IT変革力【第16回】

ネットコミュニケーション中心企業の創造性が弱い理由

ネットコミュニケーションを中心に活動を行う企業は「あちら側の企業」と呼ばれています。しかし、経営者からは「社員から同じようなアイデアばかりが出てくる」といった声が聞こえてきます。創造性豊かなはずの「あちら側の企業」において、なぜこのような問題が発生しているのでしょうか。

ネットコミュニケーションは何を生んだのか?

 梅田望夫さんの著書『Web進化論』の中では、Web2.0の時代には、将来型企業の理想像としてネットコミュニケーションを中心に展開する「あちら側の企業」が挙げられています。対面中心の「こちら側の企業」が足元にも及ばない、素晴らしい創造性を持った企業が描かれている訳ですね。例えば米国のグーグルや日本のはてなが「あちら側の企業」の代表と言われています。

 でも、なかなか教科書どおりうまくは事が進まないようです。

 日本でも多くの企業が「あちら側の企業」たらんとして、対面ではなくネットコミュニケーション中心の仕事文化を作り上げようと努力しています。例えばインスタントメッセージング中心の仕事文化を持つ企業が増えている訳ですね。

 でも最近、先進的と言われるITベンチャー企業など情報化の進んだ「あちら側の企業」で色々な面白い現象が起こっています。例えばオフィスがしんと静まりかえっている割には「社員から同じようなアイデアばかり出てくる、そして全体として革新的なよいアイデアがあまり出てこない」と経営者が嘆くケースも増えています。ネットコミュニケーションの進む創造性豊かなはずの「あちら側の企業」では、どのような問題が発生しているのでしょうか。

「あちら側の企業」の特徴と問題点

 IT活用の先進企業では、ネットコミュニケーションが主体となるため、部屋全体が静まり返っています。静かで誰も仕事に割り込まないオフィス環境の下ならば、さぞ創造性に優れた社員が多数育つと思います。

 昔、京都のコンサルティング会社が日本中で流行させたオフィスの生産性向上手法にDIPSがあります。外からの割り込みを遮断して一種の引きこもりのように仕事を集中して行う集中時間や、対外的な対話を含む雑用を行う雑用時間など、コミュニケーションの切り替えによって生産性を上げようという試みでした。DIPSによれば、仕事の割り込みは、突然他の社員から電話や体面で話しかけられることにより発生します。

 DIPSに影響されたためか、アイデアを考えている最中の外部的な割り込みは、折角わきあがったイメージを消し去るという理由から、一時IT活用の先進企業では忌み嫌われました。

 その結果「あちら側の企業」では、決められた時間でのプロジェクト・チームの打ち合わせ以外、インスタントメッセージングなど、ネットコミュニケーションを中心とした、隣の社員とも会話をする「あちら側の世界」が誕生しました。

 その結果、例外的に素晴らしいアイデアを出す一部の社員を除いては、「仕様から文言までそっくりな案が5つも6つも出てくる」ような状況が生まれました。でもオリジナリティが豊かな案はなかなか出てきません。

 ネットコミュニケーション環境を理想的に充実させているのに、これはどういう事でしょうか。

 また同時に「人間関係が希薄になり、議論から物事を生み出す力が失われる」という指摘もあります。これは社会に適応したり、人々に影響を与える社会化力が社員から失われたというような解釈もできます。

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