データ活用を全社で推進するならば「標準化」が大事だと、Exxon Mobilでデータ活用を主導する経営幹部のアンドリュー・カリー氏は考えている。それはなぜか。
石油大手Exxon Mobilでは、グローバル組織「セントラルデータオフィス」(Central Data Office)が全社のデータ活用を推進し、システム構築やルール策定を担っている。同部署でマネジャーを務めるアンドリュー・カリー氏に、データ活用を全社的な取り組みにするために取り組んだ内容について聞いた。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める上で、効果的なデータ戦略は重要な要素になる。Exxon Mobilが業界での優位性を持つ分野を生み出すに当たって、同社はさまざまな取り組みを進めているという。
「DXに関するExxon Mobilの野心は幅広い領域にわたる」とカリー氏は話す。「例えば、事業部門が使用しているERP(統合業務)のモジュール10個を利用停止したいと考える。この変革を実行に移すには多大な努力が必要だ。結局のところ、DXの出発点は業務の中にある。業務を前進させるための原動力としてDXに取り組むのだ」(同氏)
カリー氏が率いるチームの役割は、Exxon Mobilの全業務でデータを有効活用できるよう支援することだ。業務の大部分は、同社がITで差別化を図れる領域と、標準化したデータ活用手法が役に立つ領域を見つけ出すことだという。「競合と比較して優位性のある領域を特定できたならば、それ以外の領域に関しては『カスタマイズをやめよう。業界標準を利用しよう。もっと標準化して、もっとデータにアクセスしやすくしよう』と提案できるようになる」とカリー氏は話す。
カリー氏の考えはこういうことだ。データ活用の仕組みを標準化することで、社内の誰もがデータを利用しやすくなる。そうすれば、信頼性の高いデータ(つまり、データを利用しやすいように加工したり、組み合わせたりする「データキュレーション」を実施していないデータ)を使って、さまざまな研究ができるようになる。
Exxon Mobilのビジネスにおける原動力は、企業全体の規模を生かして価値を発揮できているかどうかを確認することだ。サプライチェーンや取引において今以上にできることはないか。多岐にわたるサービスを統合すると、さらに多くのことが可能になるのではないか――このようなことを考えているという。
ただしその実現には、データのサイロ化(データの分散)を解消する必要がある、とカリー氏は指摘し、「全社規模でデータ活用に基づいた業務を実施するのであれば、昔ながらのサイロは必要ない。サイロは解体しなければならない」と強調する。
データ活用がExxon Mobilの成功を左右する鍵であることは明らかだ。「経営幹部は、データが持つ力がビジネスを一変させる可能性を理解すべきだ」とさまざまな専門家が主張しているが、Exxon Mobilはデータから得られる洞察の重要性を十分認識している。セントラルデータオフィスの設立がそれを証明している。カリー氏はそう考えている。
「データ戦略は、事業を後押しするためだけのものではない」とカリー氏は主張する。「データ活用がはやっているからやっているわけではなく、当社にとって必要な業務だから実施している。データ活用は業務にとって不可欠な取り組みであり、そのためには全社規模でデータを保持しなければならない。データ活用に対する関心の高まりを感じている」(同氏)
データ活用がビジネスの最前線にあるという考え方は、あらゆる企業に当てはまるとカリー氏は述べる。「経営層はデータが持つ価値を理解しなければならない。データはもはや、業務プロセスから生まれた副産物ではなく、資産だ」と同氏は説明する。実際に、同社の事業部門はデータの役割を理解し、活用している。
Exxon Mobilが躍進するためにセントラルデータオフィスが重要な役割を果たしていることを、カリー氏は光栄に感じているという。「Exxon Mobilはまさにデータドリブン経営を実践している。あらゆる先進的な事業がDXにつながり、データを必要としている。こうした戦略を主導できるのは刺激的な機会だ」(同氏)
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