既存顧客に製品やサービスを追加で購入してもらうには、どのような手法が有効なのか。4つの施策を紹介する。
企業が収益拡大を考える場合、既存の顧客に着目するのは有効な手段だ。新規顧客に比べて既存顧客は、製品やサービスの追加購入を見込みやすいという向きもある。企業がアップセル(上位モデルや高機能の提案)を狙うには、どのような手法が有効なのか。4つの施策を紹介する。
顧客情報を収集し、製品やサービスのアップセルに利用する手法は目新しいものではない。通訳機器のEコマース(EC:電子商取引)サイトを運営するTranslation Equipment HQの創業者ウィル・ワード氏は「顧客の購買習慣に基づいて収集・分析したデータは、販売ファネル(消費者が製品やサービスを認知してから購入するまでのプロセスを段階的に示すモデル)の“穴”を埋め、既存顧客だけではなく新規顧客の購買も促す」と述べる。
「例えば、ECサイトで、カートに商品を残したまま購入しないが多い場合、ユーザーエクスペリエンス(UX)に問題がある可能性がある。データがなければ、こうしたファネルの穴は見つからない」(ワード氏)
デジタルマーケティングのコンサルティング会社EWR DigitalのCMO(最高マーケティング責任者)マット・バートラム氏は「購入履歴や顧客の好み、製品の人気度合いなどのデータを集約することで、顧客が次に何を購入したいかを導き出せる」と述べる。このような技術は、CXM(顧客体験管理)システムに組み込まれている。
バートラム氏は、「顧客の購買行動のパターンを特定することで、衝動買いを引き起こす可能性のある重要なタイミングで別の製品を提示できる。製品の関連性と適切なタイミングを組み合わせることで、顧客体験を向上させるアップセルを提案できる」と説明する。
企業は、豊富な顧客データを保有している。そうしたデータを基にした顧客のセグメント化は、適切な提案を適切なタイミングで実施するのに役立つ。しかし、フィットネスに関する情報を発信するWebサイト「BarBend.com」を運営するBarBendの元パートナーシップ担当ディレクター、マックス・ホワイトサイド氏は「企業はそうしたデータを適切にセグメント化する必要がある」と助言する。
BarBend.comの顧客は、製品レビューや機器に関する情報、フィットネス関連のニュースを読む傾向にある。同社はアップセル戦術として、顧客が閲覧するコンテンツやメールアドレスを取得し、リードマグネット(見込み客に個人情報と引き換えに提供するコンテンツ)を発信している。
例えば、BarBend.comは筋力トレーニング器具の販売促進キャンペーンを展開する際、栄養に関するコンテンツにしか興味がない顧客にはメールは送信しない。「彼らはコンバージョンする可能性が低いだけではなく、製品への興味を失う可能性がある。われわれにとって最悪のシナリオだ」とホワイトサイド氏は付け加える。
ECとメールマーケティングを連携させることは、アップセルやクロスセル(関連商品の売り込み)の有効な手法になると、コーヒー愛好家向けのWebサイト「Coffeeble.com」の創設者トーマス・フルツ氏は述べる。「一緒に使うと相性のよい製品を勧めたり、交換や補充が必要な製品の再購入を促したり、過去に一定額の製品を購入したロイヤルカスタマーに特別な割引を送信したりできる」と説明する。
衝動買いを促すには、心理学の知見を活用することも一考だ。例えば、企業がECサイトや店舗で利用できる顧客の心理の一つに、“見逃すことの恐れ”がある。「ホリデーシーズンが近づくと、企業は期間限定のセールを実施し、衝動買いを促す」とTranslation Equipment HQのワード氏は述べる。
かつては、企業は実店舗でのアップセル戦略とツール導入に苦労していた。しかし、顔認識技術を使えば、顧客が店内を見て回る際に何に興味を抱いているかを特定し、そのデータをロイヤリティープログラム(リピーターに割引を提供すること)と結び付けることが可能になると、半導体メモリのベンダーGSI TechnologyのAIプロセッサ担当マーケティングディレクターであるマーク・ライト氏は述べる。
「実店舗で顧客が何を見ているか、ある棚の前でどれくらいの時間を過ごしたかを分析し、興味のある製品を予測して提案できるようになった」とライト氏は述べる。ロイヤリティープログラムとECサイトの顧客データを統合させ、実店舗での顧客の行動に基づいてECサイトで製品を提案できるとライト氏は付け加える。
従来のアップセル戦略に、先進的な技術、心理学の知見を組み合わせることで、企業は既存の顧客に衝動買いを促すための手法を生み出すことができる。適切なデータを収集し、適切にセグメント化し、ターゲットとなる顧客に適切な提案をすれば、企業は利益を拡大できる。
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
世界市場でのビジネスを拡大する中、サービスデスクを全世界で統一することで従来の課題を解決した協和キリン。ファーストコールでの問題解決率80%を国内外で実現するなど大きな成果を挙げている同社の取り組みを詳しく紹介する。
「音声応答」によるカスタマーサポートのニーズが高まる中、チャットbotに代わる音声領域の自動応答サービスの開発に着手したモビルス。わずか3カ月でβ版の開発にこぎつけた同社の事例から、成功の秘訣を探っていく。
営業活動の質と生産性の向上に向け、Zoomの商談解析ツールへの期待が高まっている。具体的にどのような場面で活用でき、どのような効果をもたらすのだろうか。営業活動におけるZoomの有効な活用方法を紹介する。
製造業におけるアフターサービスの重要性は言わずもがなだが、近年は人材リソース不足も重なって、その効率化が喫緊の課題となっている。そこで、リモート接続技術とXRを組み合わせて、アフターサービスの品質を向上させる方法を紹介する。
製造業の調達業務は、価格妥当性評価、脱炭素、安定供給などの対応で社内外の複雑なやりとりが高負荷となっている。この解決には表計算ソフトやメールの情報連携からSRM(サプライヤーリレーションシップマネジメント)への変更が有効だ。
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。