビッグデータ時代、さらに多様化するストレージ製品
「ビッグデータ」という言葉が最近よく聞かれるようになったように、今日のエンタープライズ向けストレージ製品では「増え続けるデータをいかに効率良く管理できるか」を問われている。その点について、各ストレージベンダーは自社製品にさまざまな工夫を盛り込んでいる。こうした傾向は今後も当分は続くものと思われる(関連記事:ゼタバイト時代の企業ストレージ環境とは)。
日本アイ・ビー・エムの「IBM XIV Storage System Gen3」は、スケールアウト型のアーキテクチャを採用している。スケールアウト型というと、少し前まではファイルサーバ用途で使われるローエンド、ミドルレンジ向けNAS(Network Attached Storage)製品というイメージが強かった。現在はハイエンドストレージにもスケールアウト型の製品や、スケールアップ型であっても柔軟な拡張性を重視する製品が増えている。
例えば、EMCジャパンの「Symmetrix VMAX」は、「VMAXアーキテクチャ」という独自の方式でストレージアレイのコントローラー部が複数のモジュールからなる「グリッドアーキテクチャ」を採用している。基本的にコントローラーの拡張は、追加のモジュールを筐体に挿し込むだけで済む。
また、データ容量の拡大に対して独自の方式で対処しているのが、日本オラクルの「Sun ZFS Storage Appliance」だ。この製品はSolarisに搭載される最新のファイルシステム「ZFS」の機能を活用することで、従来のOSでは扱うことが難しかった大容量ファイルを簡単に扱えるのが特徴だ。
しかし、全ての製品が「大容量ファイルデータへの対応」「運用管理の自動化」という方向に進んでいくわけではない。特に、ミッションクリティカルな基幹系システムで利用されるストレージ製品には異なる要件が存在する。つまり「効率性やコストよりも、極限まで高められた可用性と性能が求められる」のだ。
メインフレーム時代から大企業のミッションクリティカルなオンラインシステムの構築を手掛けてきたベンダーは、今もこうしたニーズに応えるための製品を提供している。また、今後もそうした展開は続けられるはずだ。そうしたベンダーの1社に富士通が挙げられる。同社は自社のストレージ製品に最新技術を積極的に取り込みつつも、今後もミッションクリティカルなシステムを抱える企業に対して、高可用性ソリューションを提供することを明言している。
従って今後、エンタープライズ向けストレージ製品の導入に当たっては、データやワークロードの種別、求められるサービスレベルなどを十分加味した上で、適切な製品を選ぶ必要があるだろう。「大容量だから大規模SAN(Storage Area Network)製品」「ファイルサーバ用途だから中小規模NAS製品」といった単純な切り分け方は、徐々に通用しなくなっている(関連記事:中堅・中小企業向けNAS市場が活況化した理由)。
クラウド時代を見据えた各ベンダーの製品戦略
では今後、エンタープライズ向けストレージの世界は、どのような方向に向かっていくのだろうか? ストレージの技術は他のIT分野の技術と同様、日進月歩で進化しているため、先を見通すことは極めて難しい。しかし、将来の傾向を予測するためのキーワードを幾つか挙げることは可能だ。
技術面で言えば「SSD(ソリッドステートドライブ)の価格性能比の向上」が、エンタープライズ向けストレージの市場を変革する可能性を秘めている(関連記事:企業向けSSD市場が活性化してきた本当の理由)。本連載でもSSDをデータ階層化やキャッシュの機能で有効に活用した製品を紹介してきた。しかし、SSDの低価格化がさらに進めば、徐々にHDDに取って換わる存在になるかもしれない。そうなれば、ストレージ性能の大幅な向上が期待できるだろう。
また、近年のITのトレンドを語る上では外すことができない「クラウドコンピューティング」(以下、クラウド)もストレージ市場に影響を与えつつある。クラウド環境を構築するためには、数多くのITリソースを一元的に管理する基盤の存在が欠かせない。ストレージの仮想化および統合は、そうした基盤を構築するための第一歩と位置付けることができる。さらに大規模なクラウド環境を構築するためには、単一のストレージ装置による統合の範囲を超え、より広範に複数のストレージを統合管理する必要がある(関連記事:クラウド以後のストレージ未来予想図)。
こうしたことから、各ストレージベンダーは現在、複数のストレージ装置を統合管理するためのツールの開発に力を入れている。ハイエンドからローエンドまで、異なる規模の製品をポートフォリオに持つ総合ベンダーの多くは、既に自社製品を同じツールで管理するための仕組みを提供している(関連記事:システム管理ツールを制するものがデータセンター市場を制す)。
一方で、これまで特定の規模や用途の製品しか持たなかったベンダーも、ここ数年で主に買収戦略により、自社のストレージ製品のポートフォリオを急速に拡充しつつある。デルとヒューレット・パッカードによる3PARの争奪戦は記憶に新しいところだが、この他にも大手ベンダーが中小規模のストレージベンダーを買収するケースが相次いでいる。こうしたベンダーは現時点では、統合管理という面では総合ベンダーに後れを取っているものの、すぐにキャッチアップしてくるはずだ。
このように今後しばらくは各ベンダーから、ビッグデータ、クラウドをキーワードにしたストレージ製品やサービスが提供されることが予想される。
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