ITを顧客体験や従業員体験の向上に生かすのが、米国男子プロゴルフの「PGAツアー」だ。具体的にどのようなITツールを活用しているのか。PGAツアーのファンエンゲージメント担当者に聞いた。
プロゴルフ競技団体のPGA TOUR(PGAツアー)は、モバイルアプリケーションやWebサイト、ソーシャルメディアからファンのデータを収集する上で、2022年秋にSAP傘下のQualtricsが提供するオンライン調査ツールを新たに導入した。これによりファンの感情、動機、要望を測定することは、PGAツアーの技術戦略の一つだ。
他にもPGAツアーは、顧客や従業員の体験を改善するために、さまざまなITツールを活用している。PGAツアーのファンエンゲージメント担当バイスプレジデントのトラヴィス・トレンバス氏に、IT活用の戦略を聞いた。
―― ファン体験の向上に、Qualtricsをどのように生かしているのでしょうか。
トレンバス氏 オンライン、オフラインを問わず、私たちはより良い体験をファンに提供できるよう努力している。その際にQualtricsのオンライン調査ツールが大いに役立つ。
私たちはこれまで、イベント後のファンアンケートを実施してきた。その方法は大会ごとに異なる。ファンコミュニティーを通じてもフィードバックを収集している。ただし現時点では、点と点を結んでファンの全体像を構築する方法がない。
今後は、各チャネルにおけるファンのプロファイルを突合して、一人一人のフィードバックを個別に蓄積するつもりだ。うまくいけば、クロスチャネルの総合的なプロファイルで、「私のツアー体験はこうだった」と言えるようになるだろう。
―― 同様の仕組みは、従業員体験の向上にも生きているのでしょうか。
トレンバス氏 PGAツアーは歴史的に見ても従業員の定着率が高い。だが今は環境が違う。従業員からのフィードバックをしっかりと受け止めることが、私たちの責務だ。Qualtricsのオンライン調査ツールは、その方法をより厳密かつ体系的にするのに役立つ。
私たちは年末に大規模なアンケートを実施するのではなく、毎月あるいは四半期ごとに少しずつフィードバックを収集する準備をしている。フィードバックを得ること自体を目的にするのではなく、フィードバックに基づいて行動するためだ。
―― 顧客体験の向上のために活用している、その他のITツールを教えてください。
トレンバス氏 AdobeやAmazon Web Services(AWS)のデータ分析ツールを活用している。フロントエンドやファン向けの技術など、デジタル体験の提供には、ほぼ全てAdobeのツールを役立てている。利用しているのはマーケティングオートメーション(MA)ツールの「Adobe Marketo Engage」、コンテンツ管理/デジタルアセット管理ツールの「Adobe Experience Manager」などだ。長期的には、Qualtricsのオンライン調査ツールでファン一人一人のフィードバックを収集し、プロファイルを作成した上で、Adobeのツール群を使ってパーソナライズされた体験をファンに提供することを目指している。
後編は、PGAツアーの顧客データ活用戦略を整理する。
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