顧客体験の向上に取り組む金融機関Citigroupは、データに基づく顧客応対を実施するためにソフトウェアを導入した。導入に際しての課題や、その課題を乗り越えるための取り組みを紹介する。
金融機関Citigroup(以下、Citi)は、パーソナライズされたサービスを顧客に提供し、顧客体験を向上させる取り組みを実施している。独自に開発したルールエンジン(業務上の判断を自動化する仕組み)や、CRM(顧客関係管理)ベンダーPegasystemsが2010年に買収したChordiant Softwareのソフトウェアなど、さまざまな意思決定の手段を利用して顧客とのやりとりを管理してきたが、そこには課題があった。意思決定支援に使用するソフトウェアを、モバイルバンキングとインターネットバンキングそれぞれで運用していたのだ。
Chordiant Softwareから引き継いだソフトウェアのテクニカルサポートをPegasystemsが縮小し始めたのをきっかけに、Citiはソフトウェアを刷新する必要に迫られた。
意思決定支援のための新たなソフトウェアを探す過程で、Citiは幾つかのベンダーと協議をし、そのたびに行き詰まったという。同行のパーソナルバンキング事業部で分析、テクノロジー、イノベーション担当の責任者を務めるプロミティ・ダッタ氏は、「状況が変わったのは2019年だった」と話す。「さまざまなソフトウェアを簡易的にレビューし、最終決定を下した」と説明する。
PegasystemsやSalesforce、Adobeをはじめ20社からの提案をレビューした後、CitiはAI(人工知能)技術を搭載する意思決定ソフトウェア「Pega Customer Decision Hub」を導入することに決めた。
ソフトウェアの選定においては、分析、IT、融資といった複数の部門の従業員が戦略チームを組んで協力したという。
Pega Customer Decision Hubには、Chordiant SoftwareのソフトウェアにはなかったAI技術が備わっている。CitiではAI技術を利用するために業務のプロセスを新たに開発する必要があった。そこで、分析部門が他部門と連携し、社内に存在する業務プロセスの洗い出し、その業務プロセスが存在している理由の究明、業務プロセス同士の連携に取り組んだ。
「さまざまな規制を順守しなければならない金融機関として、一切失敗は許されなかった」とダッタ氏は語る。「学んだことがあればその場ですぐに業務に適応していかなければならなかったし、失敗は許されなかった。それは大きな挑戦だった」
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を機に、Citiではテレワークを余儀なくされ、ソフトウェア導入への取り組みは困難を極めたという。「ワークショップを何度も開催し、電話会議にも時間をかけた」とダッタ氏は語る。
導入に際してはさまざまな部門の従業員からボランティアを募ったという。「この取り組みに貢献する準備が整った従業員がまず戦略チームに参加を表明したし、その表明を拒む者はいなかった」とダッタ氏は振り返る。
ダッタ氏によると、マーケティング部門の業務の中から移行可能なものをPega Customer Decision Hubに移行し始めたという。その後、顧客エンゲージメント部門や他部門へと移行の取り組みを広げていった。
戦略チームが直面した最大の課題は、Pega Customer Decision Hubの仕組みと、Citiが蓄積してきたデータをどう連携させるかを従業員に説明することだったという。「連携といえば、コンセントにつなげば動くようになるイメージ。みんながそのように思っていた。でも、そんなことはない。家庭用のWi-Fiにつなげるのとは訳が違う」とダッタ氏は話す。
Citiは、インターネットバンキングとモバイルバンキングのデータをPega Customer Decision Hubに統合し、支店とコールセンターの連携も進んだという。
後編は、パーソナライズした顧客応対を実施するだけにとどまらず、一歩進んだデータ活用を実施するCitiの取り組みを紹介する。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
コンタクトセンターでは、アフターコールワークや、オペレーターごとの応対品質のばらつきが課題となっている。このような課題を解決する方法としてAIが注目されている。AIによって問い合わせ業務はどのように変わるのだろうか。
顧客の真のニーズを捉え、迅速に対応することが求められる中、インテントデータが注目されている。顧客の興味・関心を可視化する他、潜在ターゲットへのアプローチ効率化も可能だ。まだ間に合う、インテントデータ活用のポイントとは。
営業活動の効率化を目指し、SalesforceなどのSFAを導入する企業が増えている。しかし、「社内に定着しない」「導入コスパが得られない」など課題を抱える企業も多い。そんな課題を解消する、とっておきのマスターデータ活用のヒントとは?
日本企業の9割超がSMB(中堅・中小企業)だが、開拓するにはアプローチ先の優先順位付けや与信・反社チェックの難しさなど、多くの壁がある。自社の営業リストに取りこぼしがないかチェックするための3つの要点と、改善の秘策を解説する。
法人営業DXで、各部署でシステムを導入し、データ連携できず失敗するプロジェクトは多い。解決の鍵となるのは、共通キーとなるマスターデータをもつ法人データベースだ。リード獲得からクロスセルまで、営業DXを失敗から救い出す実力とは?
闔�蛟カ�セ荵昶�陝�スヲ邵コ�カAI陝�クサ�ス邵イツ鬯假スァ陞ウ�「邵コ�ィ邵コ�ョ郢ァ�ウ郢晄コ佩礼ケ昜ケ昴%郢晢スシ郢ァ�キ郢晢スァ郢晢スウ郢ァ蛛オ竊千クコ�ス�、蟲ィ竏エ郢ァ荵昶�邵コ髦ェツー (2025/6/26)
闔��コ隰�カ�ク蟠趣スカ�ウ隴弱f�サ�」邵コ�ョ隰ィ蜿ー�ク邏具スク�サ�ス貅伉ツAI郢ァ�ウ郢晢スウ郢ァ�ソ郢ァ�ッ郢晏現縺晉ケ晢スウ郢ァ�ソ郢晢スシ邵コ�ョ霑エ�セ陞ウ貅ッ�ァ�」邵コ�ィ邵コ�ッ (2025/5/21)
「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...