PaaS事業者を3つに分類
特定の言語に縛られたPaaSは時代遅れ、注目はハイブリッド型PaaS
今後、企業システムは複数のクラウドと連携し複雑化することが予想される。柔軟なクラウド基盤を構築するためには、適切なPaaSモデルを選ぶことが重要だ。ハイブリッド型PaaSは有力な選択肢となるだろう。
クラウド市場は今後さらなる成長が見込まれているが、PaaS(Platform as a Service)事業者間の差異はごくわずかであり、適切な事業者選びが難しいのは無理からぬことだ。PaaSを使えば、クラウドアーキテクトは仮想マシンのプロビジョニングやOSの管理を行わなくても自身のコードと好みのスタックを利用できるため、インフラ管理に伴う諸問題を軽減できる。
柔軟性と融通性に富んだポータブルなエンタープライズクラウドを構築するためには、適切なPaaSモデルを選ぶことが重要だ。では実際、事業者を選ぶ際には、「プログラミング言語固有のPaaS」「特定の言語にとらわれないPaaS」「複数のクラウドにわたって開発と配備を調整するハイブリッド型PaaS」の3つのうち、どのタイプの事業者に注目すればいいのだろうか?
特定プログラミング言語用のPaaSは時代遅れ?
特定プログラミング言語用のPaaS事業者は、クラウドが普及し始めた当初ほど一般的ではなくなっている。こうした事業者は例えばJavaやRuby、Pythonなどの開発言語をサポートしていた。だが、全てのフレームワークを同時にサポートしていたわけではない。主に1種類の言語で作業している向きには、特定言語用のPaaSが最適なクラウド開発ツールとなるだろう。こうしたPaaSのメリットとしては、ホスティングされる開発環境に加えて、専門のサポートや価値が提供される点が挙げられる。
Python開発者とJava開発者には、特定言語用PaaSの選択肢が幾つかある。例えば、PythonベースのPaaSサービス「PiCloud.com」ではPythonプログラムに簡単にインポートできるライブラリが提供され、開発者はクラウド全体に自身のプログラムを配備できるようになっている。PiCloudは開発環境に取って代わるものではなく、顧客にクラウドベースのIDE(統合開発環境)を与えるものでもない。PiCloudが管理者に与えるのは、アプリケーションの計算集約的な部分をクラウドで実行させるためのコードだ。従って、これはアナリストや科学者など、大量のデータを扱い、Python開発環境を快適に使いこなせ、計算リソースへのアクセスを必要とする向きに理想的な選択肢と言えそうだ。
特定の言語にとらわれないPaaSは「より多くの言語」で「より高い柔軟性」を提供
複数のクラウドプラットフォームを組み合わせて利用する動きが広がりを見せている。米EucalyptusのCEO、マーチン・ミコス氏は先ごろ、「LAMPスタックは死んだ。クラウドが殺した」と断言したほどだ。実際はそこまでではないだろうが、スタックの各レイヤーが以前より多面的になってきているのは確かだ。PaaS事業者もそうした流れに同調し、今では特定の言語にとらわれないPaaS──最初は単一のフレームワークをサポートするモデルとしてスタートしたものも含め──が市場の大半を占めるに至っている。
米Cloud Foundry(関連記事:.NET環境も構築できる、Cloud Foundry4つの強み)やDotCloud、Red Hat(関連記事:注目のPaaSを一挙に紹介! ~Cloud Foundry、OpenShift、Herokuなど)などのPaaS事業者が想定しているのは、複数のプログラミング言語を用いる開発者だ。例えば、DotCloudで自社のアプリケーションをホスティングする場合、データサービスレイヤーではPostgreSQLやMySQL、MongoDBなどを利用できる。複数のデータベースをインストールして管理や保守を行う必要がないため、複数のデータベースを利用するために必要となる手間は大幅に軽減される。
特定の言語にとらわれないPaaSのメリットは、複数の言語とフレームワークをケースバイケースで使い分けられる柔軟性の高さにある。特定言語用PaaSと同程度のカスタマイズ(クラウドサーバ全体にコードを配備するためのライブラリなど)は見込めないが、ソースコード管理ツール「Git」などの汎用開発ツールはサポートされる。
ハイブリッド型PaaSを選ぶべきケースは?
もう1つのタイプのPaaSの特徴は、IaaS(Infrastructure as a Service)とオンプレミスのリソースの連係にある。例えば、米CloudBeesのPaaSサービス「AnyCloud」では、ユーザーは信頼性の高いホスティング事業者やオンプレミスのアプリケーションの作業負荷をデータセンター内で管理できる。コンシューマーはAmazon EC2にもOpenStackのプライベートクラウドにもインスタンスを配置して、単一のPaaSの一部として管理できる。
ハイブリッド型PaaSには幾つかのメリットがある。例えば、クラウドでの複製が実用的ではない大規模なOracleデータベースを管理しているような場合、そのデータベースはオンプレミスで保守する必要があるだろう。そのようなときには、ハイブリッド型PaaSを用いれば、PaaS環境で動作するアプリケーションからオンプレミスのデータにアクセスする柔軟性が提供される。
一部のハイブリッド型PaaSでは、デメリットとして、抽象化レイヤーの構成と保守が必要な点が挙げられる。ハイブリッド型PaaSの中には、社内である程度の管理を行えるだけの手間とノウハウを必要とするものもある。
PaaS市場は成熟期に入り、差別化が進んでいる。企業は開発言語とフレームワークに合ったPaaSモデルを選ぶべきだ。用いる言語が1種類で、専門のサポートを有効に活用できるようなら、特定言語用のPaaSが最適な選択肢となるだろう。ただし、クラウド環境の複雑化が進むにつれ、複数の言語やさまざまなスタックコンポーネントを組み合わせて作業する必要性も高まっている。そのようなケースにふさわしいのは、複数言語と複数のフレームワークをサポートするPaaSだ。クラウドとオンプレミスでアプリケーションやデータを複雑に組み合わせて用いる必要がある場合には、ハイブリッド型PaaSを検討するといいだろう。
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