2008年の4月から上場企業に対して適用される金融商品取引法上の内部統制を巡って色々な議論が交わされています。無論、大部分の論者は、内部統制とは「仕組みの問題」であるというふうに主張し、具体的な解決法として大量のドキュメント作成と業務フローの見直しを挙げています。でも本当にそれだけで問題が解決するのでしょうか。プロジェクトメンバーの「心の問題」はプロジェクトの成否に無関係なのでしょうか?
問題を分かりやすくするため、第二次大戦を日本の失敗プロジェクトと想定して、ちょっと今年の終戦記念日に話題となった総理大臣の靖国参拝問題を例に取り上げて論じてみましょう。
我が国では戦争という過去の失敗プロジェクトの総括が、国としても国民の立場からも、概して十分できていないと言われています。そして、その現在的な象徴が首相の靖国神社参拝問題であると考えられます。
さて小泉首相は、靖国参拝は「心の問題だ!」と常々おっしゃっていました。
また90年代にアジア諸国に対し「心からのお詫び」を行った時の自社さきがけ連立政権の「村山首相談話」も、戦争という失敗プロジェクトを「心の問題」と捕らえていると考えられます。
小泉首相も村山元首相も「一国の首相が誠心誠意心から反省しているので、それでよいではないか」という基本姿勢な訳ですね。
一方、一部の与野党議員からは「靖国神社を非宗教法人化し国営にすべきだ」とか「A級戦犯を分祀せよ」という議論が出ています。これは明らかに靖国参拝問題を「仕組みの問題」として捉えています。「靖国神社という組織や参拝の仕組みに問題があるのだから、それを構造改革すれば良いではないか」という立場な訳ですね。
それでは戦争中、我が国と同盟関係にあり、同じような敗戦を味わった西欧のドイツの事例はこの問題にどのように取り組んでいるのでしょうか。西洋諸国もドイツも欧州での戦争を避けるためには「ナチスの台頭を二度と許してはならない」と「お互いの心の中」で考えています。
しかし、戦後処理の模範生といわれるドイツのアプローチは、完全に「仕組みの問題」としてナチスの問題(戦後処理の問題)を捉えています。
そのため、彼らは数十年の月日を擁してEU(欧州連合)を作り上げたと言われています。
ドイツとフランスにベネルクス3国を加えた欧州石炭鉄鋼共同体からEU(欧州連合)へと、それは長い間の仕組み作りに費やした歳月でした。
これはEU(欧州連合)という組織やプロセスを戦争再発防止、ナチス再発の防止策とするという仕組み発想です。共通の財政政策の採用、共通税制、共通の金融政策や学校教育レベルの統一などEU(欧州連合)の共通の仕組みがEU(欧州連合)諸国全体を制御し、しっかりした内部統制を作っています。その結果、たとえドイツで極右が台頭してもEU(欧州連合)を脱退でもしない限りは、ナチスの再来はなく、欧州諸国間では戦争は起こらないというアプローチです。
これを内部統制の基本であるコソフレームワークの視点で、ちょっと考えてみましょう。
「心の問題」というのは倫理観や規範に通じます。これはコソフレームワークの構成要素である「統制環境」上重要な点です。これをプロジェクトマネジメントに例えれば、プロジェクトメンバーの倫理観、誠意や高いモラルがあってこそプロジェクトは成功します。
一方、「統制活動」など他の要素の視点からは、組織やプロセスの統制の「仕組みの問題」が非常に重要なわけです。
この両者においてドイツ政府は日本政府より歴史的に先行しているという世界の評価がある訳ですね。
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