Google Appsの企業利用を考える【第5回】
クラウド移行の不安を解決するGoogle Apps拡張セキュリティ製品
これまでのグループウェア環境からGoogle Appsに移行を考える場合、やはりセキュリティ要件に懸念が残る企業は少なくない。本稿では代表的なセキュリティ拡張製品を紹介する。
Google Apps拡張製品とはどのようなものなのか
本連載の第4回「Googleに聞くGoogle Apps導入のメリットとユーザーの声」で、Google Apps for Businessのグローバルスタンダードな開発方針やコンセプトについて概説するとともに、それから外れる機能はGoogle Apps拡張製品というツールがリセラーや開発パートナーから提供されていることを説明した。
これらの拡張製品は、Google Appsに標準では実装されていない機能を安価に提供することで、Google Appsをグループウェアとして本気で使い倒そうと考える企業の意思決定を後押しするものである。Google Appsと連携してGoogle Appsと同じID・パスワードで利用できるのはもちろん、Google Appsのメール(Gmail)やドキュメントと連携したり、Googleの高可用性オプション(High Replication Datastoreオプション)で動作させることで高い信頼性を提供したりと、さまざまな特色を持っている。
こうした拡張製品の中で特に需要が多いのが、前回「Googleに聞くGoogle Apps導入のメリットとユーザーの声」でもGoogle藤井氏が言及していたセキュリティ拡張製品とワークフロー拡張製品である。本稿から2回に分けて、これら2種類の拡張製品の代表的な製品を紹介する。
セキュリティ拡張製品が求められる背景とは
「Googleに聞くGoogle Apps導入のメリットとユーザーの声」で解説したように、Google Appsは高いセキュリティを保って開発・運用されている。しかし、それはGoogleの管理が行き届いているデータセンターの中の話が主であり、「エンドユーザーのパスワードが漏えいしたり、デバイスが盗難に遭ったりした際のセキュリティについては十分とはいえない」と考える企業もある(注:Googleでもモバイルデバイスへのセキュリティ対策は行っている)。
企業によっては、グループウェアを含む業務アプリケーションの利用に当たって、社内からしかアクセスできない、もしくは登録されたデバイスからしかアクセスできない、といったセキュリティポリシーやパスワードの複雑性を高めるルールが設定されていることがある。こうした企業がセキュリティポリシーを緩めてクラウドを使い始めるかというと、現実的には非常に困難であると言わざるを得ない。こうした課題に対して、社内と同じルールを適用できる「安心」を提供するのが、Google Appsのセキュリティ拡張製品である。
Google Appsのセキュリティ拡張製品は、業務上ノートPCの持ち歩きがどうしても必要な企業や、ユーザーのアクセスを管理したい企業などに多く導入されている。今回は、セキュリティ拡張製品として代表的な2つの製品を紹介する。
国内での導入実績が豊富な「Cloud Gate SSO」
インターナショナルシステムリサーチの「Cloud Gate Single Sign On(SSO)」は、2008年から提供されている老舗のセキュリティ拡張製品である。主に300~500人規模の中堅企業を中心に13万ユーザーの実績を誇る。2010年ごろからは数千人規模の企業への導入も増えているという。アクセス管理の機能を主軸に機能を充実させており、PCからのアクセスだけでなくスマートフォンなどのモバイルデバイスからのアクセス制限(デバイス制限やIPアドレス制限など)を行ったり、アクセス履歴を取得したり、パスワードポリシーを決めて、細かく設定したりできる。また、IMAPやPOPなどのプロトコルを利用したメールクライアントからのアクセス制限も可能である。
最初の認証はCloud Gate SSOで行われるが、認証が通った後はCloud Gate SSOを介さずに直接Google Appsと通信するため、パフォーマンスに影響はない。また、セキュリティ以外の他のGoogle Apps拡張製品とも多くの場合共存が可能だ。iPhoneからのアクセス管理には専用のアプリケーションが必要だが、これも端末IDの管理を行うだけなのでパフォーマンスの心配は不要である。
また、Cloud Gate SSOはセールスフォース・ドットコムのプロダクトとの連携や、Active Directoryとの連携も可能である。Google Apps+Salesforce CRMで情報系も業務系も丸ごとクラウド化しつつ、社内のWindows環境やメールクライアントとも連携させたいと考えている企業にとって有力な選択肢となるだろ。
| 製品名 | Cloud Gate SSO |
|---|---|
| 価格 | 月額200円(税別)/1アカウント |
| 備考 | 年間単位での利用。低価格の「Cloud Gate Light」もラインアップ |
海外の実績も多い「CLIP IAS クラウド統合認証サービス」
「CLIP IAS クラウド統合認証サービス」は、クレジットカード会社にセキュリティ認証機構を提供している米Arcot Systems(2010年にCA Technologiesが買収)が提供する認証サービスを、SCSKがOEM提供しているGoogle Apps拡張サービスだ。Cloud Gate SSOと同様に、IPアドレスやデバイスによるアクセス制限機能、Salesforce CRMなどのGoogle Apps以外のクラウドサービスとのシングルサインオン(SSO)機能も備えている。
CLIP IAS クラウド統合認証サービスは多くの特許取得済み認証技術を備えており、ハードウェアトークンを必要としないワンタイムパスワード機能やリスクベース認証、秘密の質問の設定によるパスワードリセット機能なども備えている。高いセキュリティ機能を提供しながらユーザーにとっても利便性の高い機能を多く提供し、管理者の運用負荷が少ないことが特徴だ。なお、CLIP IASはActive Directoryとパスワード同期するような社内連携機能は備えていない。全ての業務をクラウドで行う点にフォーカスした企業であれば、より強固で利便性の高い認証機能による安心安全なワークプレースを整備できるだろう。
| 製品名 | CLIP IAS クラウド統合認証サービス |
|---|---|
| 価格 | 月額200円(税別)/1アカウント |
| 備考 | 年間単位での利用 |
セキュリティ拡張製品はどのような基準で選ぶべきか
Google Appsのセキュリティ拡張製品はこれら2製品だけでなく、今後も新しい製品が出てくるだろう。だが、製品を見比べて、機能が多い/少ない、連携対象が広い/狭いといった表面的な比較だけで選ぶべきではないと筆者は考える。セキュリティ対策には完璧がない。自社の業務特性や保護すべき情報資産を見極めて、必要以上に多くの機能や広範囲なアプリ連携を追求しないよう、適切な製品を選んでいただきたい。
飛鋪武史(ひしきたけし)
日本技芸 取締役 ビジネスサービス事業部長
青山学院大学理工学部卒業後、富士総合研究所(現みずほ情報総研)、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、ガートナージャパンを経て、日本技芸に入社。製造業、通信業、金融業、官公庁などさまざまな業界で多数のITグランドデザイン、ITコスト削減、プロジェクトマネジメント、情報分析・可視化・指標化などのコンサルティングを手掛けるとともに、ワークプレースやコラボレーションに関する数々の調査プロジェクトの経験を持つ。それまでの経験を生かし、人がITを使いこなし、真の生産性向上を図るためのインタラクティブデザインにフォーカスした「rakumo」シリーズの事業責任者を務める。
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