ITRアナリスト 浅利氏が解説
【技術動向】ERP製品選択で注目したい7つのテクノロジー
ERPを選ぶ上では技術的要素の確認も重要だ。技術はERPの使い勝手やコストに直結する。講演を基に製品選択で参考となる2015年までのERPの技術トレンドを紹介する。
基幹系業務システムやERPを取り巻く技術は日々進化している。ERPというと業務プロセスやビジネスロジックなど上位レイヤーが注目されるが、インフラやユーザーインタフェースの進化も、ERPの使い勝手や運用管理性に大きな影響を与える。本稿では5月10日に行われたアイ・ティ・アール(ITR)のセミナーで講演した同社 プリンシパル・アナリスト 浅利浩一氏の説明を基に、ERPが今後取り込むであろう7つの注目テクノロジーを紹介する。
注目すべき7つのテクノロジー
浅利氏は主要なERPベンダーは2015年までに以下の7つのテクノロジーを強化すると説明した。「基幹系システムを刷新するタイミングではこの7つの技術に注目してほしい」
- モバイル
- マルチデバイス
- クラウドコンピューティング
- 超高可用性技術
- インメモリ技術
- マルチBI(ビジネスインテリジェンス)
- BPM(ビジネスプロセスマネジメント)
それぞれの動向を解説しよう。モバイル、マルチデバイスへのERP対応についてはオラクルやSAPなど各ERPベンダーが対応製品を出している。特にSAPはモバイル開発基盤の整備などに力を入れている。各社がモバイルやマルチデバイス対応を強化する背景には、「ユーザー経験の向上がビジネス価値のアップに貢献する」という考えがある。ただ、モバイルやマルチデバイスに対応しただけでは他のERPベンダーと差別化することは難しく、浅利氏は「既にコモディティ化の様相を呈している」と指摘している。ユーザー企業の売り上げ向上に直接的に貢献できるようなモバイル基盤をERPベンダーが開発できれば、大きなブレークスルーになるだろう(参考記事:動画で見る、スマートフォン対応ERPの最前線)。
クラウドコンピューティングへの対応では、パブリッククラウドだけ対応、プライベートクラウドだけ対応というERPベンダーは少ない。多くはパブリックとプライベート、オンプレミスを組み合わせた「ハイブリッドクラウド」を訴えている。ERPベンダーやユーザー企業にとっては、これまでオンプレミスに投資してきたERP資産を無駄にすることなく、クラウドのメリットを得ることができるからだ。
ユーザー企業がクラウドを選択する場合は、利用技術と同時にデータセンターの場所も確認する必要がある。海外にある場合、自社のデータがその国の法規制の影響を受ける可能性がある。特に財務データなどを扱うERPでは慎重に検討する必要がある。一部のERPベンダーやSIerはこのような法規制を避けるため、日本国内でデータセンターを運用する「ローカルパブリッククラウド」を打ち出している(参考記事:比較表で一覧可能、クラウドERPのコストを比較する)。
人事管理システムを今後検討する企業にとっては、パブリッククラウドで稼働するパッケージが有力候補になりそうだ。ERPを構成するさまざまな製品分野の中で、人事管理システムは最も速いペースでパブリッククラウド化が進んでいる。浅利氏によると、海外でのパブリッククラウドを使った人材管理システムの成長率は15%程度で、これは他の分野に比べて2倍以上の成長率という。国内も20%の成長率だ。浅利氏は「中堅企業だけでなく、人事管理プロセスの変革に関心が高い大手グローバル企業でも採用が進みつつある」と話した。
可用性99.99%をどう超えるか
上記にも関係するが、基幹系システムをクラウド環境で利用する場合、その可用性は「99.99%が上限とみられる」(浅利氏)。開発環境やテスト環境で使うなら、この可用性でも問題ないが、本番環境では心もとないといえるだろう。ERPベンダー側もこの問題は認識していて、99.99%以上の超高可用性への取り組みを続けている。
代表的な取り組みはサーバとストレージ、ネットワークを一体化して、さらにアプリケーションを最適化して搭載する「Oracle Optimized Solutions」だ。利用するコンポーネントやソフトウェアをあらかじめ決めることでシステム全体の信頼性を向上させることができる。さらにクラウド環境に対応したシステム運用手法なども高度化している。浅利氏は「2012年以降、99.99%を超える基幹系クラウドが登場することも考えられる」と述べた。
インメモリ技術のERPへの適用もベンダー各社がアピールしている。従来のRDBMSと比べて飛躍的にパフォーマンスが向上するという。インメモリ技術は当初、分析での利用が想定されていたが、ERPなどOLTP系アプリケーションでの活用にも舞台を広げつつある。代表格は「SAP HANA」だ。SAPは、既存のSAP ERPをはじめ、全てのアプリケーションをSAP HANAに対応させるとしている。現在はSAP ERPのデータベース部分は「Oracle Database」や「Microsoft SQL Server」が大半と思われるが、SAPはSAP HANAでそのリプレースを狙っている。インメモリ技術のアプリケーションへの適用についてはオラクルも「Oracle TimesTen In-Memory Database」「Oracle Exalytics In-Memory Machine」などで攻勢を掛けている。
インメモリ技術の動向でユーザー企業が今後注目すべきは、ERP側の対応だ。ERPが古いアーキテクチャのままだとインメモリ技術の性能を最大限に生かすことができない可能性がある。インフラやデータベース部分の進化に合わせてERPのアプリケーション部分も進化しているかを確認する必要があるだろう。その点ではインメモリ技術やクラウドを前提に開発されている「Oracle Fusion Applications」が注目される(参考記事:次世代ERP「Oracle Fusion Apps」から探るERP製品選択の未来)。
BI機能との連携を深めるERP
マルチBIはITRの造語だ。一般的な管理項目だけではなく、ユーザーが自らの関心に応じて柔軟に管理項目を設定できるBIを指す。BI製品は近年、分析担当者だけではなく、一般ユーザーを対象に機能や使い勝手の向上を図ってきたが、マルチBIはその構想をさらに進めることになる。
主要なERPはBIとの連携強化を既に打ち出している。SAP ERPであれば「SAP BusinessObjects」と連携、Oracle E-Business Suiteであれば「Oracle Hyperion」と連携するという形だ。今後はERP自体にBI機能を組み込むことが増えてくるだろう。Oracle Fusion ApplicationsはBIを組み込み、オペレーション画面とBIの分析画面を統合した。浅利氏は「マルチBIは、OLTPとOATPの統合で実現する。両方の仕組みを一体化し提供できるようになれば、ユーザーの用途に応じた情報提供が可能になる」と解説した。
BPMは「ワークフロー型」「コンテンツ管理型」「システム連携型」の3つの分野で重視されている。ワークフロー型はERPのアプリケーション開発やセルフサービス化に活用可能。コンテンツ管理型は、さまざまなデバイスとの連携に役立つ。システム連携型は、複数アプリケーションの共通サービス化を可能にする。
次世代アプリケーションの見極め
7つのテクノロジートレンドを押さえつつ、今後ERPを選択する上ではどのような観点が必要になるだろうか。浅利氏は「マルチテナント、インメモリ技術への対応、最新のソースコードが重要になる」と述べた。特に最新のソースコードに関しては、「柔軟性が高く、最新の技術トレンドを最大限活用できるアプリケーションとするためには、一枚岩で硬直化した旧世代のアーキテクチャを前提とした古いソースコードを書き直すことが先決」と話した。今後、ERPを選ぶ企業は、そのERPが新しいアーキテクチャに基づく次世代アプリケーションかを見抜く力が必要になるだろう。
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